第91話 逆転はデジャヴを感じる
「・・・・足跡がないな」
「そうだな」
「ど、どうする? 俺達がここまで追えたのは明確な痕跡、足跡が続いてたからだ。 でも、その肝心の足跡が途切れてる。 ここからどうすれば?」
「そうだな。 ・・・・・・ハハハハハ。 そうだな、どうすれば、いいん、だろう、なぁ?」
力無く笑うテクル。
1本道で迷う要素が無かった【贋金まみれ洞窟】と違い、【赤みがかった森】は当然中に入れば全方位が木々なのだから、追うべき痕跡がなくなればそれ以上の追跡は不可能となる。
そして先ほどまで深夜の通り雨による地面のぬかるみで出来ていた足跡が、クロイ達が今いる地点から完全に途絶えているのだ。
つまり、もうどちらに行けばいか分からない。
ラスイという万能すぎるレーダーを持つ存在がいれば話は違ったが、そのラスイがいないからこうなってる。
俺達が途方に暮れ、立ち止まっていると・・・・・
いきなりテクルが片手で髪を掻きむしり始めた。
「テ、テクル?」
「うぅぅうあぁぁぁあああぁぁぁ!!!! ラ、ラスイのところまでの標がもう無いぃ!! ど、どうすれば!! どうすればぁぁぁぁぁああああ!!!!!!」
先程の孤児院内の時のように、再度発狂し始めるテクル。
一度は足跡という追う事が出来た希望があったからこそ、それを失った事で絶叫がより苦痛が溢れた激しいものとなっている。
・・・・・確かに、もうこれ以上追えない。
森の中、何の手がかりも無しに闇雲に探してもきっとゴールには辿り着けない。
だけど。
まだ、諦めるには早い。
俺の母は言った。
『道に行き詰まったら、どうして進めないのか考えろ。 それでも答えが出なかったら、色々ひっくり返せば何か分かるかもな』
母が言った、“道”・・・・それは実際の道を指してる訳ではなく、もっと抽象的な、心象的な、進むべき方向の事だ。
今この場では、進むべき方法が閉ざされたこの道に母の教えを適応してみよう。
困難にぶち当たった時、沢山考えるのはいつもの事であり当然の事。
いつもいつだって、あらゆる情報を組み立てて問題を突破したのだ。
・・・・今回だって、きっと。
思考して、試行して、正解への指向を見つけるのだ!!
まず考えるべきは、急に足跡が消えた事。
さて、途切れた足跡だが・・・・よくよく考えると違和感が満載だ。
足跡がここからなくなってる、逆に言えばここまではあったのだ。
シクスがここから意図的に跡を消したとは思えない。
ここまで痕跡を放置しておいて今更すぎるというのもそうだが、雨の中真夜中に片足だけで魔物を捌きつつ跡を消すのは時間的にも労力的にも厳しい。
つまり、シクス自身が痕跡を消しつつ進んでいるわけではない。
じゃあ、何故ここからぷっつり途切れてるのか?
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
そ れ が 分 か ら ね ぇ ん だ !!
・・・・・もう、ヤケクソだ!!
こじつけだろうが、妄想だろうが、最終的に筋が通ってちゃんと正解に辿り着けてればそれでいい!!
どんな考え方だろうとやってやる!!
でも・・・・分からない、さっきからそれには変わりないけども。
こうして新しい視点から考えると、どこか重要な答えへの大きな手がかりが眠ってる気がする。
色々考えると、今までの情報に見落としたとこもある気もしてきたし・・・・
・・・・・母の教え、『それでも答えが出なかったら、色々ひっくり返せば何か分かるかもな』。
ひっくり返す。
新しい視点。
今までの情報。
・・・・・・うむむ?
この状況、実際に自分が体感したわけでも体験したわけでもない。
でも、この状況。
なぜだか、既視感を感じるぞ?
このデジャヴは何だ?
自分の近くで似たような事があったのか?
・・・・・・・・・
シクスの逃走。
俺達の追跡。
突如消えた足跡。
追えなくなり止まる俺達。
・・・・・・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ!!!
分かったぞ、この既視感の正体!!!
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