第16話 魚雷の行方
艦内部で男は淡々とした動作で、6発全部の魚雷発射ボタンを押した。
艦下部の奥の方から不気味な重低音が鳴り響き、大きく揺れた。
前方の魚雷発射ハッチから、SS-N-6 Serbに似た魚雷が3発発射された。
しかし、整備中のミスか、それとも魚雷がまだ装填されていなかったのか、6発全部の魚雷は発射されなかった。
艦の外部では、先ほどできた擁壁の穴から海水が侵入してきていた。
艦体は海水に包まれ、まるで深海の魚のように、艦は水圧と共に闘っていた。
浸水が進む中、3発の魚雷は海水の中を白い泡を巻きながら前方の擁壁下部に向かって進んでいく。
しかし、その中で1発の魚雷が海水より浮上し、急角度で上昇し始めた。
上昇した魚雷ミサイルは、海水を飛び出し、倉庫の壁と天井を破壊し宙を舞った。
残りの2発の魚雷は前方にある擁壁の下部を襲った。
倉庫内の海水は、その瞬間に一瞬減少し、深い沈黙が広がった。
しかし、それは一時の幻想に過ぎなかった。
数秒後、倉庫内には大量の海水が奔流のように戻ってきた。
流れ込む海水の勢いによって、艦はその艦首が下から持ち上げられる形となる。
雷獣たちはその衝撃に身をよじりながら、衝撃に耐えていた。
流れ込んだ海水は艦の後ろにある壁に激突。
次の瞬間、海水の流れが逆戻りが始まる。
海水は強い勢いで、艦首の跳ね上がった潜水艦の艦尾の上方、甲板部分を押しだしていく。
艦尾の上部を押された反動で艦首が急速に上昇し、海水面から跳ね上がった。
そして、先ほど空に向かって発射された魚雷型ミサイルによってできた天井の穴に、艦首はスッポリとはまり込んでしまった。
艦は艦首を上にした急角度で傾き、雷獣は壁に強烈な衝撃で叩きつけられた。
「うぐっ!」その痛みに、イズナは思わず声を漏らす。
一方イズナは、入り口ドアに頭を強くぶつけたようだ。
後鬼はかろうじて運転席のシートにしがみついて、壁への直撃を回避していた。
雷獣は目の前に運転席に座る男を見た。
男は、いつの間にかシートベルトをしっかり締めていたようで、落ち着いた姿勢で椅子に座って次々と機械を操作している。
その姿はまるで、これまでの混乱を感じさせない。
イズナは後悔の念に駆られていた。
「この男に任せたのは、誤りだったのかもしれない。。。。」
前方の破壊された擁壁から、不気味な黒い物体の姿が静かに浮かび上がった。
まるで潜水艦の脱出経路を封鎖する魔物の存在のように。
その正体は、A国の潜水艦だった。
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