第7章 学園都市メルキス編 第2話(6)

 学園長室は奥行きと幅のある広い間取りの奥に年季を感じさせる風合いの黒檀の机があり、両側の壁を埋めるように設えられた古木造りの本棚には厚版の書籍や学園目録などの資料がずらりと、かつ整然と並んでいる。部屋の奥には広い窓があり、そこから入り込む白く柔らかな光が、学園長室とその奥に鎮座する学長の机を後光のように照らしている。

 一行がその部屋の森厳な風格に居住いを正す中、奥の机に鎮座していた紺色のローブに身を包んだ老人が、机に広げていた書物から顔を上げ、付けていた片眼鏡を外した。

 銀色の豊かな老髪の下に穏やかな青い瞳を光らせる、老齢の学翁がそこにいた。悠然とした身に纏う空気には彼が積んできた学識が融け込んでいるかのような風格をも感じさせた。

 学園都市の主、ニコル・セイランド学園長は、上げた視線の先に見えた紅い髪を見ると、しばし言葉を失ってから、孫娘の帰郷を知ったような声音で言った。

「その髪の色……まさか、君なのか、クラウディア?」

「私もいるわよ。お久しぶりね、ニコル先生」

 先んじて挨拶したサリューに続き、クラウディアも再会を喜ぶように名乗った。

「クラウディアです。ご無沙汰していました、学長先生」

「おお……無事だったのか、二人とも。大きくなったな……元気そうで何よりだ」

 感涙に目元を拭う学園長を前に、リヴが問いを発した。

「え、何、クラウディアさん達、学園長先生と知り合いなの?」

「昔、行き場がなかった頃にお世話になっててね。もう十年以上前の話だけど」

 サリューの話を横に、セイランド学園長はクラウディアに親しみを込めた声をかけた。

「よく来てくれたな。もっと近くに来なさい。そんなに距離を開けて話す仲でもなかろう」

「そうですね。では、失礼します。皆も一緒に」

 クラウディアのその言葉に一同は頷きを返し、学園長の座る机に歩み寄った。セイランド学園長は目の前に聳えるように立つクラウディアの勇壮な姿に、感嘆のため息を漏らした。

「いや改めて、本当に大きくなったな……あの頃のことを思えば、感慨もひとしおだ」

「恐れ入ります」

 答えたクラウディアの周囲にいるクランツ達を見回して、セイランド学園長は言った。

「サリュエリスはいいとして……周りにいる彼らは、新しい仲間か?」

「はい。私は今、自警団協会王都支部の団長を務めさせて頂いています。彼らはそこに所属する私の部下です。現在はある目的のための旅業中に護衛として同行してもらっています」

 クラウディアの言葉に、セイランド学園長は娘の成長を喜ぶように頷いた。

「あの二人の意志を、今は君が継いでいるというわけか……本当に、立派になったものだ。だがとなると、私の元に来たのは単なる挨拶だけというわけでもなさそうだな」

 そして途端にその真意を見抜いたセイランド学園長の慧眼に久しく底知れぬものを覚えながら、クラウディアはこれ幸いとばかりに、早速話を本題に切り替えた。

「アルの使いにより、メルキスを治める学園長先生に、お伝えしたいことがございます」

 そう切り出し、クラウディアはセイランド学園長に自分達が担う事の次第を説明した。

 王城に勤めるアルベルトから、王国の深部で進行している最終兵器開発計画のことを知らされたこと。それを阻止したいというアルベルトの要請に従い、自分達が有力な賛同者を求めて全国を巡っていること。それに相対する勢力と既に何度か遭遇していること。

「そうか……アルベルト君は、そんな大それたことをしようとしているのか……」

 話を一通り聞き終えたセイランド学園長のその言葉に、セリナが引っ掛かりを覚えた。

「え、学園長先生もアルベルトさんのこと知ってるの?」

「ん? ああ、そうだな……前に少し、世話をさせてもらったことがあってな……」

 セリナのその疑問に、セイランド学園長はそこまで答えて、クラウディアに目を向けた。

「クラウディアよ、その様子だと、君達がここにいた頃の話は彼らにはしていないようだな」

「ええ、恥ずかしながら切り出す機会がなく。せっかく再会できたことですし、紹介したい人員も揃っていますので、よろしければ先生の方からお話しいただければ」

「ふむ……そうか。確かに、この場の皆、話して困るという間柄でもなさそうだな」

 クラウディアの提案に、セイランド学園長は王都自警団一同の顔を見渡した後、言った。

「まあ、君がそう言うのならばよいだろう。添え物程度でよければ話させてもらおう」

「恐縮です」

 クラウディアの返礼を受け、セイランド学園長は軽く咳払いをすると、話を切り出した。

「まず前提として、皆は彼女のことをどこまで知っておるのかな?」

 セイランド学園長のその問いに答えたのは、彼女に対して最も中立的な立場を自認していたルベールだった。彼は自らに水を向けられたことを察しながら答えた。

「一般団員のルベール・コーバッツです。僕が団長について知る限りのことは、王都自警団草創期からの初期団員であるということと、先程話に出たアルベルト氏やその旧友の方々と旧知の仲だということくらいです」

「あと、団長が魔女だってことも知ってるよ。あ、セリナ・カルディエです」

 続く一般団員であるセリナの話に、セイランド学園長は思案顔のまま言った。

「となると……皆は、彼女が故郷を二度追われていることは知らんのかな?」

「いえ、知ってます。僕はその話をクラウディアから聞きました」

 さらに同じく一般団員であるクランツのその返答に、セイランド学園長は、ほう、と感心したように言うと、話すべき内容を吟味するように言った。

「なるほど……サリュエリスや残りの二人は当然事情に通じておるとなると、君の基本的な事情は概ね皆に了解されているということでよいのかな?」

「そう考えていただいてよいと思います。私の事情を知られて困る者は、ここにはいません」

「そうか……では、改めて差し障りの無い範囲で話させてもらおう」

 クラウディアの返答に、セイランド学園長は再び軽く咳払いをすると、話を切り出した。

「クラウディアはかつて、このメルキスで生活していたことがある。先程話に出たアルベルト君と、そこにいるサリュエリスと一緒にな」

 その言葉に全員の視線が向くのも気にせず、サリュエリスは続きを促すように言った。

「続けて、先生」

「うむ。当時、彼女達は身寄りもなく、行き場を失った状態で、このメルキスに逃げ込んできた形じゃった。それを彼女の遠縁に当たる方がひどく心配なさってな。私との協議の上で、彼女達をこの町に匿うことにしたのじゃ」

「クラウディアの、遠縁……?」

 気になることを聞いたように呟いたクランツに、セイランド学園長は言葉を続けた。

「皆は、彼女がいわゆる六星の巫女の血筋に列する者だということは知っておるのかな?」

「ええ。私が魔女だということと同じように周知されていると思っています」

「そうか。では話が進めやすいな」

 クラウディアの了解を得たセイランド学園長は皆に視線を戻し、言った。

「クラウディアの母親セレニアがそうであったように、このメルキスもまた、六星の巫女の一人を擁しておる。遠縁と言ったのはそういう意図じゃ」

「それってもしかして、クレア様のこと?」

「もしかする必要もないだろう。この町にいる六星の巫女は彼女一人しかいない」

「二人とも、割り込まない。学園長先生の話の途中だよ」

 後ろで話し出したリヴ、ゲイツ、カルルの話に、セイランド学園長は相好を崩した。

「まあ、そういうことじゃな。当時クラウディアを引き取ることを決められたのが、このメルキスを守護する六星の巫女――《白闢の光星》シンクレア・セフィール様じゃった」

 そう昔を懐かしむように言うと、セイランド学園長は一つ、深く重い溜め息を吐いた。

「クレア様は、クラウディアの母親に当たる旧友のセレニア殿が亡くなられた時のことをひどく気に病んでおってな。クラウディアが二度に渡り故郷を追われて逃げ込んできたという話を聞いた時、迷いなく彼女を匿うことを決断された。セレニア殿が亡くなられたのは決して彼女の責任ではないのじゃが……気に病まれても仕方のないことではあった」

