第62話 蛇は魚を連想させる
謎蛇はゆっくりと口を開けて、俺に狙いを定めていたのだが・・・急に別の方向を向き攻撃を中断した。
近くの俺を放置してまで優先して狙う対象を見つけたのか?
謎蛇のヘイトは、最初はいきなり接近したテクル、今さっきは足踏みによる振動を出しまくった俺に向いていた。
では謎蛇のヘイトの次の対象は・・・・?
謎蛇の口の先には。
ラスイにタックルされた時も、助けた先生らしき人をがっしり掴んで離さなかったテクルに再度向くわけでもなく。
鈍化した隙に謎蛇の真ん前からテクルを連れて逃げたラスイに向くわけでもなく。
俺の後方で・・・銃が効かなかった後にまた〈クラック・ブランク〉を開けていたシクスに向いているわけでもない。
謎蛇の口は、俺達の誰でもなく空中に向いていた。
蛇が注目している空中にある物はーーーーーー
「皆さん、今のうちにに逃げるっす! 僕が投げた“アレ”に蛇の注意が向いているうちに!」
シクスは拳銃が効かない事を悟った直後、〈クラック・ブランク〉から新たな物を取り出して思い切りぶん投げていたようだ。
シクスに投擲され、現在勢いを失い地面に向けて落下し始めている“アレ”
その謎蛇が視線を向けている“アレ”は・・・・・さっきテクルが自らぶち抜いた、半分が金と化してしまった触手。
シクスの奴、いつの間に回収してたのか!
ていうか半分は重い金になってるのにぶん投げれるとかシクスも相当力持ちだな!
蛇は遅くなっている体だが、それでもハッキリと落下位置を捉え、触手落下点で開いた口を上に向け待機し丸呑みにした。
金を好んで食うーーーその特徴はまたもやスフィンクスネークと重なった。
しかし今はそんな事どうでもいい・・・・・とりあえず、逃げる!!
あの謎蛇は地面に尾が固定されていて移動が出来ない、一定距離離れりゃ安全だ。
トラブルは発生こそしたが目的通り、俺達は奥にいる人を救助してさっきまで話し合っていたダンジョン内のゲート付近まで撤退するのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ、危なかったですね」
「き、気付かれちゃってスマン・・・・・」
「大丈夫、気付かれたら一度撤退して作戦を立て直すつもりだったんだ。 でもお前は気付かれこそしたけど、一回でちゃんと救出した・・・・割と無茶な作戦だったが良くやってくれたよ」
俺はテクルに励ましと賞賛の意図で背中を叩こうとした・・・・そしたら不可視触手にガシッと掴まれ叩く直前で止められた。
「お゛い・・・・・どこ触ろうとしてるんだ」
心なしか、テクルの声にドスが入っている。
「いや、励ますために背中を・・・・」
「そ、そこは背中じゃない!! 背中はお前が叩こうとした所の逆側だ!」
「あ、ごめん。 わざとじゃないんだ、殺さないでくれ」
危ねぇ、俺今テクルの胸の部分ぶっ叩くところだったのか・・・・
セクハラと暴行を両立させてしまうとこだった。
「と、ところで・・・・このダンジョンで気絶してたし、やっぱりこの人が先生で確定なのでしょうか?」
「うーーーん。 多分救助対象の先生だと思うっすけど、体の半分以上が金になってるじゃないすか・・・・コレ死んでないすか?」
「テクルの触手に打ち込まれた金化させる液と同じのくらったんだろうな・・・」
あの金化液・・・・スフィンクスネークという魔物はそんなもの持っていない。
実際に会って改めて実感したが、謎蛇はスフィンクスネークと見た目や一部の特徴が酷似している。
なので先程まで俺はスフィンクスネークがいきなり突然変異でもしたのかなと考えていた。
突然変異ならスフィンクスネークと似ている部分もありつつ、同時に全然違う特徴も持っていて不思議ではないからな。
しかしもう一度考え直すとそれはおかしい気がする。
あの蛇は周囲の金の削れ具合やぶん投げた金の触手にすぐ反応したことから、スフィンクスネーク同様金が大好物なのだろう。
しかし金以外は食べれない・・・・正確に言えば好みに合わないだが、そんな奴が食べれない物だろうが注入さえすれば金にする事が出来る液が突然変異でいきなり使えるようになった?
突然変異にしては実に都合が良すぎる能力・・・・これじゃまるで進化だ。
それにスフィンクスネークが普段いるはずのダンジョン最奥でなく道の途中で尾が地に固定されて動けない、これも変だ。
滅多に最奥から出てこないからこそ、このダンジョンへ入る時のギルドからの許可が緩いんだから。
そいつがたまたま偶然出てきた道の途中のド真ん中で突然変異し、その変異過程で尾と地面が繋がってしまったというのは・・・・いくら何でも無理がある。
テクルの言っていた通りあの蛇は、ギルドの鑑定でも分からなかった化け物魚と何か関係があるのか?
謎蛇と化け物魚・・・・こいつらはどっちとも、人の体に酷似した部位を持っている。
・・・・・何か、やばい気がする。
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