第61話 接近は撤退を余儀なくする
丁度今さっきテクルが蛇の下へと向かっていった。
遠目から帽子を目印にして見た感じ、テクルが割と近付いていても謎蛇は気付いてはいなさそうだ。
お、テクルが立ち止まった、てことは見えないけど触手を伸ばしているのか。
今謎蛇の向こう側にいるらしい人を掴もうとしているのだろう。
・・・・あれ?
テクルが人を持ち上げず、むしろ帽子は蛇へどんどん近づいていく。
ゆっくりだが、かなり近づいていってるように見えるぞ。
「ク、クロイさん。 テクルちゃん、あんなに近づいちゃって平気でしょうか?」
「いや、唯一透明化してない〔インビジブル・ハット〕そのものは、謎蛇の目がめっちゃ濃いピンク色を認識出来ない上小さいからまだ気付かれてないだけで・・・・あんなに接近したら色とか大きさ関係なく普通に気付かれる可能性大だ!」
「え! それはマズイじゃないすか!」
慌てる俺たちを他所に更に近づく帽子。
・・・・あ、やっと人を回収したようだ。
謎蛇の頭上を通り越して人が持ち上げられている・・・・触手が不可視なせいで人が念力で浮いてるみたいだ。
・・・・あ、ヤバい。
先生が透明な帽子の主、テクルの・・・・心なしか謎蛇がテクルの存在に気づいたような素振りをしている!
俺はこのままだとマズイと思い、急いで隠れている金塊から飛び出していく。
だが既に俺より早くシクスとラスイが、テクルを助けに飛び出ていた。
出遅れながらも走りつつ前に目を向けると、蛇がしっかりとテクルの方を向いている。
テクルは足がすくんでいるのか動かない。
化け物魚に拳を振り上げられた時もそうだったが、テクルは本当にヤバい状況になると動けなくなってしまうようだ。
蛇が口を開ける、その口内にもテクルから聞いた通りの、夥しい数の悍ましい人の口が後付けされているかのように存在している。
その口は全て開き、不気味な鳴き声を発する。
『だ、ダ、ダ、誰カ助けテててテててテて!、てテてぇぇぇェぇぇェぇェ!、!』
そして大量の金色の液体をテクルに向けて真っ直ぐ発射するがーーーーー
「テクルちゃぁぁぁぁぁん!!」
「ぐはっ!?」
ラスイがテクルに走った状態のまま勢いよくタックルして一緒に倒れ込んだことで、金の液体は全て外れた。
そしてシクスは走りながらも〈クラック・ブランク〉で魔力さえ込めれば誰でも発砲出来る[魔拳銃]を取り出して、謎蛇に銃口を向けて構えていた。
お前拳銃持ち歩いてるのかという俺の感想は一回置いておき、シクスは蛇に銃弾を連続で五発放った。
しかし全て金色の鱗で防がれ、呆気なく鱗の硬さに負けた銃弾五発全てがひしゃげて地に落ちた。
当然謎蛇は銃弾を意にも介さず、テクルに再度口を向けて・・・・
だん、だぁん、だぁぁん!!
俺は謎蛇が再び口を開く前に、思いっきり金で出来ている地面に向かって足を上げ、思いっきり踏みつけまくることによって大きな音を鳴らした。
蛇は空気を伝ってくる音はほぼ聞こえないが、地面の振動に非常に敏感だ。
俺が思いっきり地面を踏み鳴らし振動を伝えた事で、蛇の注意はテクルから俺に向いた。
それによって注意と同時に口も当然俺の方を向くのだが。
謎蛇の顔が俺を向いた瞬間には、デカい体に黒い球が命中し弾けていた。
俺は謎蛇に接近した時点で既にデバフ球〈鈍化〉を発射しておいた。
さっきまで滑らかだった動きが急激に鈍くなり、その間にラスイがテクルを引っ張って謎蛇から離れる。
俺も撤退しようとするが・・・謎蛇は鈍くなっている状態のままだが未だ動き続けていた。
謎蛇はゆっくりと口を開けて、背中を向けようとしている俺達に液を放つ。
危っね!!
俺個人だけを狙ってなかったのか、液体が雑に広範囲にばら撒くように発射してきたおかげで運良く命中しなかった。
蛇は一度口を閉じて、再び開ける。
液の発射速度が鈍くなっても、そもそもこの液放ち攻撃は元よりあまり時間を要さないようなので鈍化の影響が薄い。
俺はそこまで足が早くない、撤退するまでに何回も広範囲に液を放たれたら今度こそ当たってしまう!
焦っている間にも謎蛇の口内の口が開き、また液体が飛んでくる。
と思っていたのだが。
蛇は、攻撃をやめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます