Two with you.

詠称はると

Two with you.

「田中さん、この表計算がなんだかおかしいのですが。」

おかしいのはあなたの頭の中じゃないの。私はそう思ったが、口には出さない。

「承知しました課長、エラーを探します。」

もうすぐ終業となるが仕事を渡された。早めに片づけようとノートパソコンのアイコンをクリックする。エラーの原因はすぐに分かった。二課の入力がおかしい。

「また二課が原因なの?」

となりの牧田さんが声をかけてくれた。

「私が直しておくから、田中さんは帰っていいよ。」

表計算が得意な牧田さんはそう言ってキーボードに指をすべらす。

「でも牧さんも終業ですよね。」

牧田さんはにやりと笑った。

「なんかこういうの直すのが好きなの、やっておくから駅に行きなよ。」

私はお辞儀をして片づけを行う。

「課長、私が直しておきます。すくできます。」

牧田さんは課長に手を振りながら私に帰りなとジェスチャーした。



会社から駅までは歩いてすぐだ。乗換駅なので人通りが多い。秋から冬に移り、イルミネーションが点灯していた。今年は青いダイオードで彩られている。少し人だかりができている。ひとりの人物をぐるりと取り囲んでいた。

私は後ろのほうで少し背伸びをして前を見る。そこには薄い水色のエレキギターを弾く女性がいる。


ちいさなギターアンプから発する音はゲイン(歪)が力強い。パワーコードを正確に弾き、サウンドが心を弾ませる。しばらく聴き入っているとネック側で一弦がチョーキングされる。いつもの終わりの合図だった。エレキギターの女性はお礼のお辞儀をした。見物のお客さんはいくらかのチップを渡して解散していく。私は最後にチップを渡した。


「加奈はいいのに」

女性は言うがただで聴いているようでチップを渡す。

「ビール代よ」

「6缶買えるかな」

彼女は笑った。



私たちは徒歩でアパートに帰った。築20年のやや古めの物件だ。家族向けに作られていてキッチンと二間(洋室と和室)トイレ・お風呂場は別々のなかなかの物件だ。

やや駅から遠いので家賃は安かった。ギターの女性の名は由衣だ。私のアパートの同居人。由衣はギターをおろして、ギターハンガーに掛けた。薄い水色のきれいなエレキギターだ。食卓には夕飯が並んでいる。おかずをレンジで温めて、買ってきた缶ビールを開けた。350ミリリットルの缶はグラスふたつにちょうどいい。

「この一杯のために生きている。」

ぷはっと私が飲むと由衣は笑っていた。

「おじさんみたい。」

しれっと、ショックなことを言ってくる。けど、構わない。

「おじさんを相手にしているから、似てきたのよ。」

私は事務員として会社勤めをしている。有名な会社だ。周りの人は良い人ばかり、ホワイトな会社なのでわりとおじさんが多い。同期も多く、仕事は順調だ。ひとり暮らしをしても問題ないと思っている。



「実は二人暮らしでして。」

ぽつりと言ってみた。

「何のこと?」

由衣は不思議な顔をしていた。

「ううん、前に会社の同期からひとり暮らし?って聞かれたの。」

で、「そうだよ」と答えておいた。まだ20代前半なので周りに結婚した人はいない。

今は結婚する人は多いのだろうか。離婚率は増えているらしい男性と女性、まったく違うのに一緒にいてうまくやっていけるのだろうか。私は考えてしまう。


「今度の弦はどう?」

私は由衣に話しかけた。

「うーん、ちょっと弦が強くて押さえるのに力が必要ね。」

「前のほうが柔らかい感じがする。」

なんとなく分かっていた。私が弦を張っていた時にやや力を入れないとペグを巻けなかったからだ。

「がんばればなんとかなるかもしれない。」

由衣は左手で弦を押さえるしぐさをする。

「もとに戻そう。」

私はニッパーと弦のパッケージを引き出しから取り出す。交換してから2週間だが違和感があるならばすぐにでも変えたほうがいいと思った。薄水色のギターを畳に置いて6弦からペグを緩める。9フレット目でニッパーを入れて弦を切っていく。周りに飛ばないように注意して手早く1弦まで切り終えた。09-42の弦がストラト系には良いと思う。また、10-46はレスポール系に良い。弦を外し終えてから古くなったシャツでギターの指板とフレットを丁寧に磨いていく。オレンジオイルはこの前使ったから今回は空拭きで良い。弦をブリッジ裏から通してペグに持っていく、しっかりと通ったか確認のため3,4回引っ張る。2ペグほど余らしてニッパーで切り、ペグの穴に入れる。90度に曲げペグを回して巻いていく。ワインダーで回す人もいるが、私はゆっくりと巻きつけていきたい。左手の親指、人差し指の感覚と弦に添えた右手の人差し指で弦の張り具合を確認していく。6本の弦を張るのに30分もかからない。最初のころは2時間以上かかり苦戦していたが今は弦を張るのが楽しい。



「加奈は弦を張るのが上手ね」

由衣はため息交じりに言った。

「何回張ったか分からないからね」

実際、私は弦を何回張ったか覚えていない。ギター弦のパッケージは珍しくないので捨ててしまっている。最初は残しておいたが溜まってしまい捨てた。

「弦を弾いておいてね。」

ギターの弦は張り替えた直後はチューニングが安定しない。軽くストロークをしたり引っ張っておいてからチューニングをする。

「やっぱりこっちは柔らかいね。」

由衣は弦をストロークして左手で確認していた。

「前の弦は悪くないけど、こっちが由衣に合うんだね。」

私は前に張った弦と切り余った弦を片づけながら言った。明日の演奏が楽しみだとねと二人で話した。



「うーん、レス・ポールは5キロ」

体に重いものが載ってきて目が覚めた。案の定、由衣の足だった。当人はベッドの下に落っこちている。畳にはラグマットが敷いてありすやすやと寝ている。私は由衣の足を体から外してベッドから下した。由衣に布団をかけて、自分は予備の毛布にくるまる。


「ベッドでなくちゃ眠れないって誰がいったのよ。」


アパートは畳だったので敷布団でよいと思っていたが、由衣はベッドにしたいと言った。シングルでなくセミダブルなので二人で寝ても大丈夫なのだが、現在、当人は畳に敷いたラグで寝ている。


「このマットレスのスプリングはよく眠れるな。」


少々値は張ったが高級なブランドを買ってみた。これは良いことを知った。「眠ることは良い事だ」とえらい人たちは言っている。私は由衣のことは気にせずに眠りに落ちていく。



朝目覚めると由衣は普通に隣で寝ていた。自力でベッドに這い上がり私の横に眠る。

いつもながら不思議な光景だ。当人は寝ているのに布団はきれいに掛けてある。むしろ眠る前よりもきれいになっている。

「ベッドが良いからなのか?」

私は考えたが、もちろん答えは出てこない。



朝は頭の回転が速くなりいろいろなことが考えられる。

ネガティブな思考な自分だが、朝はポジティブになれる。

このままの生活が続くか不安だったが4年の月日が流れた。

目を閉じると学生の頃の場面が浮かぶ。



「加奈は進路どうしたの?」

制服に身を包んだ由衣が話しかけてくる。


「私は会社に勤めたい。」

私たちは世間ではお嬢様学校と呼ばれている私立の高校に通っていた。ほどんどの学生が大学に進学する。その中で私は就職を希望した。大学の4年間は楽しそうに見えるが、その時間をアルバイトやサークルなどに使ってしまう。ならば本格的に仕事をした方が良いのではないかと私は思っていた。好景気、不景気の波により就職先は変わってしまうかもしれないが若い時には苦労しろと祖父は言っていた。


「由衣は?どこに行くの?」

「私はギタリストになるの。」

「ギタリスト大学ってあるのね。海外?」

なぜか由衣は笑った。苦しそうにお腹を抱えている。

「そんなへんな大学あるわけないじゃない。」

「どういうこと?」

私は由衣が言っていることが分からなかった。

「ギタリストはギターを弾く人よ。」

私はさらに分からなくなった。

なにを言っているのか私には分からない。ギタリストはギターを弾く人は分かるが、なぜ由衣がギタリストになるのかは答えていない。

「私はギターが弾けるの。ああ、ギターといってもエレキギターよ。」

「エレキギター?」

答えはさらに遠ざかっていった。

「知らない?アンプっていうスピーカーに繋いで...」

「それはなんとなく知ってるよ。じゃなくて、大学には行かないのってこと。」

私は答えに近づきたい。なので直に質問してみた。

「うーん、大学には興味ないの。それは加奈も一緒でしょ。」

由衣は真面目な顔をした。これは本気だと分かったが、理解はできていない。

「私は自分がやりたいことをしたい。そうしないと後悔すると思うの。」

まったく正論だ。

「心配しないで、エレキギターは初心者じゃないの。機材もそろっているし大丈夫よ。」

それはあまり心配していないし、本題でもないような気がする。

「でも、弦がうまく交換できないの。困ったわ。」

それは上手い人がすればいいのではないかと突っ込みたいが、その衝動を押さえた。

「プロになるってこと?」

そうなれば仕事に就くってことで、私と同じ就職組になる。それが答えになる。


「あー、そこまで上手くはないかな。」

私はコケてしまった。頭から突っ伏した私を由衣は心配した。「大丈夫?」と言った。それはこちらが言いたい。プロでなくどうして進学せずにギタリストと。でも、由衣は進路希望用紙に書いてしまったそうだ。

「進路はギタリストです」と。



ほどなくして、私たちは同じアパートに住むことになった。なったというよりもなってしまったのだったが。きっかけは由衣の家に行ったことだった。私は由衣の両親とお兄さんに初めて会った。


「どうしたものか」

「どうしましょう」


同じタイミングでご両親は言った。


「いいんじゃないかな」


少しずらしてお兄さんが言った。


「じゃあそうしよう」


三人が同時に言った。


「何をですか?」


すぐに私は質問する。何の話かわけがわからない。


「つまりだ、由衣がひとり暮らしをすることだ。」


まさに由衣の家族だと思った。話についていけない。突然すぎて頭が回らない。


「ギタリストはどこに行ったのですか?」


えーとと私があたふたしているとお兄さんが説明してくれた。


「由衣がギタリストとして家を出ていくと昨日話したんだ。それで家族会議を開いて承認した。」


「え?」


簡潔に説明していただけて理解できたが、現実的ではない答えだ。

「お金は?違う、住むところは?というかどう生活していくのですか?」

「プロじゃなくて普通にギターを弾いてで、どうやって生きていくのですか?」


おおっと由衣の家族は感激している。


「さすが由衣の友達だ。由衣のことを分かっているじゃないか。」


由衣のことが分かる以前に普通に考えるのではないかと思う。しかし、今はそんなことを言っている場合ではない。なんとかして暴走を止めないといけない。


「じゃあ、加奈さんここにサインをおねがいします。」


お父さんが二枚の書類を出してきた。


「ここにサインをするとすべてが解決する。」


私は書類に目を通す。答えはそこに書いてあったが、私が求めているものであったがなにかが違った。


「株式会社 上条商社 労働条件通知書」


私は由衣のお父さんが経営する会社の社員となった。




朝、鳥の鳴き声で目覚める。

不思議な感じがするが都心でも珍しい事ではない。


カーテンから朝日が差し込む。

6時でも明るい。


「春だなぁ」



「春だね。」


由衣も起きていた。


月曜日でも憂鬱ではない。


いつも彼女が隣にいる。

アンプを繋いでいないエレキギターを指で弾いている。

小さな音だがよく聴こえる。


「セーハ、ハンマリング、スライド」


いつもその曲を聴いてから出社する。

なんとかなるさ。


「いってきます。」

「いってらっしゃい。」


さあ、今日も良い一日だ。

彼女の見送りで出勤する。



「もう、49回交換してくれたのね。」

私は貴女が弦を交換したことを手帳に記していた。

貴女は何回交換したかは忘れてしまうけれど、私は一生忘れない。


Y社製の私のエレキギターはチューニングが狂いにくいことで定評がある。でも、私のアイスブルーのギターはそれだけが理由ではないと思っている。そっとペグに指を触れた。太陽を浴びて光り輝くペグは一点の曇りもない。貴女が丁寧に弦を巻いてくれたので、とてもきれい。ペグにまかれた弦はきれいに揃っている。


6弦をピックで弾いた。ヘッドについたチューナーがEを示して、針は真ん中を指した。今朝、貴女がチューニングしてくれたので、私はペグを触れるだけでいい。5,4,3,2,1弦と弾いた。すべて真ん中だった。


「すごい。」


まったくの初心者だった貴女はいつの間にかプロ並みになっていた。指板もフレットもピカピカ。メイプルの指板はめずらしいので気に入っていたけど、貴女が手入れをしてくれたので愛おしく感じる。フレットがきれいなので音が濁らないの。スライドもチョーキング、ハンマリングも心地よい。


「貴女と一緒に弾いている感じがする。」


ゆっくりと弦に触れる。


セーハ、ハンマリング、スライド。


私はこの曲で始める。

有名なバンドの好きな歌。


「なんとかなる。」


私は貴女のそばにいたい。





「課長、修正が終わりました。二課のシートを直してあります。」

牧田さんが手際よく説明してくれた。これで明日の会議に間に合うだろう。

「田中さんには悪いことをしてしまったな。」

「いえ、田中さんは気にしていないと思いますよ。」

牧田さんはさらりと言った。何か急いでいたような気がしたのだが、明日の会議のことを考えてしまい、タイミングを見誤った。

「ありがとう、牧さん。今度、田中さんに謝っておくよ。」

自分は元来、管理職には向いていないと思っている。人と少しずれているというか、うまく人と合わせることができない。自分を優先させてしまい相手のことを思うことができていない。

「課長、そんなに気にしなさんな。」

牧田さんはニッと笑った。彼女は私よりも年上だ。たまに軽い口調になる。有能なエンジニアだったそうで表計算や文章作成がうまい。さらにコンピューターに詳しくほとんどのトラブルを解決してしまう。自分が頭に手を当てていると牧田さんが小さなお菓子をくれた。

「マネージメントは上に立つのではなくて、下から支えるよ。」

ほれっと食いなともう一つもらった。



「早乙女課長!」

小柄な女性が小走りでこちらに来た。

「おー、瀬奈ちゃん。お久しぶり」

牧田さんは女性に話しかける。

「あっ、牧田さん、さっきはありがとうございました。」

女性はペコっとお辞儀をした。女性の名は北野瀬奈さんで、営業二課の事務担当だ。

「牧田さんからメールをもらいまして、営業二課のシートが壊れていたって聞きました。」

すみませんでした。とまたお辞儀をする。

「ああ、いいんです。大丈夫ですよ。牧田さんが直してくれました。検算した結果も当初の予想と同じでした。」

北野さんはほっとした顔をした。牧田さんは立ち上がって両手をあげた。

「よーし、次はホリポンに謝ってもらおう!」

「えー、堀田部長には言えませんよ。」

牧田さんは営業部長の堀田さんに矛先を向けて、今回の営業計画表について謝罪を求めるようだ。しかし、堀田部長がこの表を直接入力したわけではないのでどうしたらよいものか。

「やっぱり、まとめ役がしっかりしていないとダメだ。」

いざっと、営業部がある5階に行こうとする。なぜだか牧田さんは堀田部長を「ホリポン」と呼び、からかいに行くことがある。

「ちょ、ちょっと待って。牧田さん、もう終業だから明日にしよう。」

我ながら説得力のない発言をしてしまう。牧田さんはえーという顔をした。だが、椅子に座りパソコンをシャットダウンした。

「まあ、そうですね。また明日ということで。」

自分は問題を先送りしてしまうことが多い。過去にも先送りで痛い目にあっている。直そうとしてもなかなかうまくいかない。明日はどんな顔で営業部に行けばいいのか。



帰宅時に最寄りの駅で本屋に寄るのが自分のルーチンワークだ。今日は自分が愛読している月刊誌の発売日だった。いつも通りに平積みされた雑誌を眺める。お目当ての雑誌はすぐにわかる。さっと手に取って、月号を確認した。

「1月号は特大だから厚めだな。」

あたり前の感想をつぶやいた。カラフルな表紙にはこう書いてある。



「月刊少女まんが 僕と君 1月号」



自分が子供のころからの愛読書だ。このきらびやかな表紙の色がたまらない。有名な少女漫画家さまが執筆している。今風に言えば「沼にはまった。」ということか。

「今回の表紙は『女神少女メイ』か」

明るく元気な少女が描いてある表紙が傷つかないように慎重にレジに持っていく。特に恥ずかしいといったものは持っていない。むしろ堂々と店員さんに渡す。

「700円です。」


「ただいま」

家に帰ると間接照明が灯ったダイニングに入り「僕と君」をテーブルに置いた。ほどなくして、奥の引き戸が開いた。

「おかえりなさい」

妻の紗矢さんだ。黒縁の眼鏡を掛けていて僕より背が高い。

「ごめん、遅くなった。今から準備するからね。」

自分はキッチンに向かい、買ってきたとんかつとキャベツを皿に盛る。味噌汁を作る予定だったが、遅くなったためインスタントにした。ソースを出して、ごはんをレンジし、我が家の夕食となった。


「私もさっき終わったところ」

「ああ、そうですか。じゃあ、ゆっくりとお茶を飲んでからにしよう。」

自分は茶筒を手に取り、急須に煎茶を入れた。湯沸かしポットのスイッチを入れる。

「すぐ沸くよ。ちょっと待っていてください。」

紗矢さんは椅子を引き腰を掛けた。手元に「僕と君」があるのに気が付いた。

「今月号は優さんは休載しているわ。」

「ええっ、そうなの。あー、『月の唱』はお休みか。」

「しばらく休むって言っていた。」

自分が落胆していたので、紗矢さんは気を使って背中を擦ってくれた。まあ気にしないで別に病気になったんじゃないからと言っていた。

『月の唱』は先月号では主人公が探していた『うたの子』に出会うシーンで終わっていた。続きが気になり、紗矢さんと今後の展開を話し合っていた。

なぜ紗矢さんが『月の唱』の作者、琴音優がしばらくは休むことを知っているかって?

それは紗矢さんは元少女漫画家、『白鷺かなえ』だからだ。

なに、『白鷺かなえ』を知らないだって。よし、自分が特別に教えてあげよう。

え、そんな時間はないだと。ちょっと待て、これから3時間ほど講釈をしようとしたのに。


「誰と話しているの?」

紗矢さんは怪訝な顔をして自分を見ている。

「ああ、ちょっとモノローグをしようとしたら止められたんです。」

んん?という顔をした紗矢さんだった。頼むから時間をくれ。


『白鷺かなえ』は『月刊 君と僕』に連載をもつ漫画家だった。どこか陰のある主人公が多くストーリーは儚げだった。デビューして5作品が掲載された。代表作であり最後の作品は『永』だった。残念ながら未完だ。未完となった理由はって、もう時間がオーバーしているって?おねがいだからもう少し時間をくれよ。けちだな。


