第77話 時間経過はギアを戻す
只今、体内で爆破が起きたにも関わらず生命活動を停止せず、自らを固定していた尻尾から解き放たれた謎蛇が這いずって追いかけてきている。
その執念を感じる追跡から逃げるために、膝の金化で上手く歩けそうにないからテクルに運んで貰ってるのだが・・・・
隠れるのに使っていた程よい大きさの金塊まで引き返せば、そこにいるのは俺より金化が酷く動けそうに無いシクスと先生。
先生に至っては度を超えた疲労困憊で、未だ気絶中。
そしてさっきまで謎蛇が死んだものかと思い大丈夫と思ってたが・・・・まだ生きてるという事は止まる、ましてや解除されるなんてことはなく、むしろ作戦の始めの時より金化が大きくなってる。
つまり何が言いたいかというと、この作戦中後ろにいた組の二人が自力で移動なんて出来るはずもなく。
金は高密度で重く、テクルを除いて走れるラスイは非力・・・・とまではいかなくてもそんな二人を持てる程の力があるとは思えないし、実際持てそうにない。
その状況に陥った結果。
テクルという女性が片手で、金の重さを持った3人を重ねてお米様抱っこして走るという独創的すぎる絵面が誕生したのだ。
丁度さっき、御伽話とかでは逃げる時には男性が女性を抱えるみたいなお約束があるけど、この状況では逆だなぁとか思っていたが。
その上位互換な状態になり少し戦慄してしまった。
そう思ってると同時にテクルの息がどんどん荒くなっていく。
「・・・・はぁ、はぁ。 流石に、この、重、量は・・・キツゥい!!」
テクルがかなり疲れてきている。
そりゃそうだ、さっきまで謎蛇の毒を躱すために動き回ってたし、前述の通り俺たちの重さには金の重さも加わってるのだ。
その上触手が金化して使えないから片腕で抱えてるんだぞ?
むしろそれでまだ喋れるほどの余裕が少しある方が驚きだ、というかドン引きだ。
テクルの怪力って触手の部分限定の魔人能力かと思ってたけど・・・・もしかして素の身体能力なのかもしれないと思った俺は更に戦慄した。
・・・・・なんて事を考えているが、少しまずくなってきた。
さっきまで疲れながらも凄く申し訳なさそうなラスイと並走し、謎蛇をどんどん引き離してきたテクルだったのだが。
・・・・・急に謎蛇の這いずるスピードが速くなってきたのだ。
それでも尚、謎蛇と俺達の距離はまだ余裕がある。
化け物魚のような時間稼ぎしなければ一瞬で追いつかれてしまうような速度ではないのだ。
そんな簡単に俺達まで辿り着けるわけない。
・・・・そう思ってた時期が俺にもありました。
『ダレ、ガ、だ、が、だ、ケ、てテて!!』
謎蛇の声が更に近付いてくる。
・・・・そう、ついさっきまで彼我には絶対に追いつけない、追いつかれない速度差があったのに、近づいてきてるのだ。
「な、ん、で、は、や、く、なって、んだよ!!」
テクルが怒って叫ぶのも無理はない。
何せ謎蛇は更に速くなり、遠目から見ても俺達が速度で負けてるのが分かる程俊敏になってるからだ。
何であの上半身のみの満身創痍でどんどん速くなるんだよ。
まるで1段階ずつ自転車のギアを上げてるかのような・・・・・
あ。
俺は今さっき、作戦で使用した〈鈍化〉の存在を思い出した。
デバフである鈍化は例外を除き時間経過で解除される。
そして蛇には5段階の〈鈍化〉がかけてあったのだ。
つまり蛇はどんどんギアを上げてるのでなく。
〈鈍化〉で下げられたギアを時間経過で解除されるデバフと共に、本来の速度まで戻っていくという事。
そして謎蛇の速度が急激に上昇したのは2回・・・・・
「テクル! あいつ多分まだ3段階ぐらい速くなる!」
「ふ、ざ、け、ん、なぁっ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます