第19話 潜水艦?


天使軍の統率者は炎の矢のエネルギーが最高潮に高まるのを感じる。

「撃て!」

一喝。

その声と同時に矢を放射。

しかし、力が解き放たれる一瞬前、彼らの陣形のエネルギーバランスが崩れた。

その結果、狙いが僅かに外れる。

「なに!?」

何が起こったのか、天使軍の統率者は混乱し、理解できなかった。


炎の矢は急速に膨れ上がり、その猛烈な熱さが画面越しでも感じられる。

雷獣とイズナは予想を遥かに超える光景に、言葉すら発せずに圧倒されていた。

炎の矢はますます力を増し、その力が次第に蓄えられていく。

急に天使たちが形成していた陣形の中で、2体の天使が苦痛の表情を浮かべた。

陣形の力のバランスが狂い始め、炎の矢は雷獣たちの乗る艦船からほんのわずかに狙いが外れて向かってくる。


操縦席に座る男はまるでその瞬間を待っていたかのように、力強くレバーを自分に引き寄せる。

艦の後方から大きな振動と轟音が響き渡った。

「!?」

雷獣とイズナは何が起こっているのか、まるで理解できない。

後鬼は、轟音に負けないくらいの大声で男に向かって怒鳴りました。

「おい、何をやったんだい?何を考えているんだい?」

男は前を見つめながら、冷静に答える。

「対人用の即効性電磁波兵器を2体に集中的に照射しました。うまく効果が現れましたね!」

そして、男はそのまま静かに前を見続けにっこり笑った。

「捕まっていてくださいね。」


グエンは軍事施設から離れる輸送機の中にいた。

彼の部隊は、飛行機と船の中間のような乗り物に乗っている。

輸送機は、水上を高速で走る水中翼船だ。

翼と水面の間に空気のクッションができて、揚力を得る仕組みになっている。

海鳥が滑空するのと同じ原理だと聞く。

この乗り物は、水上を走るだけでなく、一気に高く跳ね上がることもできるように改良されている。

隠密行動にはぴったりの乗り物だったが、まだ完成度は低い。


輸送機の格納庫にある小さな窓から、軍事施設の上空に広がる奇妙な光景が視野に入る。

グエンの顔には、めったに見せない険しい表情が浮かぶ。

周りの部下たちは、外の様子に気づいて、ざわめき始めた。

「あれは何だ?」

「どうなっているんだ!?」

そんな部下たちの声をかき消すように、グエンは思索にふけっている。

彼は、噂になっていたある潜水艦の存在を思い出していた。

侵入した倉庫内で、自分の目で見た潜水艦の艦尾の形から、ある推測を立てる。

グエンは、一瞬の迷いもなく、行動に移った。

「あの艦は、間違いなく…!」

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