「やっぱり誰かと話しているの?」

紗矢さんは怪しんでいる。

「たまに発症する自分語りだよ」

自分は適当なことをいってしまった。お茶を注いで紗矢さんと食卓をかこむ。


「いただきます」

「いただきます」

紗矢さんがゆっくりと食事をする。

いつも通りの我が家の食事だ。二人で食事をしていると疲れが吹き飛ぶ。自然と硬くなっていた顔が緩んでいく。

「いつものあなたに戻ったのね。」

「ああ、ちょっと仕事が入ってしまって。」

いいじゃない、仕事があるのはいい事よと紗矢さんは言ってくれた。いつも気を使わせてしまっている。課長になってからは帰宅する時間が遅くなり、紗矢さんに迷惑を掛けているし、愚痴を言ってしまう。

「私にはなんでも話してほしいの。」

紗矢さんはそう言った。ああ、そうだねと自分は返した。



我が家のダイニングには一枚の絵が飾ってある。少し、いやかなり変わっているが自分はとても気に入っている。独特の技法で不思議な絵だ。黒一色なのに見る人により色が変わり対象物も違ってくる。



自分にはこう見える。



『紅い薔薇』





「今日も何事もなく終業っと」

ノートパソコンをシャットダウンして帰宅の準備をする。とくに変わりない毎日だと思う。世の中ドラマみたいなことはあまり起こらない。課長も田中さんも瀬奈さんも悪くはないし、間違ったことはしていない。


「我々は平和だよ」


エナジードリンクを手にしてブラブラと歩いて帰宅する。アルコール類は飲めない。たまには何かを飲んでパッとしたいが、ビール、ワイン、日本酒などはダメだった。


「酒に溺れないだけいいのか」


空を見上げる。オリオン座が見える。

僕(私は女性だがこう言っている)はオリオンが見えると冬になったと感じる。そう感じる人は少ないのか、みんなスマートフォンを一生懸命見ている。


「この光景は異常じゃないのか?」


みんな同じことをしている。小さな画面を必死に何かを見ている。昔の僕も同じようだったのかな。今はそれほど情報端末に興味は持っていない。無いと困ると思い一応は持っている。でも、メール、インターネットは自宅のパソコンで行う。公共機関ではそれらをチェックしない。僕はインナーイヤホンを取り出して音楽プレイヤーの電源を入れた。高級なブランドのイヤホンからは高いキーの少女たちの歌が聴こえる。最近は母国語がしっかりとした歌詞が好みだ。途中でなぜか海外の言語が入る歌が多かった時代があった。言葉というものはコミュニケーションの貴重なツールだと思う。もちろん、うまくしゃべれない人もいるし、言葉を発したからと言ってうまくコミュニケーションが取れるとは限らない。僕はおしゃべりが好きだ。たわいのないことや取り留めのないことを話す。


オリオン座は冬の星座だ。真ん中の三つの星が見やすくわかりやすい。


「真ん中はε(イプシロン)か…」


見つけやすいオリオンから他の星座や星を探す。都心では周りの光が強いので星を見ることに適していない。また、高いビルがあり空を見上げても電飾された看板が目立つ。


「地球以外の星に行きたいな」


僕はわけのわからないことをよく考える。見えないものほど神秘的で知りたくなる。夜空にある星々は無限ともいえる距離がある。それを「天文学的数字」と呼ばれる。

そこには人間が想像できない遥かな空間や未知の物体がある。


「その星の光が見えるころにはその星は無くなってるんだよね。」


僕はなんとなく言ってみる。


「哲学か?倫理学か?」

後ろから声が聞こえた。声の主は分かった。

「なんだ、ホリポンか」

僕の後ろに営業部の堀田部長がいた。横に並んで話を始めた。


「営業部でデータを処理できる社員を必要としている。異動してきてほしい。」

早口で話をしてきた。焦っている様子だ。僕は関心がないと返事をした。

「欲しいのは技術だけで人間はいらなんじゃないの?」

意地悪な返答だと思いながら話を進めた。堀田部長は僕の話をまじめに聞いている。

「確かに技術は必要だ。だが、人がいないとうまくいかない。」

うーんと僕は首を傾ける。悩んだふりをしてみた。

「我が社のイプシロンシステムは優秀だと思いますけど?」


イプシロンシステムは当社の営業ツールとして開発されたシステムだ。営業と経理、現場などの数値データを入力して的確な営業目標を立案していくといったコンピューターシステムとなり、数年前に僕が設計して実装した。


