俗物
手を合わせ、目を瞑り、ひろは祈り続けた。
誰かの幸福を。
誰でもない。
自分自身のために。
しかし、読者諸氏!!!!
おお、ひろの遥か上、ビルの屋上を仰ぎ見よ!!
謎の人影。
それは、機を見るようにひろの様子を伺っていた。
...。
...。
...
はたと、一息にビルから飛び降りる!!!!
自害ではない!!!!急襲だ!!!!
人影は前方回転しながら落下し、ひろの脳天へと迫る。
そう!!
狙うは遠心力を大きく乗せた回転踵落としである!!
その回転数、1秒間に19回転!!!!
これには、かのテコンドーの名手・武者小路実篤も失禁するばかりである!!!!
何たる、威力的パワーッッ!!!!!!!!
そして、恐るべきはその隠密性。
音も無く殺すとはまさにこのことか、蹴りに際して、殆ど音が発生していないのだ!!!!
音も無く殺すとはまさにこのことか!!!!!
ひろが敵の襲撃に気づかないのも無理はない。
敵の踵がまさに今、ひろに迫らんと...!!!!
ひろは依然としてこのピンチに気付かない!!!
二者の距離がどんどんと狭まっていく。
10m...
5m...
4...
3...
2...
1...
おぉ!!!!!
このままひろは敵の急襲に遭い、無様に事切れてしまうのだろうか!?
否、改造人間の反射神経を舐めるなッ!!!!
変身せずとも、その能力の片鱗は体に刻まれるものである!!!!!!!!
ひろは踵が脳天に直撃する直前に殺意めいた波動をキャッチ!!!!
非凡な瞬発力で後方転回を3回行い、これを見事に回避したッ!!!!
2コンマ遅れて巨大な音と共に敵がひろの立っていた場所に落下ッッ!!!!
踵が地面にめり込み、直径2メートルほどの範囲に亀裂を走らせる。
後少しでも反応が遅れれば、頭蓋が粉々に粉砕されていたところであった。
GOTCHA!!!!!!!!
そう、まさしく新たな敵である!!!!
その姿形を読者諸氏に詳細にお伝えしなければならない!!!!
まず、読者諸氏は「ケープハイラックス」なる動物を知っているだろうか!?
短い耳と尻尾を持つ、モルモットに似た哺乳類の一種である。
それが、二足歩行をしているのだ。
何なら、軍服めいた衣服の上に白いコートを羽織り、海軍のもののような白い鍔付き帽子を被っている。
口元には、無骨なパイプ!!!!
さて、読者諸氏の中には、私がついに狂ったのかと疑問を抱く方もいるだろう!!!!
ただの哺乳類が服着て歩く訳ないと!!
否、私は狂っていない!!!!
この目に写る全ては
つまり、だ。
読者諸氏の住む世界とこちら側の世界では食い違うように様々なことが異なるのだ。
そう!!!!
バイオテクノロジーの暴走、無秩序な自然の混濁をもって、一部の生物は我々の住む世界と異なる進化を遂げたのだ!!!!
ハイラックス属もその一種である。
彼らは複雑多岐な系統樹の軌跡を経て、二足歩行と人間と同レベルの知能を手にした。
ファンタジーにおける獣人種のようなものだ。
しかし、その見た目からか彼らは種族的差別を受けることも多かった。
2032年に第135代大統領・具志堅用高が発令した獣種差別撤廃令をもってしても、人々の間に差別的価値観は今も強く根付いている。
人間による反逆心か、それとも仕事を選べない境遇からか、彼らの中には殺し屋などの荒っぽい仕事をこなす者も多い。
彼...如月もそんなケープハイラックスの一人であった。
彼は加えていたパイプをいかにも大義そうに投げ捨て、津田健次郎の声でこう言った。
「俺は、お前を殺せと雇われてる。恨みはないが、そういうことだ。」
それから、
コートの襟を直す。
ひろも素早くバックルを腰に当てて叫ぶ。
「...変身!!」
眩い光と共に装甲を着装!!
これは、日本に残る早着替え的高等技術・SYOURYAKU-HENSHINである。
腰を少し落とし、プロの格闘家と比べても遜色のない構えを見せる。
まさに臨戦態勢!!
対する如月も格闘の構えで戦闘に備える。
如月も改造手術を受けてはいるが、「変身」を使ったことがあるのは両手で数え切れる程度だった。
変身せずとも戦えるポテンシャルと自負が、彼にはあるということだ。
更に、彼はあくまで「変身」という切り札を最後の最後まで忍ばせておきたい質だった。
這般の理由から、彼はキックマンとの戦闘に素面で臨む気だ。
何てSAKAMOTOな男なのだろうか!!!!
二者が数メートルの距離を介してまみえる。
戦闘の構え...。緊迫した空気...。
...それを破るのはキックマンの突きか
...それとも如月の蹴りか!!
一挙手一投足が、
両者が手汗を握りしめる...!!!!
その沈黙を破ったのは...
「ウチやああああああああああ!!!!!!」
What!?No way!!!!
何たる奇襲!!!!!!!!
第三者に矢めいて放たれた飛び蹴りが、キックマンの右肩に直撃する!!
改造人間の反射神経をもってしても2度の襲撃は捌ききれぬ!!
キックマンに不意打ちの飛び蹴りを喰らわせた彼女は、空中で無駄に3回転した後、体操選手めいて如月の隣に着地した。
そう、彼女も改造人間である。
ワンショルダーのヘソ出しトップスやタイトなショートパンツ、露出した白い太ももの上にスパイクで覆われたファンキーな装甲を装着し、手にはモーニングスターのようなメイス。
口部はガスマスクめいたゴアな機械に覆われており、規則的に呼吸音が漏れる。
鼻から上は露出しており、血色感のない白い肌とダークブラウンのアイシャドウ。
ブロンドの巻き髪をツインテールにしている。
彼女の名は「NEEDLE MAN -ニードルマン-」!!!!
闊歩するグロテスクである!!!!!!!
「邪魔するな。尼。」
如月が気の立った口調で言う。
「ええや〜ん。どうせ、いてまう相手が一緒なんやったら。」
どこまでも幼稚な彼女の態度に、如月は舌打ちした。
「勝手にしろ。」
「しゃ!!」
ニードルマンはガッツポーズをとる。
空気が
二者に対して隙のない構えで攻撃の機会を伺うキックマン...。
何たる不幸か!!
敵は2人!!!
更にキックマンには先の戦闘の疲労もみえる!!
キックマンの構える右手が震える。
見た目より飛び蹴りのダメージが重い。
人数差、戦闘の蓄積、負傷...。
これは改造人間の戦闘キャパシティを完全にオーバーしている!!!!
そう今まさしく、絶体絶命!!!!!!!!
「おにーさん、ど〜すんの?2対1 やで。ざぁこざぁこ❤︎なっさけな〜い❤︎生きながらえてることが恥だと思わないんですか〜w?しちゃえ、切腹しちゃえ❤︎ 五臓六腑出しちゃえ❤︎」
ニードルマンは
快活な笑顔を浮かべる。
あのメイスをもろに受ければ例え改造人間だとしてもどうなるかはわからない。
おお、このままキックマンは星球に頭を潰され、ペーストめいた死体に変わってしまうのか!?
否、その時である...。
「いや、2対2だよ。」
スパイクマンと如月の背後から突如として新たな改造人間が飛びかかる!!!!
many many 乱入者!!!!!!!!
═════════════════════
如月 立ち絵
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます