TATAKAI!!!!COOL!!!!①

「10代から30代の人間は、押しべてこの世のカスだ。」


雨雲に幽閉された街。

ビル群に覆われた大きな通り。


「若輩者は痛みを知らない。親に殴られたことがないからな。だから、社会は腐っていくんだ。これは受け売り。俺を殴った...誰だっけ?まぁ、誰かさんの受け売りよ。」


ビルの壁に設置されたモニターにはニュースなんかが流れ、ライトアップされた痩せた木や近代的なオブジェ、噴水などの横を多種多様な人種が横行していたことだろう。普段ならば。


ビル群のあちこちが崩れ落ち、焦げた瓦礫が降り注ぐ。

周囲に転がる惨殺死体と血だまりの数々。


「まぁ...暫く経ってだな、そういう訳なんで、俺も誰かを殴ることにした。存外に愉快だったもんで、今度は殺してみた。あー、わかるか?そういうことだ。そういう訳で、お前の母親は殺しちまった。...納得してくれるよな?」


広場には、男の独り言と少女の喚き声のみが響き渡る。


よく聞くと、しきりに母親を呼んでいる。

しかし、少女が必死に縋り付く母親からは返事がない。

いや、できなかったのだ。


真っ二つにされ、内臓をほじくり出されているのが彼女の母親だった物だ。


「『生きる』ってことは、等しく『死んでない』ってことだ。俺は死人だ。寂しんぼのな。だから、許してくれ。な?」


そのあまりに非人道的な殺人を行なった人物を我々は知っている。


サイバーパンクで流線的な黒いフルフェイスマスク。

顔の部分は液晶めいており、光り輝く円がモノアイのように光る。

口部には数本の管が無秩序に接続されており、さながらガスマスクだ。

ネイビーのダボっとしたフードの隙間からは、機械的なデザインの肋骨が見え、彼の異物感を強調しているように思える。


そう、あの列車事故をも引き起こした悪しき改造人間「ALIVE MAN-アライブマン-」である。

実際、彼は病的なサディストである。


刹那的な大量殺人はもちろん、じっくりと弱者を痛めつけることも好む。

特に、純粋無垢な子供の目の前で親を残虐に嬲り殺し、それから同じように子供を虐殺することが多い。


絶叫を聞くたびに体を震わせ、刃物が肌を沿うたびに自らの生の価値を実感するのだ。


サバイバルナイフの切先が少女の方を向く。

もちろん、彼女は動けないままだ。

舐めるように、輪郭をゆっくりと刃の先端でなぞる。

少女はまず顔の皮を少しずつ剥がれるだろう。それから、性器を...


...どこからかタイヤが地面を駆る音が聞こえ始めた。

それは夜の闇を切り裂くように鮮やかで、どんどんと接近してくる。


そして2秒後には、アライブマンの眼前にバイクの車体が...!!!!!!!!

これは古からカポエイラに伝わる奇襲攻撃、ライダーブレイク!!!!

不意に迫り来る鉄の巨体!!!!!!!!


しかし、アライブマンは改造手術による非凡な反射神経によって電撃より速く両腕をクロスさせ、ガードの態勢を作っていた!!!!


アライブマンは迫り来る車体の衝撃を受け止め、押されるようにして数メートル後退すると、押し返すようにして車体を弾いた。


バイクは地面に流麗に着地すると、数メートル横滑りして斜めに停車する。少女の側だ。


二つの車輪と運転手が地面につけた足が摩擦を起こし、3本の黒線を引いた。


運転手が車体を跨ぐようにしてバイクを降りる。


SHITTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT!!!!!!!!!!!!!!!!!


バイクから降りたその姿!!!!!!!!

身!!!!!!!!身!!!!!!!!


見よ!!!!見よッ!!!!

刮目するのだッッ!!


暗闇に淡く光る2つの大きな複眼!!!!

テクノロジーの粋を集めたような近未来的でバックルの分厚く機能的なベルト!!!!


街灯が縁取る黒光りボディ!!!!

顔の左半分、胴体と両肩、左右の前腕、左足にそれぞれ装甲めいたアーマーを纏い、所々露出した内部メカニズムや歯車が歪さと美しさをより際立たせる!!!!!


アーマーのない部分から見える生物的な筋肉の立体!!!!!!!!

まさに、自然とテクノロジーとの超爆裂的融合!!!!!!!!!!!!

CooooooooooooooooL!!!!!!!!


そのデザインのスタイリッシュさは、筆舌にも尽くしがたい!!!!


あまりのスタイリッシュさに興奮しすぎて失心してしまった読者の方も多いだろう!!!!

このキックマンが戦う姿を、早く拝みたいであろうッッ!!!!!!!!


否、もう少し我慢してほしい!!!!!!


「逃げろ」


黒い改造人間は、少女の方を見ずにそう呟いた。


少女はよろめきながら、小さい足で駆けていった。


突然の敵襲にアライブマンは構える。

黒い改造人間「KICK MAN-キックマン-」も同じくして臨戦対戦だ。


そして、キックマンの正体を我々は知っている!!!!

そう、ご察しの通り彼は青年・ひろの変身形態である!!!!改造人間として、一人の戦士として彼は蘇ったのだッ!!!!


二者の間は十数メートル。

今にも戦いが始まらんばかりの熱量を雰囲気が湛える。


二体の改造人間の周囲を舐め回すように、数機の球形自律飛行カメラが周回し、彼らの戦いを

傍観する。松井が見ているのだ。


しかし、キックマンはそれに気付かない。

改造人間の戦闘は一挙手一投足が勝因とも敗因ともなりうる熾烈な戦いなのだ!!!!

