第59話 金塊は身を隠せる
「・・・・・・・・もう、振り返ってもいいぞ。 ・・・・・この状態で、蛇の向こうの先生を掴んで助けりゃいいいんだな?」
後ろ向きのまま少し待っているとテクルが振り向く許可を出した。
許可されたので遠慮なく振り返ると、テクルの声が虚空から聞こえてきている。
声が出て来ている所から少し上に目を向ければ、ピンクの帽子が浮いていた。
「成程。 そこに一糸纏わぬテクルがいるんだな」
「やめろ、改めて言うな! お前らは見えてないし特に何とも思ってないかもしれんが・・・・私からしたらさぁ!! 外で全裸なんだぞ!? 透明になってると分かっていても、こっちからしたらそんなの関係なくクソ恥ずかしいんだからな!!」
確認をしたらテクルに騒がれた・・・・まぁそりゃそうだ、テクルは別に露出狂ではない。
羞恥心で悶え死にそうになるだろう。
「ん、そういえば脱いだ服はどこっすか? 僕のクラック・ブランクで収納しておけるっすよ」
「あ、服なら私が預かってます。 そ、その・・・・テクルちゃん曰く、信用してないわけではないが下着を含めた服を男に預けるのは流石にって事で、私が持ってます」
ラスイがテクルの服を丸めて持っている、ちゃんと下着は俺服で包み込んで俺達から見えない様にしている。
「そっすか。 残念っす」
「男二人の挙動が怖いよ。 やけに脱がせようとしたり、着替え見ようとしたり、服受け取ろうとしたり・・・・・」
服を預からせてもらえなかった事を本気で残念がっている様子を見てテクルが割とガチで怯えたような声を出す。
流石にからかいすぎたかもしれない・・・・訴えられて法廷で会う前にやめておこう。
「よし、じゃあ蛇んとこまで行くぞ! テクル、早く服を着たいならとっとと終わらせるんだ」
「分かってる。 分かってるけど・・・・・うぅ。 素っ裸で歩くのはキツすぎるよぉ・・・・・」
この後、基本的に一本道だから蛇の位置まで迷うことはなかった。
だが、テクルの歩きが非常に慎重でゆっくりだった為、到着が遅くなったのだった。
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「えぇ・・・・ 本当に何アイツ」
俺達は今、床から迫り上がっている岩の様なデカい金塊の後ろに隠れている。
ここは丁度よくこちらからは蛇を視認出来て、向こうからは体を伸ばしても距離的に覗き込めない位置だ。
その金塊から少し顔を出して覗き、蛇を見るが・・・・確かに事前情報で知っていたスフィンクスネークの姿に似てはいるが、明確に違う。
所々にスフィンクスネークと類似する特徴は見られる・・・・だがしかし、細かいが決定的に違う部分がいくつもあるのだ。
まず地面と尾が繋がっているのが意味不明だ。
繋がってるということは一定距離以上は動けないということだが・・・・このダンジョンにこんな魔物がいたという話は聞いたことがない。
最奥のスフィンクスネークの情報があって、途中の道で固定されているこの蛇の情報が無いのは、子供でもおかしいと分かる。
右目と左目もおかしい。
どちらもスイカぐらいのサイズをしているビッグアイだが、若干右目の方が大きくなっている様に見える。
その上、左目は黄色い丸の真ん中に黒い線が入っているという正に蛇の目といった見た目だが・・・・大きめな方の右目は金一色に輝いていて、まるで宝石だ。
大きさも色も左右で違うオッドアイ、これも左右対称の目を持つスフィンクスネークと違う。
そもそもこの謎蛇を実際に見ても、俺の魔物知識の中に引っかかる奴は1匹もいない。
あの化け物魚以来だ、魔物かも不明なの不気味なやつは。
・・・・・・・
「じゃ、じゃあ行ってくるぞ」
「頑張ってっす」
「バ、バレたらすぐ逃げるんだよ、テクルちゃん!」
「あ、当然だが蛇に触手当たらないように注意しろよ。 後、地面の小さな振動でバレるかもしれん。 慎重に歩くんだ」
色々考えていたら、テクルが隠れ場所の金塊の後ろから出ていく。
俺達の応援、心配、助言にコクリと頷く事で返事をし、蛇の下へとゆっくり向かっていく。
上手く回収できる事を祈るぞ。
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