「…………」

 セイランド学園長の言葉に、クラウディアが深い消沈の気配を見せる。それを感じ取ったクランツは、かつてクラウディアから聞いた話を思い返し、自らも胸が重くなるのを感じた。

 クラウディアの母親セレニアが彼女を守るために身を挺して暴徒の手にかかったこと、そして逃れた先の村までその後に焼かれたことを、クランツは彼女やその旧友である《墜星》の使徒であるハンス達から断片的にだが直接聞いて知っている。その話が未だ知らされていない所に広がろうとしていると思うと、クランツは同時に気が引き締まるのを感じた。

 彼女のことを知る上で、自分はより深い所に踏み込もうとしている。彼女を助けていくためにも、彼女に相応しい男になるためにも、それは知らなければならないことだった。

 一人決意を新たにするクランツをよそに、セイランド学園長は話を続けた。

「いずれにせよ、クラウディアとサリュエリス、そしてアルベルト君は、そういった経緯からこのメルキスで暮らしていた。もう十年以上も前のことになるかな」

「そうね。三年くらいはこの町にいたのかしら。懐かしいわね」

 昔を懐かしむようなサリューの言葉を受け、クラウディアは感慨と共に言った。

「今更になりますが……あの時は本当にお世話になりました、先生」

「何、わしもクレア様同様、罪滅ぼしのようなものだったからな。そう言ってもらえるなら、報われるというものだ。後でクレア様にも会って言ってあげなさい。きっと喜ばれるはずだ」

 そう喜色を浮かべたセイランド学園長はしかし、すぐに再び思案顔に戻ってしまった。

「しかし、本当に立派になったと手放しで喜びたい所だが……先程の話、どうしたものやら」

「最終兵器開発阻止計画についての賛同の可否ということですか?」

 クラウディアの言葉に続くように、サリューが意外とばかりに言った。

「意外ね。先生のことだから、こういうことなら迷わず手を貸してくれると思ってたけど」

「無論、話を聞く限り、野放しにしておくわけにはいかない話だというのは承知している。君達が既に旅業において何者かの妨害を受けている事実からしても、信じない理由はない。何よりあのアルベルト君が先頭に立っているということからしても、支援する思いはある」

「じゃあ、どうして渋ってるの?」

 突如そこに切り込んできたセリナの言葉に、全員が驚いて彼女の方を見た。

「ちょっと、セリナ……」

「だって反対する理由ないんでしょ? だったら協力してくれればいいのに」

 反射的に反応したクランツに諫められながらも疑念を抱かないセリナの歯に衣を着せない態度に、セイランド学園長は面白そうに笑った。

「何とも清々しい物言いのお嬢さんだな。そう来られてはぐうの音も出ないと言いたいが」

「何か、迷う理由があるってこと?」

 重ねたセリナの問いかけに、セイランド学園長は頷きを返した。

「協力はしたい。だが私からすると、その話はあまりに全貌が見えん故に不安なのだ」

「全貌?」

 セリナを始め、その言葉に引っ掛かりを覚えたその場の全員に対し、セイランド学園長は、うむ、と重い頷きを返した。

「アルベルト君が阻止しようとしている最終兵器開発計画、またの名を《魔戒計画》……それがアルベルト君が危惧している通りの危険性を孕んでいるとして、それほどの大規模なものを相手取るならば、その全貌をある程度把握しておくことは必定じゃろう。何せ、事は王国府や最高権力者であるベリアル宰相が直接絡んでいるような代物だ。下手に揺さぶりをかけた所で崩せるものとは思えん。それが最終的にどのような状況を目的としているのか、そのための行動がどの程度進んでいるのか……それを、その計画がこの王国に及ぼす危険性と、対処の緊急性を測る指標としたい。それが判明しない内は、わしはこのメルキスを預かる者として、性急に決定を下すことはできない」

