第35話 口は災いを呼ぶ

 「さて、質問はしたし・・・・そろそろ復讐タイムと洒落こもうじゃないか」


 そんな俺の言葉をを聞いた瞬間、テクルが純粋な子供のように目をキラキラさせる。


 「やっとか!! どうするんだ? 私の触手ならこのまま絞殺、圧殺とか出来るぞ!!」


 言っていることはヤバいが。


 俺の言葉に更に追い討ちのテクルの発言で、クズルゴは顔を真っ青通り越して真っ白にして後悔を呟いていた。


 「・・・・詐欺なんてしなけりゃ良かった・・・ 」


 「あ、あの別に私は大丈夫です! だから、クズルゴさんを殺してしまうのは・・・」


 「ラスイは優しいな。 だがコレはもう私の復讐なんだ。 コイツは死なない程度に死なす」


 ラスイに対し柔和な笑みを浮かべているが、セリフがぶっ飛んでいるテクルを俺は止める。


 「死なすな。 さっきから言っているが、俺は暴力的な復讐をするつもりは無い」


 俺が即興で考えた・・・・インビジブル・ハットを使ったテクルの触手で念動力で防御するリーラズを剥がした後に、事前に掛けておいた弱体のデバフが本格的に発動させる為に追いかけ回しつつわざとギリギリ当てない攻撃で危機感を煽って疲労を溜めさせる、といった一連の行動はあくまで全て制約石に反応されない拘束の為だ。

 最初から暴力的に復讐するつもりならテクルにインビジブル・ハットを被させた後、わざわざ透明化した触手の攻撃は背中のリーラズとか言う水色ゴーストではなくクズルゴ本人を狙わせた。


 それにしても・・・・インビジブル・ハットは何かに役立ちそうと思ったものを持ち運ぶ癖で持ち込み、事前に掛けた弱体のデバフはクズルゴを採集祭で困らせようという考えでやっただけで・・・・物凄く上手い具合に噛み合って拘束出来たな。

 俺は運が良いタイプの人間かもしれない。


 「じゃあ、どうするんだよ? 殺さないなら拷問とか?」


 「ひえっ」


 「拷問なんて・・・あまり、良くないん・・・じゃないかなぁ」


 エグいことを平然と言うテクル、それに対して怯えるクズルゴ、卑屈が故にテクルを強く制止できずオドオドするラスイ。


 「いや拷問でも無い。 ・・・・なぁクズルゴ、そう言えばもう1つ質問したいことがある。 これに答えればテクルはお前を殴らないと約束させようじゃないか」


 「は? そんな約束しないが?」


 「話合わせろ!!」


 ・・・・その後テクルを5分程説得させ頷かせて、クズルゴに質問する。


 「なぁ、クズルゴよ。 お前のパーティにいた露出激しい服を着た女とブカブカ服の女ってさ。 もしかして・・・・その2体のゴーストが、その2人だったりしないか?」


 一番喋る上に一番煽ってくるクズルゴ1人に注目が言っていたが、クズルゴには仲間の女2人がいたはず。

 ラスイに詐欺する時も、採集祭の2日前でにエンカウントそれにした時もその2人は確実にいた。

 何なら、この採集祭は3人1組・・・・その2人が居なければばそもそもクズルゴが採集祭に参加出来ない。


 では何処にいるのか。

 クズルゴのピンチ中にもその2人は駆けつけて来なかった。

 ただその2人が薄情なだけかもだが、ゴースト2人にやけに人間らしい[ルベリー]と[リーラズ]なんて名前を付けていた。

 

 ゴースト2匹と2人が何らかの強い関係性があったりしないか、と思ったのだ。

 それにゴーストは人に化けるとも聞いた事があるし・・・・ゴースト×2=女×2の証拠は何もないが、怪しいのであたかも殆ど確信しているかの様に振る舞う。


 「・・・そうだよ、オマエ達が見たあの2人の真の姿はこのゴーストの姿だ。 屍霊術師であるオレが作った[憑依人形]という物を与えたんだ。 [憑依人形]は等身大の精巧で本物の人のような人形・・・・ それに特殊な手順を踏んで取り憑く事で人形が変質し本物の人体の様になり取り憑いたゴーストはその人形を使ってほぼ人間として活動出来る。 例え血の検査などをしても体も人に変質してるからゴーストとは分からない。 だから人として冒険者登録して貰うのだって簡単だ。 ちなみに制約石も憑依人形につけた後に取り憑き解除で人形から抜け出す事で取り外したんだよ。 だからコイツらはオマエらに攻撃しても大丈夫だったって訳だ」


 相も変わらず聞いてないことも喋るなぁ。


 だが、この自分語り大好きな性格も考慮に入れた計画なのだよ。


 ゴーストはたとえ完全に使役されていたとしても、危険な魔物である事に違いは無い。

 別に使役して一緒に戦うのは問題ない。

 ゴーストに限らず様々な魔物を使役してクエストをクリアする冒険者だって珍しくない。


 だが、憑依人形というのを与え人のフリをさせて、冒険者登録をしてギルドカードを発行されていたとしたら大問題だ。

 法律についてあまり詳しくはないが所謂、詐称と言うやつにあたる。

 そして、この採集祭の参加にはギルドカードが必要で3人1組でないと参加出来ない・・・・


 「お前はこの2人のゴーストを詐称して人としてギルドカードを発行して貰ってるな?」


 「・・・また質問か? 先程で終わりでは・・・ いや、答えないと死にそうだし答えるぞ。 そうだ、パーティを組んでいた方が色々便利だからな。 それに一定人数以上でないと受けれないクエストもあるしな。 だからゴーストのコイツらに憑依人形を与えて、人に擬態させて冒険者登録してパーティ組んでるんだよ」


 ペラペラベラベラ喋るクズルゴ。

 その口が、災いを呼んでいる事にも気付かず。


 ・・・・これで復讐の最後の点は打たれた。


 クズルゴが詐欺をした証拠は残っていない。

 故にその方面からでは復讐が出来ない。


 なら・・・別の罪の証拠を作ろうではないか。


 俺はさっきまでポケットに突っ込んでいた手を出し・・・・とある“石”を取り出す。


 「全て答えてくれてありがとう・・・・・ところで、コレ何だと思う?」

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