張り詰めた空気の中では、視界の情報は限定的となる!!!!


緊迫した二者間の空間。

間。沈黙。

それを破ったのはひろ...キックマンであった。

彼はおもむろに口を開く。


「お前らは...人の命を何だと...!!!!」


「俺は、『最悪』が好きだ。結局、人はそういうもんが好きだ。その極論に『死』が横たわっていた。そういうことだな?そういうことだ。それに...」


両の手のサバイバルナイフがカチャと音を立てる。


「気持ちがいいぞ...弱きを挫くのは。」


アライブマンは両のナイフを瞬間的に投擲!!

キックマンへと一気に迫る!!!!


キックマンはこれを体を翻して避けつつ、一気に接近!!!!!!

アライブマンの間合いに入る!!!!!

思い切り踏み込んだ右足が力強く響く!!!!!!


上段への電撃めいたワンツー!!!!

その拳は怒りさえ纏っている!!!!


アライブマンはこれを両手で鮮やかに捌く!!!!


続け様に、キックマンの右上段回し蹴りが迫る!!!!

アライブマンはこれも直前に両手を交差させ、ガード!!!!

うち止められる回し蹴り!!!!


しかし、キックマンの右足頸部から突如として炎のような超高密度エネルギーが放出される!!!!

時間差のインパクトによって、アライブマンのガードの姿勢を押し崩したキックマン!!!!


そのままの勢いで空中右回転、さらに空中前転を挟み、全体重と遠心力を乗せた踵落としで追撃!!!!!!!!


Woooooooooooooooow!!!!!!!!

何たるスピード!!!!テクニック!!!!

TAKAIWAッッ!!!!!!!!(形容動詞の一種。武道や力に秀でていることを指す。

例文:20人の戦士のうち18人がTAKAIWAだ。)


しかし、キックマンの足首から放たれたジェットめいた超高密度エネルギーは何だ!?

はてさて、何たるトリックかッ!?

Mahaluto Hallelujah!!!!


その答えは、キックマンの両足首・両手の前腕部・うなじに設けられたブースターの存在である!!!!!!!!!!!!

超密度のエネルギーを糧に打撃の威力の増加はもちろん、空中での立体的な攻撃への転用も可能!!!!!!!!

便利利利利利利利利利利!!!!!!!!


鬱 愛撫 空手家 銃 銃!!!!!

ふんぐり返れっ!! 尿道!

五七時夢中貞操にchu!

どすけべ Don't scape そそげ...


セシウム!セシウム!セシウム!セシウム!

Seeeeeeeeeeeeeeeeex!!!!!!!!


カリウム!カリウム!カリウム!カリウム!

F***********************k!!!!!!!!


...。

先程から地の文のテンションが明らかにおかしいのには理由がある。


ああ、そうだ。その通りだ。


これは真剣で神聖な戦いなのだ。

実際、人命も多く失われている。

変に大声を出して、茶化すのは流石に不謹慎。

無粋も無粋、大邪道。


敬虔けいけんで明晰な読者の皆様にいたっては、そう思われるかもしれない。


確かに、この戦いは命懸け。

命とはかけがえのない一つしかないもの。


その無数の堆積に、今この瞬間のぶつかり合いがあるのだ。

実にほの暗いものである。


この世界もやはり影が落ちたように陰鬱であり、お通夜めいたナレーションと地の文でこの戦いを淡々と彩るのが適切...


否、否、否!!!!


阿呆あほうか貴様は!!!!!!!!


戦いに込められた意味など、微ッッッッッ塵も知ったことではない!!!!!!!!!!!!


行間?クソだ!!!!

人命など塵芥だ!!!!


TATAKAIなんだよ!!!!TATAKAI!!!!


この世界は暗すぎる!!!!!!!!

なら、虚飾と空元気で照らしだす!!!!


熱意や信念、抱えきれない悩み、そんなものいとも簡単に塗り潰せる!!!!!!!!

ゴミだッ!!!!!!!!


今日日、悲劇なんて誰も望んじゃぁいない!!


明滅!!欺瞞ぎまん!!ネオンサイン!!

そうして世界は廻るのだ!!!!


光あってして闇があるのではない!!!!

闇あってして光があるのだ!!!!


闇があってこそッッ!!!!


わかったか!!!!OBAKA!!!!

このイディオットめが!!!!!


...失礼した。三下。


少々取り乱したが、戦闘に話を戻そう。


序盤から攻撃を炸裂させたキックマン。

追撃を危惧してか、アライブマンは鮮やかな3連続バク転で距離をとる!!!!!!


アライブマンのメインウエポンはナイフではない。遠距離や拷問に使用することはあれど、改造人間同士での戦闘においては、あくまでサブの域を出ない。

そう、彼の真髄は徒手空拳!!!!!!


「小手先は...大体わかった。」


アライブマンは首をゴキリと鳴らすと、打撃の構えをとる。

四肢の凶器めいたアトモスフィア!!!!

常人が触れれば一瞬でミンチとなるだろう!!


ALIVE...生命と格闘は切っても切り離せない存在である。人々は原初から血で血を洗い、現代までの成長を果たしたのだ。それは、過去現在、そして未来も変わらない普遍で不変のディスティニー!!!!


戦いの延長線上に生命があるのだ!!!!

格闘とは、生命の境地にして躍動!!!!!!


今、その眠れる獅子が目を覚ました!!!!


「じゃ...本気マジ出すか」


周囲の空気がよどみ、殺意が滝めいて余白を満たす。


═════════════════════


キックマン立ち絵

https://kakuyomu.jp/users/Tabii/news/16818093076982985340

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