第4話

「し、春藤さん。おはよう」


「おはよーって時間でもないけどね」


「あっえと……本日はお日柄もよく、」


「お見合いじゃないんだから、ほらいこ?」


そう言って春藤さんは僕の手を引いて歩きだした

恥ずかしくなりその手を離すと少ししゅんとした顔をしていた


気まずくなって映画館に向かう足を早めると

春藤さんも僕に合わせてきた


「今日見る映画今話題の恋愛ストーリーなんだよ」


「そうなんだ」


「怜央君は映画好き?」


その質問に僕は頭を捻った


母が見るので多少は見たことはあるが、あまり見ない

彼女は好きそうだし、ここではっきり言ったら悲しませてしまうかな、


数秒考えた末に僕ははっきりと伝えることにした

嘘ついても後でバレた時が怖いし…



「…僕はあんまり見ないなぁ。小説とかは見るけど」


「そーなんだ、でもこの映画はすっごいいいらしいから!期待してて!」


元気よく笑う彼女に気落ちせずに良かったと安堵した


その後は恋愛ものなんて進んでみることはないから少しの期待と会話を途切れさせないように頑張った


数十分歩き、目的の映画館についてチケットを取った


「ポップコーンも食べよーよ」


「わかった。何味にするの?」


「うーん…何がいいかなぁ、怜央君はどれが好き?」


「僕…?えっと、、キャラメル」


「そうなんだ!おっけー」


すると春藤さんはキャラメル味を買った


僕も買おうとしたら二人で食べようと言われてシアタールームに向かう


お金を渡そうとするとそれぐらいいいと断られた

こういうのって男が奢れって言うもんじゃないんだ


春藤さんの人柄の良さに困惑しつつ、僕らは自分の席に着いた



「あっ始まるよ」


しばらく静寂が訪れて、バッと画面が明るくなる


話は自殺しようとしている主人公を正義感溢れるヒロインが救うという物語。


途中まではよくあるありふれた話だと思った


だが、二人の仲が順調に進んでいくと同時に付き合う…そう思った所でヒロインは自殺した


映画館の中が驚きに包まれた


それでも映画は止まらなることは無かった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る