第63話 発言は脱線を修正する
「や、やっぱりもう・・・・死んじゃっているのか? あとこれ返す」
3人で話したり蛇と魚の共通点を考えたりしていると、その間に着替えたと思われる透明化が解除されたテクルがインビジブル・ハットを俺に返却した。
「死んでるかどうかは今から確認する。 ・・・・待てよ、生命確認ってどうすれば出来るんだ?」
俺はそんな知識持っていなかった。
よって俺以外の3人に生命確認の方法を聞いてみた。
「呼吸の確認、とかでしょうか?」
「えっと、あれっすよ。 胸の中から聞こえるドクドクって音があるか聞くとか」
「あぁ、心臓の音の事ね」
「脈の確認も有効なんじゃないか? でも脈ってどう見るんだ?」
「魔物の知識はあるのに、他の知識は割と抜けてるんすね」
「逆に俺は魔物に知識が偏っちまったから、他知識が抜けてるのかもしれん」
「わ、私の生命を感知するレーダー・・・・〈触角探索〉が使えていたら、簡単に分かったのに・・・・すいません」
「いやまぁ、それは仕方ない」
「あとレーダーといえば、あの蛇に近づく程レーダーを妨害するノイズが激しくなっていた気がします・・・・ もしかしたらダンジョン内だからとかではなくて、あの蛇の存在により引き起こされてる何らかのせいで、触角探索に不具合が発生しているのかもしれません。 つ、使えない言い訳に聞こえるかもですけど・・・・」
「全然言い訳じゃないっすね。 普通にただの情報交換っす」
・・・・いつの間にか話が少しずつ脱線しているのに気付かないまま俺達は会話を続けていた。
「・・・・・・ろよ」
「ん? 今何て言ったんだクロイ?」
「え? 俺? 特に何も言ってないぞ?」
「・・・・・認しろよ」
「「「んん?」」」
突然聞こえてきた誰か分からない声に混乱する俺達、辺りを見渡す。
するとすぐに見つかった。
・・・・・その声の主は、すぐそこに横たわっていた。
「ぺちゃくちゃ喋ってねぇでよぉ・・・・まずとりあえず実際に触るとかして確認しろよ」
「「「い、い、生きてるぅ!!!」」」
それは半身が金と化してしまっている・・・・さっきまでほぼ死んでるかと思われていた、先生と思わしき人だった。
俺達が喋ってる間に目覚め、途中から本題を脱線していた話し合いにしびれを切らしたようだ。
「勝手に殺すんじゃねぇ・・・・いやまぁ、実際死にそうではあるがな・・・」
生きていたのも驚きだったが、まさか僅かながらも喋れる程の体力が残ってる状態だとは思っていなかった。
しかし喋れてこそいるが、その声は結構枯れていた。
「・・・・のど飴食うか?」
「え? ・・・・じゃあ、貰うわ。 手が疲れで全然動かせねぇから、食わせてくれ」
「ほい」
「・・・・・・甘すぎるな。 だが、今のおれにとっては最高に染み渡る至福の味だ」
「そいつはよかった」
「なんか一瞬で仲良くなってないすか?」
「あ、あの! その、聞きたいのですが・・・・貴方様は孤児院の先生をやっていたりしませんか?」
「あ? ・・・何でそれを知ってるんだ?」
「あ、やっぱり先生なんだな。 私達は、その孤児院の子達からアナタの救助を依頼されてて・・・・」
「・・・何だと? おい待て、おれがこのダンジョンに来てから何日過ぎているんだ?」
「子達の話曰く既に5日経ってるらしいっす」
「何だとぉ!? は、早く持ち帰らなければ!」
「な、何をですか?」
「
「一回落ち着け。 ・・・何か深い理由がありそうだな。 気持ちをリセットする意味でも、なんでアンタがこのダンジョンにきた理由を教えてくれよ」
「・・・・・わりぃ、取り乱したな。 そうだな・・・・この体じゃ自力では動けないし、教えてやるよ。 俺がここに来た理由とか。 ・・・・・あの蛇について分かったこととかをよ」
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