第9話 アルストロメリアな君へ⑨

 病院には独特な雰囲気がある。


 消毒液の香り、白を基調とした間取り、病人の安らかな寝息。今は換気も兼ねて病室の窓が開けられているが、春の陽気も手伝って寒さは感じなかった。


 でも私にはそれらの病院の雰囲気を感じる余裕は、微塵もなかった。

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