 セイランド学園長の言葉にその場に緊張が走る中、ルベールが口を開いた。

「仰ることはわかりました。でしたら、僕達は具体的には何をすれば?」

「《魔戒計画》、及びその根幹となる《魔戒》なる最終兵器、その開発を進める者達……それらの具体的な情報を集めて来てほしい。それらを、メルキスの代表の一人として、君達の計画に関わるべきか否かの判断材料としたい」

「具体的な情報って……さっきの話だけじゃダメなの?」

「足りないんだろうね。町の代表としての判断をするには、確証が欲しいんだろう」

 反駁したセリナに答えたルベールの言葉に、セイランド学園長は重い頷きを返した。

「私が知りたいのは先程話した通り、それらがこの王国にどのような状況をもたらそうとしているのかということと、それを阻止するためにどのような行動が必要なのかだ。それに明確な答えを見ることができれば、私は君達の計画に改めて心からの賛同の意を表そう。このメルキスの町を賭けるに相応しい証左を、私とこの町に見せてくれ」

 セイランド学園長の要請に、クラウディアはわずかに考えた後、胸に手を当て、宣言した。

「承知しました。先生が力を貸すに相応しい証左を、見せて御覧に入れましょう」

「クラウディア……」

 クランツを始め全員の目がクラウディアに向く中、サリューが確認のように言った。

「当てはあるの、クララ?」

「ああ。この学園都市なら調べ物には困るまい」

 それに、とクラウディアは振り返り、一同に意志を見せるように言った。

「我々としても、ただでさえ足元がぐらつきかけている始末だ。先生が指摘されたことを把握しておくことは、今後の行動を見定める上で役に立つはずだ。これまでに我々が得てきた情報を洗い直すにも良い機会だし、ここは御言葉に乗らせてもらおう」

「なるほど、一理あるわね。そういうことなら私は異論はないわ。皆はどう?」

 サリューの言葉に、真っ先に答えたのはクランツだった。

「おれは、いいと思います。団長が言った通りだと思うし」

「クランツ……」

 積極的な姿勢を見せたクランツにクラウディアが驚きを見せる中、ルベールが続いた。

「そうですね、僕も異論はありません。むしろ今後を考え直す良い機会だと思います」

「んーまあ、あたしも。調べ物しなくちゃって思うと、何か大変そうだけど」

 それに乗ったセリナの後に、さらにエメリアとゲルマントも続く。

「エメリアちゃんも当然、異論なんてございませぇん。理由は皆さんに同じですぅ」

「まあ、反対する理由の方がないな。今後の作戦会議と思えば、悪くない提案だ」

 自警団全員の同意を受け、クラウディアは改めて、セイランド学園長に向き直った。

「しばらくお時間をください。先生の信を受けるに足る証左を見せて御覧に入れます」

「ああ、期待させてもらうよ。調べ物なら、この町で使えるものは全て使って構わない。手続きに関してはエマ君に間を持ってもらおう」

「感謝します」

 セイランド学園長の取り計いに謝意を示すクラウディアに、ふいにカルルが声をかけた。

「クララさん。僕らも好きに使ってください」

「な……カルル、お前……!」

 当惑するクランツの言を待つまでもなく、クラウディアも表情に困惑の色を浮かべた。

「しかし、カルル君……さすがにそれは。君やお友達の学業に障りを出すわけには……」

「どうせ数日のご用事でしょう。それくらいなら差し障りはありませんよ」

 それに、と、カルルはクラウディアの前に歩み寄り、その眼を見て、言った。

「せっかくクララさんと同じ場所にいられて、そのクララさんが困ってるんです。助ける手を出さないわけにはいきません」

「カルル君……」

(カルル……お前、この野郎ッ……!)

