第42話 敵城に到着、配置確認

出演者(イメージキャスト)

 大川周明氏(疾患者)  役所広司

 堀田善衛(疾患者・元新聞記者)

 岡田 滋(疾患者・元准尉) 中村獅童

 肥田春充(体育家・周明の親友)

 杉浦誠一(疾患者・元従軍画家) 柄本 明

 山田欣五郎(性同一性疾患者・元海軍兵)

 首藤操六(疾患者・元参謀副長) 石橋蓮司 

 村瀬源太郎(巡査・GHQ本部付け) 


 丸の内三丁目郵便局前である。

十一時四十七分。

軍用トラックが静かに停まる。

村瀬巡査が運転席から荷台を覗き、


 村瀬「先生、着きました」

 周明「着いたか・・・。よしッ、皆、行くぞ! 計画通り行こう」

 村瀬「で、ここで降りるのは?」

 周明「私を入れて六人。一人はGHQ本部の搬入口」

 村瀬「搬入口?」

 周明「家具屋だから一人は搬入口から入ってもらう」

 村瀬「ああ、家具の搬入ね。あそこなら、俺も八階まで付いて行けます。その方が安心だ」

 周明「それは心強い。ねえ、肥田くん」

 肥田「そうですね。村瀬さん、宜しくお願いします。」

 村瀬「ガッテンだ。で、そこの郵便局を左に曲がると第一生命が見えます。それがGHQ本部! 閻魔(エンマ)キングが居る所ですよ」


周明氏は村瀬を見て、


 周明「エンマキング?・・・ああ。左ね。分った。有難う」

 村瀬「マッカーサーの部屋は八階のエレベーターを降りて左一番奥!くれぐれも間違えないでくださいね」

 周明「マッカーサーは居るんだろうね」

 村瀬「今日は三時から外出です」

 周明「よし。八階左奥だね。皆んな、分かったね。八階左奥ッ! まず、山田さんがコーヒーを持って部屋に入る。少し遅れて私と堀田くん。それから杉浦さん。首藤さん、岡田さん。そして、最後は肥田くん。この順番だ」


 七人「了解!」

 村瀬「あッ、それから山田さんが喫茶店役ですよね。はい、これ」


村瀬は助手席に置いてある『出前箱』を山田に渡す。


 山田「何これ!?」

 村瀬「コーヒーの出前箱! これに入れてコーヒーや菓子を運ぶんですよ」

 山田「でもこれ、中華後楽って書いてあるわよ」

 村瀬「裏にすれば分らないですよ」

 山田「あら、アンタ、まんざらじゃないわね」


村瀬は山田に向かって右手の親指を立ててガッツポーズ。


 村瀬「あッ、皆さん通行許可証は持ってますよね」


七人全員、手に取って村瀬に見せる。


 村瀬「よしッ、OKッ! じゃッ、レッツ ゴー!」


六人がトラックの荷台から一人ずつ降りる。

村瀬が山田を見て、


 村瀬「あッ、山田さ~ん。出前箱!」

 山田「あッ、そうだ!」

 村瀬「シッカリして下さいよ。日本人の代表なんだから」

 山田「オカマの代表よ~ッ!」

 村瀬「それから喫茶店の名前はマロニエ。これも間違えないで下さい。マロニエッ!」

 山田「マロニエね。わー、緊張するわ〜」

                     つづく

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