第48話 先行はゲートを跨ぐ
「着いたな」
準備を終えた俺は、ダンジョンに向かった。
割と簡単にいける近場のダンジョンなのに現地集合じゃない理由は、ダンジョンに行く場合、基本的にギルドに許可が必要だからだ。
別に許可がなくても入れはするけど、ギルドカードがダンジョンゲートを通る際の空間の変異を記録する為、許可がない状態で入ったらすぐにバレる。
不正ダンジョン侵入は、ダンジョンによって軽い罪から、死刑レベルの重罪になったりする。
つまり許可はダンジョンに必須・・・・ものによっては数日間複雑な書類とかを大量に確認などしてやっと許可が入る面倒くさいダンジョンもあるらしいが、贋金まみれ洞窟は『行っていい?』『いいよ!』ぐらいの軽い感覚で許可が入る。
本当にこんなノリで許可が通った訳でないが、イメージはこんな感じだ。
何故こんな緩いかというと、危険度が低い上にダンジョンの“ズレ”も危険自体がないものの為、わざわざ面倒くさい手続きを必要とされないから。
そんな軽すぎる手続きを経て入門許可を得て出発した俺達。
しばらく歩くと、贋金まみれ洞窟のゲートの前に辿り着いた。
自然の中で不自然にポツンと単体で置かれているが、見方を変えれば初めからそこにあるかのように自然に佇むダンジョンに繋がる扉・・・・これが、ゲート。
ゲートは一色で、その色はダンジョンの性質が色濃く表れるのだが・・・贋金まみれ洞穴のゲートは金色で、キラキラとしている。
このゲートから外に持ち出した瞬間価値を失うのが斑状の金魔石・・・・通ってもそのままの状態で価値を失わない等粒状の金魔石を手に入れられればいいなぁ。
「この中に先生という方がいるのですね。 ・・・・既に5日経っておりますが、大丈夫でしょうか」
「死んでないといいな。子供達があんな必死に助けを求めるぐらいだし、きっといい人なんだろなぁ。 そんな人が死ぬのは・・・・・悲しい」
「・・・そうっすね。 いい人が死ぬのは悲しいっすからね」
皆がこんなに先生とやらの命の話をしている間、俺は1人金のことばかり考えている・・・・俺ってこういう人!!
「じゃあ私が先に入ります・・・! よく考えればダンジョンに入るの私、初めてです」
「当然ラスイと同じく私も初めてだ」
「僕もっす!」
「俺の強さで1人で行くのは自殺行為だから、俺も行ったことない!」
俺達4人は互いに目を合わせ汗を流し始めた。
俺含め、多分皆、『経験者皆無・・・・・大丈夫か?』と考えてる。
「「「「・・・・・・・・・・」」」」
1人もダンジョン経験が無い・・・その事実に急速に不安になる俺達だが、ここで帰る訳にはいかない!
「じゃ、じゃあ入りますね!」
「待つっす。 僕が先に入るっすよ、ラスイさん1人で先行するのも危ないっす」
「え、そんな気にせずとも・・・」
「お先に失礼っす!」
先に入りたかったのか本当にラスイの身を案じたのか、そう言ってシクスはラスイを軽く押しのけゲートに一足先に入る。
度胸あるなぁ、初めてのダンジョンなのに。
「シクスって良い奴だよな。 魔人差別とかも全然ないし・・・この前なんて『この触手ってどんなこと出来るんすか?』って全然怖がらず興味深々といった感じで聞いてくるぐらいだし」
「凄い優しいもんね。 私も触角のこと聞かれたよ。 普通忌避される異形と呼ばれている魔人の特徴の部分を積極的に聞いてくるのは・・・・むず痒いけどなんか嬉しいな」
シクスのパーティ内カーストが急上昇している・・・・このままでは現状何もしてない俺が『お前みたいな無能は追放だ!』って感じで追い出されてしまうかもしれない。
皆が初めてのダンジョンに緊張する中、俺はパーティを追放されるかもしれないと危惧して冷や汗が流れるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます