第18話 八つ当たりの業火

「おい!何が起きているんだ!」

斜めになった艦内で、イズナは男に対して怒声を浴びせる。

男はイズナを見つめつつ、優しく尋ねた。

「大丈夫ですか?怪我をされているようですが。」

イズナは先ほどの衝撃で頭を強く打ったようで、後頭部から微かに血が滲んでいる。

再びイズナが怒鳴り立てた。

「どういうことなんだ、これは!」

すると、後鬼が緊迫感に満ちた声で叫ぶ。

「イズナ!まだ戦闘が続いているよ!」

雷獣とイズナは正面の画面に、異様な集団が出現しているのを目にした。

「天狗・・・・!?」


天井から突き抜けた艦首の前方に、翼を持つ異国の人々が30人、鮮やかな姿で立っている。

いや、空に浮かんでいる。

彼らは前鬼が遭遇した天使たちだ。

天使たちは斜めになり、天井から突き抜けた艦首の前方に美しい円形を描くように飛んでいる。

その円の中央には、巨大な炎の矢が浮かび上がった。

その炎の矢は、まっすぐにこの艦を狙っている。


この矢の炎は艦だけでなく、周囲のすべてを焼き尽くし、灰に変えるほどの力を秘めている。

後鬼だけが理解できている。

「うわわわわっ!」

雷獣とイズナは本能的に、避けられない危険を察知し、悲鳴を上げていた。


天使軍の統率者は怒りに燃えていた。

前鬼を軽々と排除した後、悪魔が現れるであろう場所に急いで向かった。

天使たちが到着すると、地面には巨大な悪魔の紋章が浮き上がっている。

天使たちは迅速に行動し、最高位の悪魔封じの陣形を築き上げた。

この陣形を駆使した攻撃は、かつて戦術の天才と呼ばれた上級天使によって考案されたものである。

現在、天使軍の攻撃と作戦は、この天才が編み出したものばかりだ。

天使軍の統率者が最も尊敬し、憧れている天才天使である。


悪魔が紋章から姿を現すと、同時に光り輝く矢が放たれました。

その光の矢は悪魔を貫き、悪魔の体を押しとどめた。

天使軍の統率者は、闇を断ち切る聖剣で見事に悪魔の首をはねる。

一瞬の静寂。

首のない悪魔の体は地面に倒れる青い炎で燃え上がる。

天使軍はほっと胸をなでおろす。

最大の脅威は去ったのだ。


天使軍の一人が悪魔の首に近づくと、驚きの声が上がる。

「!?」

悪魔だと思っていた体は。呪のかかた人形だった。

その人形の顔の正面には紙が貼られ、その紙に文字が書かれていた。

文字は古代の悪魔の言葉で書かれたものだ。

天使軍の統率者は、新たな結界を築きながら解読班に作業を指示する。

何か得体のしれない魔術の罠かもしれない・・・

天使軍に緊張が走る。

解読に成功。

紙には次のような文字が書かれていた。

『ラーメンとライス大盛り1つ。お持ち帰りで♡』

当然、天使たちはこの言葉の意味を理解できない。

それを理解するには、もう少し時間がかかった。


現在、天使軍の目前に、斜めになった黒い乗り物からほんのわずかながら、気配が漂っているのが分かる。

自分たちが排除すべき存在の気配。

気配は巧妙に隠されている。

何かによって気配が遮断されているようだ。

しかし、こちらには高度に訓練された探知班がいる。

天使軍の使命を1つ全うする。

天使軍の統率者にはその信念はたったの2割ほどしかなかった。

残りの8割は、八つ当たりだ。

この鬱憤を晴らさなければ気が済まない。

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