第45話 ノックは客を苛立たせる

 ドンドンドン!


 エン酒場で飯を食いながらシクスの不可解な点を考えていると・・・・酒場の扉がいきなり強くノックされる。


 「あぁ? 何だぁ? 誰か知らんがノックなんてせずに入ってこいよ」


 酒場の扉付近の席に座っている客がそのノックを聞き怪訝そうに呟いた。


 ドンドンドン!


 「だからノックなんてせず普通に入ってこいや!」


 扉付近の客は煩くて不機嫌になっている。


 ドンドンドン!!


 「だっぁぁぁぁぁ! うるせぇぇ!! 誰だぁ!!」


 ずっとドアを叩き続けてくる誰かに堪忍袋の尾が切れた扉付近の客が荒々しくドアを開ける。

 そこに居たのは・・・・


 「助けてください!」


 「・・・・あぁ?」


 3人の子供だった。

 全員服も体も少し汚れており、更に痩せていて健康状態があまり良くなさそうに見える。

 ・・・・あぁ、身長が足りなくてドアノブに手が届かなかったからずっとノックしてたのか。


 「何だテメェらぁ? ここは酒場だぁ。 ガキが来るような場所じゃねぇぞ?」


 扉を開けた客が急に助けを求めてきた子供達を訝しむ。

 すると一番身長の高い・・・・といっても90cmぐらいだが、男の子が一歩前に出てきて。


 「お願いします! 先生を・・・・[先生]を助けてください!」


 いきなり頭を下げてこた。

 後ろの女の子と男の子も続けて頭を下げる。

 年齢の割に敬語をしっかりと使えてる・・・・・偉くて賢い!


 「あぁ? 先生ぃ? よく分からんが、お願い事ならギルドにしなぁ。 クエストとして冒険者が助けてくれるはずだぁ」


 キレやすい上に柄の悪そうな冒険者だが、ちゃんとアドバイスしてるあたり悪い人じゃないもかもしれない。


 「それじゃ・・・・それじゃ駄目なんです! 今すぐにじゃないと!」


 それでも子供は駄目と言う、一体どういうことだ?


 「なんですか、話に花を咲かせて盛り上がってるわけでも、お通夜みたいに静かになっているわけでもないこの絶妙なザワザワは・・・・・え、子供?」


 奥で調理していた酒場のお姉さんが異変に気づきこちらにやってきた。


 「あ、貴方がこの酒場の1番偉い人ですか? お願いします!」


 「・・・・なんの用かは分かりませんが、とりあえず奥に来てください。 そこで話を聞きましょう」


 「!! ・・・・あ、ありがとうございます!」


 お姉さんは追い返すなどはせずに、子供達を連れて酒場の奥に引っ込んで行った。

 いきなりの事すぎて呆気にとられていた俺達。

 というか俺達以外の客も皆呆気にとられている。


 「もぐもぐ・・・・メシウマっす」


 ・・・・シクスだけは唐揚げを頬張って幸せそうにしていたので例外とするが。


 「あ、あーーーーそういや、用事あるんだったーーーー 早く帰らねぇとーーーー」


 さっき扉を開けた客がそう言うと、まだ残っていた飯をかきこみ早足で帰って行った。

 まるでここから逃げる様だ。


 ・・・・・・なんでだ?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 30分後。


 「お腹いっぱいっす。 流石にこれ以上は無理っす」


 シクスは唐揚げを数え切れないほど食べて満足したようだ。


 ちなみに途中からお腹いっぱいになった俺、テクル、ラスイはシクスの幸せそうな食いっぷりをただ眺めてニコニコしているだけになった。

 

 あれ、気づけばいつのまにか他のお客も全員帰っている。

 残りの客は俺達だけになっているな。


 「・・・・おや、ほとんど皆さん帰ってしまわれたのですか。 残っているのは貴方達だけ、ですね」


 子供を連れて奥からお姉さんが戻ってきて、俺達の前に立ちこう言葉を紡ぐ。


 「貴方達に依頼をさせて貰ってよろしいでしょうか」


 お姉さんは俺達にギルドを通した『クエスト』としてではなく・・・・個人的な『依頼』の話しをしようとしているようだ。


「「「「・・・・・?」」」」


 これまた突拍子が無い話に俺達は顔を見合わせて・・・とにかく話を聞くことにしたのだった。

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