「イプシロンの言うとおりにすればうまくいくよ。」

僕はそっけなく言った。

「ああ、うまくいっている。当社の利益は過去最高だ。」

堀田部長は続けた。ならいいのでは?と僕は思うがいたずら心が沸いた。


「じゃあさ、営業部は全員いなくていいよね。人件費が浮いたね。」

ははっと僕は笑うふりをした。堀田部長は真面目な顔をしている。ん?と僕は不安になった。

「その通りだ。」

「え?本当?」

なんでーという顔をしてみた。適当に言った言葉が図星だったとは困ったことになった。

「当部の人員は削減との話が役員から出ている。」

「ガチで?」

堀田部長は嘘は言わない人だ。冗談もあまり言わない。


「あーあ、昔言ったよね!営業のメンバーにもっと勉強してもらっておいてねって。」

「イプシロンが動いたら人間いらなくなっちゃうかもねって。」

なぜか僕は苛立ってしまった。堀田部長が悪いんじゃない。悪いのは。




「僕だ」




イプシロンを作るべきでなかった。あれは良くない。悪だ。人を堕落させてしまう。思考を止めてしまう。せっかく営業の人が考えたプロジェクトをイプシロンはあっさりと超えてしまう。結果、人間はやる気を無くしていく。


「どうするか」

僕はつぶやく。


「助けてくれ」

ホリポンは頭を下げた。


僕は困った顔をしてみた。

「分かったよ、僕がイプシロンと戦うよ。」

ニッと笑う。

「久しぶりにホリポンと仕事をしたくなった。」

やるぞーとおどけてポーズをとってみた。




一か月後、僕は営業部に異動した。

また、オリオン座が見えるころε(イプシロン)と僕がどうなっているか楽しみだ。





「こつん」

午前3時、私は軽く頭をぶつけた。となりには加奈が寝ているはずだったが、引き出しが目の前にあった。

「なんで引き出しが?」


むくりと体を起こすと自分の位置が分かった。

「ベッドから落ちたのね。」


ベッドのマットレスには加奈が寝ていた。私には羽根布団が掛かっていたが、加奈は毛布にくるまっていた。ベッドはセミダブルで加奈と二人で寝ている。今まで、私は自分の寝相が悪い事に気が付いていなかった。実家ではクイーンサイズのベッドに寝ていたため、多少のことでは落ちない。今のベッドはそれほど高くなく、落ちても大丈夫、下にはラグマットが敷いてある。加奈とアパートに住んでから、何度も落ちている。私は気恥ずかしくなった。私に羽根布団が掛かっているということは、加奈が私に掛けてくれていることに違いない。毎回、加奈はどんなことを考えて布団を掛けてくれているのだろうか。


「私は何もできない。」

部屋を見渡すと家具やテレビ、パソコンなどが見える。ほとんどは加奈がそろえてくれたものだ。そもそも、このアパートの家賃は加奈のお給料から支払われている。加奈は仕事をしてお給料をもらい、私を養ってくれている。


ただ、私はエレキギターを弾いているだけ。何もしていないのに、加奈は手伝ってくれる。弦交換は加奈がしてくれる。私がするよりもきれいだった。私は加奈のようにうまく巻けない。いつの間にかギターの弦交換は加奈の仕事になっていた。


ベッドの下の引き出しは私の収納スペースとなっている。そっと引き出して手探りで自分の手帳を取り出した。パラパラとめくり月間スケジュールを確認した。日にちの下に56と書いてある。弦交換は56回ということ。つまり、加奈が私のエレキギターを初めて交換した日から56回交換してくれているということ。交換間隔は一か月以内としている。短い期間で交換していることもあるけど、約4年半近く経っていることになる。


「これからも交換してくれるのかな。」

ネガティブ思考が襲ってくる。加奈は自発的に交換してくれている。それは約束事ではない。ずっとしてくれるという保障などはない。もうやめたと言われたら、そこでおしまい。すでに加奈の巻いた弦に慣れてしまっている。もしかしたら、違う人の巻いたものではうまく弾けないのではないのか。チューニングがとても正確なのでとても弾きやすい。指板とフレットはかなり使ったギターなのにとてもきれいだ。このギター以外では私は弾きたくないとも思っている。うれしいことなのになぜか悲しく感じた。私は立ち上がり、加奈を起こさないようにベッドメイキングを始めた。ゆっくりとシーツのしわを取り、羽根布団を丁寧に掛けた。加奈はよく寝ている。実家と同じマットレスを使っているので寝心地はとても良いと思う。ブランドものなので値が張るはずだけど、みんな買ってくれたの。はじめは私一人でベッドで寝るのだと思っていたら、加奈と二人だった。誰かと同じベッドで寝るのは初めてだった。最初は緊張して眠れなかった。加奈はすやすやと眠っていたのでだんだんと慣れてきた。きれいにベッドメイキングできた後はそっと加奈の隣に入る。とても近い距離なの。どきどきしている私の心臓音が加奈に伝わらないか気になる。