 紳士そのものの物言いは、クランツの敵愾心をこの上なく煽った。

「まあ、あんたはいいとしてさ……リヴとゲイツはいいの?」

 セリナの問いかけに、リヴとゲイツは揃って呆れたような目をカルルに向けた。

「いやーそれがさー。このカルルから事前に話通されてんの、あたしら。近い内に手を貸したい人がこの町に来るから、予定空けておいて手を貸してくれって」

「親友の頼みゆえ断る理由もなかったが……まさかこのような事情だったとはな」

「な……」

 呆気にとられるクランツを尻目に、根回しを成功させたカルルは自信ありげに言う。

「そういうことです。ぜひ、僕達にも協力させてください、クララさん」

 積極的に協力の意志を見せるその言葉に、クラウディアは確かめるように言っていた。

「カルル君。君は何故、私達の件にそこまで関わろうとする?」

「クララさんが手を焼いているのを黙って見ていられないから……というのもありますが」

 そう言って、カルルはおどけた態度を真摯なものに改め、こう言った。

「単純に、僕自身としても無視できないんです。王国の情勢を根本から揺るがしかねない計画が王政の水面下で進んでいるなんて事態を、王族が無視するわけにはいきませんから。僕がこのメルキスという外部に籍を置いているのには、そういう理由もありますしね」

 そして、クラウディアにその黄金色の瞳を向け、誓願のように言った。

「僕の目的は、クララさん達と同じ道を辿るものだと思っています。この国の闇を暴く同志として、協力させてください」

「カルル君……」

 カルルとクラウディアの間に沈黙が生まれる寸前、エメリアがふいに口を挟んだ。

「まったくもう、カルルお坊ちゃまったらお嬢様の前だと毎度アッツアツですねぇ」

「ちょ、エメリア……?」

 思わぬ横槍にクランツが虚を突かれる中、その言葉に気を緩めたクラウディアは、ふ、と笑って、カルルにその紅い眼を向けた。

「君も、意志は固いという訳か……そういうことなら、謹んで行動を共にさせてもらおう。我々もこの町の地理には疎いからな。助けてもらえるのは幸いだ。ただし、我々は自警団、君はあくまで表向きは一般学生という立場だ。限度は守るようにしてくれ」

「承知しました。その辺は自分で判断しますよ。これでも節度ある立場ですしね」

 クラウディアの了承を受け、カルルは任せろとばかりに爽やかな笑顔を浮かべた。

 朗らかに会話を交わす二人を遠巻きに見ていたクランツの胸中は穏やかではなかった。

(あいつ……絶対クラウディアに変な手は出させないからな……!)

「その意気ですよぉクランツさん。押し負けたらダメです、ファイト!」

「だから何で考えが読めるのさ……っていうか、君さっき……」

 クランツの指摘を躱すように、エメリアがクラウディアとカルルの方に駆け寄った。

「それではそれでは、さっそく学園探検と参りましょお~。カルルお坊ちゃま、ご案内はよろしくお願いしますねぇ。エメリアちゃん達は朝ご飯まだなのでお腹空いちゃってますぅ」

 急に歩み寄ってきたエメリアに、カルルは軽く戸惑いを見せたが、すぐに気勢を正した。

「そうなんだね。でしたらまず学食にご案内しましょうか。椅子もあるので落ち着いて話もできるでしょうし。学内の案内は僕達に任せてください」

「む……そうだな。では早速で悪いがお言葉に甘えさせてもらおう。皆もそれでいいか?」

「そうね、今日も忙しくなりそうだし、まずは精をつけましょうか。お酒、置いてある?」

「あるわけないでしょう。学生食堂ですよ」

 サリューとルベールのやり取りをきっかけに、一行はカルルの後に付いて行く。

「な……何で……?」

 一人、歩き出せずにその場に取り残されかけたクランツは、

「あれぇ、クランツさんどうしたんですかぁ? 置いて行っちゃいますよぉ~」

「置いて行く流れにした君が言うなよ……」

 張本人であるエメリアに拾われる形で、渋々の体でその後に付いて行った。


 こうして、カルル達の案内による、メルキス聖堂学園の探検が始まった。

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