第14話 次の一手

「畜生っ、どうなってる!」「体が動かねぇぞ!」グエンの部隊は混乱している。

グエンはスーツのスイッチを押した。

しかし、何の反応もない。

スーツは完全に死んでしまったようだ。

周りを見渡すと、仲間たちも同じ状況に陥っている。

ロボット兵たちも動かなくなっている。

ロボット達の仕業ではないようだ。


グエンは、この任務に出る前に、新型の戦闘スーツを研究開発チームから受け取った。

このスーツはAIによって様々な機能を備えている。

体の動きをアシストし、敵から姿を隠し、攻撃アシスト、攻撃の予測、攻撃の防御、周囲の探知、視界の拡張、仲間と連絡を取る。

これらの機能があれば、どんな敵でも倒せると思えるほどだ。

賞金稼ぎとしての成果も上がり、賞金稼ぎランキングも上位に入った。


しかし、このスーツには弱点がある。

対物電磁波兵器だ。

これは電子機器にダメージを与える兵器で、前回のG国でかなりの苦戦をした。

だから今回のスーツはその対策がされていると聞いていたが。

やはり、研究開発チームのメンバーも作戦に参加させるべきだな。

グエンはそう感じた。

現場では研究開発室内では想像もできない事態が起こる。

それをデータでなく、実際に体感することは大切だ。

もちろん、部隊メンバーも研究室に行くことが必要だ。

研究開発チームの苦労を知るべきだ。

研究開発の会議にもどんどん参加するべきでもある。

これがグエンの考える理想の組織だ。

実際は部隊メンバーと研究開発チームには大きな壁がある。

グエンはこの壁を壊すべく、率先して研究開発室に出入りしている。

また、会議にも積極的に顔を出す。

研究開発チームの話を少しでも理解するため、あれほど嫌っていた数学や化学を独学で勉強し始めている。

全ては生まれ変わるY国のため。。。。。


「これは複合型対物電磁波兵器・・・」

グエンの頭は冷静にフル回転している。

これを発した大本は?

擁壁の向こうにいる敵とは考えにくい。

それならば・・・潜水艦か?

「誰が動かしている?」

グエンはその疑問を追ったが、答えは見つからなかった。

そして、次に来るであろう攻撃に備えるべく、スーツを脱ぎ捨てて銃を手に取った。

グエンには聞こえた。

潜水艦の魚雷発射口が開く金属音を。


潜水艦の中では、男が楽しそうに鼻歌を歌っていた。

彼は素早く操縦席に座り、魚雷発射最終認証コードを次々と入力ていった。

すると、潜水艦の下から金属音が響いた。


「攻撃って、どこを?」イズナが男に尋ねた。

イズナは男の動きに不信感を抱いてきはじめる。

「おそらく、大きな飛び道具を使う気だね。」後鬼が言った。

後鬼は必死で操作盤の思念を読んでいた。

同時に男の考えを読み取ろうとしていたが、なかなか掴めなかった。


「ご名答!」男は笑って答えた。

「飛び道具って・・・」イズナが言いかけたところで、

「皆さん、つかまっていてくださいね。」男が言った。

そして、赤いボタンを次々と押していく。

満面の笑みで。

«魚雷発射ボタン»だ。

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