「これがいつまで続くのだろう」

さらなるネガティブが覆いかぶさる。この生活は偶然起こったことで、私が何かをしようとしたわけではない。加奈、両親、兄さんが決めたこと。私の無鉄砲でみんなを混乱させてしまい、打開策として加奈を上条の会社に入れてしまった。そして、加奈がこのアパートを借りて二人で住んでいる。この住処の主は加奈で私は居候。いつ追い出されても不思議ではない。もう4年以上経つのにこの考えが頭を巡る。とまらないネガティブは私をさらに追い詰めていく。そう、このまま続くはずはない。5年、10年後は?加奈は私を高校の同級生として友達として見ている。加奈も私も年をとっていく。適齢期を迎えた加奈はどうなるのか。私にとって最悪の事態を想定はしている。何年後かには起こりえることだ。


加奈がすてきな男性を私に紹介してくる。

「この人と結婚するの」


そのときに私はこう答えなければならない。


「おめでとう。よかったね。加奈」

と笑顔とともに。そして、私はこのアパートから去らなければならない。

ここを後にした私は抜け殻になるのだろう。


「うっ」

嗚咽が漏れてしまった。涙が止まらない。これは加奈にとっては幸せ。忘れてはいけない。加奈も私も女性。そのことは明白だ。変えられない真理となっている。どうしようもない。


「どうにもならないの」

ひっく、ひっくと止まらなくなる。そっと頬に暖かい温度が触れた。


「泣いているの?」

私は最大の失敗をしていた。加奈を起こしていたことに、今、気づく。

まぶたを開けることができない。加奈は私を見ているだろう。どうすればいい?


「怖い夢を見たのね。大丈夫よ、私がここにいるから。」

優しく私の髪を撫でる。


「でも、いつか加奈は行っちゃうの」

私は絶対に言ってはいけないことを口にしてしまった。

何もかもが終わってしまう恐怖に耐えきれなくなった。


「私は由衣から離れないよ」

「ねえ、覚えているかな。あの時の言葉を。」

加奈は話し続けた。


「私は自分がやりたいことをしたい。そうしないと後悔すると思うの。」


そっと、加奈は私の手を握った。エレキギターを弾いていることで左手の人差し指と薬指の先はかさぶたの様になっている。私の手は震えている。



「大好きよ。由衣」



私たちの朝はわりと早い。

薄暗い空がゆっくりと明けてくる。

初夏の空気が風に乗って、カーテンを揺らす。

太陽がまぶしく、ペグが光る。


私は弦にゆっくりと触れる。

セーハ、ハンマリング、スライド。


私はこの曲で始める。

有名なバンドの好きな歌。


「なんとかなるのよ」


私は自分の左手を愛おしく見る。


薬指にはプラチナの指輪があった。



Extra story "Overdrive for tomorrow"


私はアンプのオーバードライブスイッチを入れた。出版社の事務局に気になったアンプを借りてもらっている。今日は長めのシールドケーブルを使っているため、フットワークは軽い。大きいアンプはあまり使ったことがないのでスタジオで練習してきた。最初は大きな音で驚いたけれど、迫力のあるゲインで熱中してただひたすら弾いていた。



ここは渋谷にある大きなビルのパーティー会場、少女漫画雑誌のセレモニーが行われる。なぜか私はここでエレキギターを弾くことになった。いきさつを説明すると理解しがたいことが多々あり、私はうまく説明できるか分からない。



私の加奈は上条というグループの本社に勤めている。現在は出世をして係長となっている。所属している課の名前は「統合情報管理課」というらしい。上条グループにはコンピュータシステムを開発するための会社がある。「ウイズダムシステム株式会社」という名前で、その中にはイプシロンⅡとウイズダムというグローバル・インテリジェンス・ジェネレーターというものを開発している。ここでもうすでに私の理解を超えている。「そこは省いていいという」天の声が聞こえた(ような気がした)。



話を進めるとそのシステムが最も理想的な知識は「漫画」という結論を出した。世界中で活躍している会社が発表したので業界は大騒ぎになった。でも、ここからが分かりにくい。上条グループには漫画を扱っている会社はなかった。そのため、漫画を発行している出版社を探してグループに吸収することにした。いくつかの困難があったがそれは達成した。その中で活躍したのが、私の加奈(強調する)の元上司である早乙女さんだった。正確に表現すると早乙女さんのパートナーである、早乙女紗矢さんが奮闘してくれた。私はそのお名前を存じ上げなかったのですが、『白鷺かなえ』というペンネームで一瞬で理解できた。



かくして、上条グループに出版社ができた。しかし、そう簡単に出版社を作ることはできないので、大手の出版社と協力して立ち上げた。会社名は「上条出版」と地味な名前(というか私の旧姓)となっている。その会社が少女漫画の月刊誌を発行した。その1号の記念として今回のパーティーが開催されている。



