第60話 確保せよ、あそこの先生を
私は今、蛇から20mぐらい離れた所に立っている。
・・・・現在全裸だがそれについては考えない、考えたら恥死する。
他の皆は更にもう少し遠くに離れている岩のような金塊の後ろに隠れている。
このダンジョンは所々に大小様々な金の一塊が地面や天井から隆起している。
皆が上手い具合に隠れられる場所に丁度良い大きさの金塊があって良かったのだが・・・・あの謎蛇の周りには遮蔽物になってくれそうな金塊はない。
むしろ逆にダンジョンを形成する金魔石の地面、天井、側面が削れまくって凹みまくっている。
クロイが言っていたスフィンクスネークは金魔石を食うらしいが、謎蛇も同じく周囲の金魔石を食っているようだ。
そして肝心の蛇の頭とダンジョンの壁にある人一人も通れなさそうな僅かな隙間から、ちらっと見える誰かの後頭部・・・・死んでいるかのように全く動かない。
本当に死んでないといいけど。
色々考えつつ接近しているが、現在謎蛇は全く動く素ぶりを見せない、インビジブル・ハットによる透明化は有効のようだ。
私は更に歩みを進めて、前回のエンカウント時に金になる液を飛ばされた位置まで近づく。
・・・・・無反応、蛇は微動だにしない。
ここまで接近して気付かないということは、ピット器官とやらもなさそうだ。
それに唯一見えっぱなしのインビジブル・ハットも、目の悪さで小さくて認識出来てないという事だろう。
さて、最低限の安全は確認できた。
だが安全を確認できてもちんたらする理由にはならない、少し急ぎつつも慎重に先生確保を開始する。
まず私の触手を伸ばし、蛇の頭上を通り越させる。
そして、見えはしないが後頭部の位置から推察できる先生の体のある位置まで伸ばして掴もうと試みる。
大丈夫かな、すでに体と頭が離れていて掴もうとしてもそこにはないとかいう残酷なオチではないよな?
ここに来て不安に駆られつつも、クロイの忠告通り決して蛇にぶつからないように体があると思わしき所まで触手を伸びきると・・・・よかった、体はちゃんとある。
そのまま到達した体に触手を巻きつけ持ち上げようとする。
持ち上げようと・・・・・・
持ち、上げようと・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・?
・・・・・ん?
あれ、持ち上がらないぞ!?
なんか、やけに重い!!
普通の人の重さじゃない!!
体は見えないが、一体何をすればこんな重くなれるんだ?
触手を巻きつけてみた感じ、異常な肥満体型ではなさそうだし、多少の装飾品でこれほどになるとは思えんし・・・・大量に重りでもつけてんのかと思えるほどの重量だ。
一応普段通りの短めな長さの触手なら持てるだろうが、私の触手は伸びるほど細くなり力も弱くなる。
それでも人1人ぐらいの重さなら楽勝で持ち上げれる力はあるはずだが・・・・現在の触手の長さではこの異様に重い人は持ち上げれない。
持ち上げるためには触手の長さを短くする必要がある。
だがそれはつまり更に謎蛇に近づかなければならない。
これ以上近づけばたとえ透明でも気配を感じて気付かれるかもしれない、が。
ここまで来て、退く気はない。
ゆっくりと、確実に、更に接近する。
残り15m・・・進みながら近づく事で不要になった長さ分の触手を元に戻すが、まだ持ち上げれない。
・・・・・・・蛇はこれといった反応を示さない、まだ気づかれてない。
残り10m・・・ギリギリ持ち上げれそうな感じになってくるが、もう少し余裕を持たないと今持ち上げても落としてしまいそうだ。
ここからは更にじっくりゆっくり歩む。
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・蛇は動かない。
残り8m・・・そろそろ良さそうだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・蛇、依然動かず。
・・・・・・・
残りぃ、6m!
この距離なら、余裕を持って持ち上げられる!
・・・・ふんっ!!!
思い切り持ち上げるとその先生と思わしき人の全身が見えるようになる。
紫色の長めな髪をした長身の男で、服は全体的に穴が空いたりしておりボロボロだ。
目はやはりというか瞑っているので、気絶か死亡かはぱっと見では分からない。
しかしそれら衣服や顔まど諸々の特徴より目につくところがある。
あぁ・・・・やけに重かったはずだ。
だって金は、凄く重いのだから。
その人は、足のつま先から腹部・・・・・半身以上が、金と化していた。
そして。
蛇が、こちらを見ている。
流石に、近づきすぎたな。
『だ、ダ、ダ、誰カ助けテててテててテて!、てテてぇぇぇェぇぇェぇェ!、!』
蛇の口が開き、中から人の声のような鳴き声を発する。
口内に存在する大量の開いた口からは、再度あの金色の液がーーーーー
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