第13話 反撃

コントロールルームの計器が突然ビーという高い音を発した。

イズナは耳を押えて叫んだ。

「何の音だよ!」

「それは擁壁の外に、別の敵が現れたことを知らせる警報ですね。」

後鬼は横目で男を観察した。

なぜこの人間はこうも涼しい顔でいられるのだろうか?

男は危機感がなさすぎる。

「う~ん、白い機械仕掛け人形も含めて、皆さん時間をかけてじっくり攻めようって感じでしょうか。時間をかけられたらこちらが不利ですからね。」

男は間延びした感じで答えた。

その言葉に雷獣は怒りを覚えた。

確かに時間をかけてじっくり攻められるとさらに不利になる。

どうすれば・・・


その時、大きく艦が揺れ始めた。

艦にかかる橋を渡っていた部隊がよろめいているのが画面で映る。

あちらはあちらで大変なようだ。

雷獣は男に尋ねた。

「どうなっているんだ?」男はモニターを見て言った。

「擁壁の外からの攻撃です。この倉庫に強引に入ってくる気ですかね。」

雷獣の顔が苦渋に満ちた。

また、違うやつらが来るのか・・・・


「それなら、こちらから攻撃しちゃいましょう。」

意外な答えが男から発せられた。

雷獣・イズナ・後鬼は男を見て驚いた。

「本気で言ってるのか?」

男は笑って言った。

「もちろんです。受け身でい続けるのは私の性分に合いませんから。」


イズナは男に向かって完全にキレていた。

「攻撃って言ったって、どうやるんだよ!」

イズナはこの男に対して不信感を抱いている。

元々、イズナは人間という生き物を憎んでいた。

人間は森や山を自分達のものだと思っている。

木々を切り倒し、動物達を追い払い、土地を荒らす。

それだけでは飽き足らず、人間は森や山に自分達の不要なものを捨てる。

プラスチックや金属や化学物質など、イズナには名前もわからないものだ。

それらは森や山に異臭や汚染をもたらす。

イズナはそのせいで仲間や子供達を多く失った。

大切な仲間たちは苦しみながら息絶えた。

イズナはその光景を忘れられなかった。

絶対に許せなかった。


男は慣れた手つきで青いボタンを押し込んだ。

「こうするんですよ!耳を押えていてくださいね。」

その言葉と同時に、妖怪たちの耳から脳にかけて不快な音が鳴り響いた。

気が狂いそうだ!

雷獣は男に向かって叫んだ。

「何をした!」

雷獣は側面にあるモニターを見て驚いた。

あれだけ恐ろしく動き回っていたロボット達が止まっている。

かすみがかかっていた人間たちの姿が、今ははっきりと見える。

頭から足の先まで奇妙な金属に覆われているような姿だった。

「まずは、電子機器を狙った攻撃です。」

男は笑って言った。

その笑顔に雷獣は不気味さを感じた。

まずは?

この男は、まだ他にも何かするつもりなのか?

雷獣は男の目を見て尋ねた。

「次は何をする気だ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る