「もうここで私の出番はいいのではないのですか?話疲れました。」



天に話しかけてみた。承認の返事が来た。


最後に申し遅れましたが、私の名前は『田中由衣』と申します。

大事なことなので、もう一度言います。『田中由衣』です。(ここも強調します。)



僕にバトンが渡された。



すごく長い前置きを残して去っていた女性は僕の長い付き合いの仲間のパートナーだ。とても良い家柄の人だと思っていたら、会長の妹さんだった。今は社長を退任しているが、僕は彼には良く助けられた思い出がある。



イプシロンⅠ(前世代)を改良しようとして、会社内から大反対をされたときに手を貸してくれた。それが良いかどうかは分からないが、「社長の鶴の一声」というやつだ。僕がイプシロンⅠを改良してイプシロンⅡを作った。すべてをゼロから作れないため、情報収集統合分析管理システムの「ウイズダム」の一部を利用した。「ウイズダム」も僕が設計し、実装を行った。もちろん、すべてをひとりで完了することは無理だ。多くの技術者の力を借りて作り上げた。前世代の欠点を克服することができた。



イプシロンⅡの目的は「人間に協力すること」だ。



実装した結果、人間とコンピューターのコラボレーションが実現できた。

これは僕だけの成果ではない。多くの技術者、利用者(ユーザー)といった人間が成し遂げたことで、僕はとても誇らしい。



この説明の最後は自己紹介をする必要があるらしい。



はじめまして、僕の名前は「牧田ひかり」じゃなくて「堀田ひかり」です。

次はだれがしゃべるのかなぁ。

え?この人に僕がバトンを渡すの?

恐れ多いんでない?




なぜかわたしは他の人から気難しいと思われている。

わたしの作品のせいかしら。まあ、実際にわたしの漫画は難しいかもしれません。難しくしようとしているのではなくて、わたしが説明下手なだけなのだけど。

わたしは真正直には話したりしないので、よくわけがわからないと言われてしまいます。世界の見え方が違うとも言われる。わたしと同じ見え方がする人はいないとおもっていました。ただ、彼はわたしと同じものが見えた。そう彼だけが。

「なぜ、自分の話ばかりしているのか?」と天の声が言っています。が、わたしは無視をすることに決めています。


ん?今、天の声が謝っています。「『永』の最終回に触れてください。おねがいします。」と言っています。


上条出版の少女漫画1号には『永』の最終回が掲載されていますのでお楽しみに(棒読み)


いいのこれで?


わたしの名前は「早乙女紗矢」です。



最後は私です。

「田中加奈」です。

すぐに終わりますので、最後まで聞いてください。



「私は自分がやりたいことをしたい。そうしないと後悔すると思うの。」



とても大切なことです。

それをするために私たちは生きていきます。



ありがとうございました。



パーティー会場に響く拍手が終わったあと。

私は弦にゆっくりと触れる。

セーハ、ハンマリング、スライド。



私はこの曲で始める。

有名なバンドの好きな歌。





あたたかな風が頬に触れた。もうすでに春になったことに気が付いた。

窓の景色に青空が広がっているらしい。私は片手にパレットを持ち、チューブから色を絞り出す。いろはいつもの色だ。

アイボリブラック。


ペインティングナイフでキャンバスにいろを作り出す。

「赤はどんなだっけ」

描いているときはひとりごとを言ってしまう。誰も聞いてはいないが、なぜか問いかけてしまう。誰も答えないが、描いていく。パレットの絵の具も少なくなり、私は描くのをやめる。静かなアトリエで、また風がそよぐ。夜になったことを肌寒さでわかった。少しの間、描いた絵を見た。絵は完成している。そっと近づき見る角度を変える。夕日が差しペインティングナイフの跡が光る。でこぼことホワイトとブラック、いつもの私の絵だ。


ある日、僕は不思議なことに出会った心がざわめく。視界がさだまらず、たまらず目を伏せた。ざわめくのは心だけではなかった。ギャラリーがざわめいていた。いつもならば静かな小さな美術館だ。今回の個展は無名の画家だったので、興味はなかった。入ってからはそれを悔やんだ。しかし、それは嫉妬からかもしれない。僕も絵を描く。他の作家の絵を見ることは良いと先生も言っていた。だが、今回は違った。自分の至らなさが分かってしまった。


「この人には何が見えているのか。」


そう一言が出てしまった。誰も答えないだろう。


「色が見えないのよ」


誰かが答えた。


隣に人が立っていたことに気が付かなかった。少し背の高い女性だ。年はよくわからない。黒い服を着ていた。


「でも、色はあるの。見えていたのは昔のこと。」

女性は去っていく。

「あの、絵は」


振り向く彼女に僕は言った。


「紅い薔薇です」


彼女は笑った。


「そうね」


小さな美術館、その個展のタイトルがあった。

「黒の世界」




Two with you.<完>

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Two with you. 詠称はると @anne-hardt

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