第40話 松澤病院院長室
出演者(イメージキャスト)
内村裕之(松澤病院・院長) 中井貴一
西丸四方(周明氏の担当医師) 國村 隼
畑 千尋(看護婦長) 木村多江
朝倉みち子(食事担当 看護婦)
鮫島昭子(東病棟担当 看護婦) 中条あやみ
院長室のドアーを激しく叩く音。
音 「コンコン、コンコンコンコン」
内村「どうぞ~」
畑 婦長が焦りながら部屋に入って来る。
畑 「院長ッ! オ、お昼になっても戻って来ません」
内村院長は畑 婦長を見て冷静に、
内村「誰が?・・・」
畑 「あの、あの七人が!」
鮫島看護婦が走って部屋に入って来る。
鮫島「院長ーッ!」
内村「今、婦長から聞いた」
鮫島看護婦は息を荒げて、
鮫島「どうしますか?」
内村「どうしますか? う〜ん。ヤッタな・・・」
西丸医師と朝倉看護婦が部屋に入って来る。
西丸「何か遭ったのか」
畑 婦長は気が動転して、
畑 「七人が」
西丸医師は驚いて、
西丸「おおッ! 決行日は今日だったのか」
鮫島「そんなノンビリしてる場合じゃないですよ」
朝倉「あッ、そうだ、院長!」
内村「うん?」
朝倉「山田さんが外出する前に、院長にって お手紙をお預かりしたんです」
朝倉看護婦が白衣のポケットから封筒を取り出し、内村院長に渡す。
内村院長は封書を開き便箋を取り出す。
中身をゆっくり開く。
山田欽五郎の手紙
『私が密かに愛した内村様へ。内村様、私の身勝手を許して下さい。私は、もうここには当分、戻れません。場合によったら、戦死しちゃうかも。でも内村さんとの思い出は沢山、心に秘めて特攻に志願しました。今、ここに、私が集めた内村様の抜け毛が三十本有ります。大切に胸に仕舞って行って来ます。あ、それから私の形見に、敷布団の下に大切に使っていた落下傘で作ったパンテーを置いて行きます。綺麗に洗濯してあります。もしもの時は内村様の奥さんに穿かせてあげて下さい。
内村祐之(永遠の恋人)さようなら。さようなら。さようなら。
山田欣五郎 昭和二十二年七月七日吉日』
内村院長は胸のポケットからチーフを取り出し、涙を拭く。
西丸「何を泣いてらっしゃるんですか」
内村「いや、何でもない」
西丸「で、どうする気ですかッ?」
内村「・・・放って置こう。関わらない方が良い」
畑 「ええッ!?」
つづく
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