第44話 偏りは違和感を感じ取る
「美味美味のウマウマっす!」
現在ギルドの隣にある【エン酒場】にパーティ4人で来ている。
最近は情報通なお姉さんがいるから情報屋の感覚で入っているが、今回は本来ので用途である飯を食べに来ているのだ。
・・・・“本来”と言ったものの、酒場にも関わらず飯だけで俺達誰も酒を飲んでいないがな。
シクスは先程から鶏系魔物である[チキチキン]の唐揚げというエン酒場でのかなりポピュラーな食べ物をめちゃくちゃ幸せそうに食べている。
シクスが仲間になってから1月程経ったが・・・とりあえずシクスの存在は地味に助かる。
ツチタケノコのような重いものを複数持つのはクラック・ブランクが非常に便利なのだが、逆に言えばめっちゃ重いのを複数持つクエスト以外はテクルが簡単に触手の力で持ててしまうので必須と言えるほどでは無い。
だが、居てくれる方が良いのは間違いない
・・・・少なくとも俺よりは確実に役に立っている!
そんな俺より有能なシクスだが・・・・最近はクエストを終える度に俺の事を鋭い視線で睨んでくる。
その理由は良く分かっている、てか自分で気づかなかったとしてもシクスがクエスト終える度に言ってくる。
『クロイさんは何の役割なんすか?』
『何もしないでいいんすか? クロイさん』
『報酬だけ貰うのはおこがましいんじゃないすか? クロイさん』
『クロイ、ただ着いてくるだけで働かずに食う飯は上手いっすか?』
日に日に俺に対する態度が酷くなり、ついに昨日呼び捨てにされてしまった。
・・・でも、確かに俺ただクエストに着いていっているだけなんだよなぁ。
シクスの意見が至極真っ当で御尤もすぎて何も言い返せなねぇや!
ラスイは元よりお人好しで、テクルは化け物魚やクズルゴの件に恩のようなものを感じているから、俺が何もしなくても文句を言われていないだけだろう。
つまり今の俺は少しアクティブなだけのヒモでしかないのだ。
「感動っす! 絶品っす! デリシャっす!」
それにしてもシクス、本当に美味そうに食べてんなぁ。
俺もさっきからチャーハン食べているのに、見ているだけで更にお腹が空きそうだ。
「シクスさん、これもどうぞ」
「そんなに好きなら、私の分も食っていいぞ!」
そんな調理した人が見たら満面の笑みを浮かべそうな食べっぷりを見て、テクルとラスイが自分達の唐揚げまで渡している。
確かに思わず自分のも渡したくなる幸福そうな食事風景だしな。
「本当っすか! ・・・・それじゃあ、ありがたく頂くっす!」
よし、それなら俺も。
「シクス、俺の分も食」
「クロイのは別にいらないっす。 なんか嫌っす」
・・・・・・・・・・
「このサラダと唐揚げも合うっす! サラダのフレッシュな水々しさと唐揚げの肉汁がベストマッチっす! この赤いソースと唐揚げも合うっす! ソースの甘酸っぱさがアクセントになり食欲を促進させるっす!」
「シクスさん、そのソースの名前はケチャップと言うんですよ」
「ケチャップ知らないなんて珍しいな!」
「あ、頭があまり良くないもんで・・・」
・・・・・まただ。
テクルと俺が出会いたての頃の数日間に感じたもの・・・・所謂、違和感。
それをシクスに再び感じた。
あの時はテクルとラスイの少し歪な距離感に対して感じたものだったが・・・今回はシクス本人に感じる。
その違和感の1つ、シクスは常識のような知識の1部を知らない事がある。
先程のケチャップ含め、一般的な物の名称をよく分かっていなかったり文字が一部だけ読めなかったり・・・・なんなら[梨]を見て『なんでまだ成長しきって赤くなっていないリンゴを売っているんすか?』と聞いてきた時はマジかよと思った。
でも普通に植物の情報やクエストの相場をある程度理解してたり、知識が変に偏っている・・・・イメージとしてはいきなり庶民の生活を体験しているお嬢様だ。
まぁシクスは男なのでお嬢様はおかしいかもだが、整った中性的な顔なのでイメージが簡単である。
他にも独自魔法という、自分で作る必要があり高度かつ様々な知識が必要な魔法を使える割には、他の魔法がからっきしらしい。
デバフしか使えない俺は親近感を少し感じたが・・・・『練習すれば多分他の魔法も使えるっす』と聞いて才能の格差を感じた。
・・・・“練習すれば”、ねぇ。
他の魔法が一切使えない状態で独自魔法を作る。
それは運動に例えると、ルールだけは知っているけど今まで一切実際にやった事ないスポーツでいきなりプロ級の活躍をするようなものだ。
・・・・・・
・・・・・何だかよく分からないが、怪しいなぁ。
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