第10話 潜水艦内部へ

倉庫の高い場所から、グエンの部隊は眼下の光景を見下ろしていた。

水面は激しく波打ち、時折ロボットの残骸が浮かび上がっては沈んでいく。

これらはどこかの国か組織が極秘に開発していた最新鋭の戦闘ロボットだろう。

グエンはその様子を見ても一切の感情を示さなかった。

部隊がこの施設に侵入した目的は、実験体を奪うことだった。

実験体には高額の賞金がつけられている。

残念ながら、実験体の姿はまだ確認できていない。

まあ、この最新鋭のロボットも高くは売れそうだ。

それに、あの奇妙な生き物たちも。。。

しかし、もう一つの大物が目の前にあった。

巨大な潜水艦だ。

これはR国が秘密裏に開発していた新型潜水艦であり、噂ではただの潜水艦ではないと聞く。

グエンはその正体には興味がなかった。

彼は自分が着ている新型戦闘スーツを見下ろした。

これは彼が盗んだものであり、まだ試験段階だったが、驚異的な性能を発揮してくれる。

まだ動くロボット兵と謎の生き物たちとの一戦。

スーツの性能を試すには良い機会かもしれない。

彼は口元に冷笑を浮かべた。

これぞ究極のスリルだ。


魚雷発射管はほとんど隙間がないほど狭かった。

雷獣達は身体をねじりながら、一人ずつ潜水艦内部に侵入できた。

潜水艦内部は暗闇に包まれている。

冷たく硬い鋼鉄が周りを覆っており、機械のカチカチという音や油の臭いが鼻をついた。

人間の匂いも混じっていたが、気配はなかった。

後鬼は指先から火花を散らし、辺りをわずかに照らした。

後鬼は火術を使える稀有な存在だ。

目に近くに梯子が映った。

それは上方に伸びており、おそらく上の階へと繋がっているだろうと思われた。

後鬼は形代という紙切れを数枚飛ばし、船内の状況を探った。

形代は彼の目と耳となって動き回ったが、人間の姿は見つからなかった。

いや、わずかに何か・・・

「上に行けばこのデカブツの正体が分かるかもしれん」と後鬼は声をかけた。

「よし、行ってみよう」雷獣が応えた。


後鬼の形代の案内で、雷獣達はコントロールルームに到着できた。

コントロールルームは想像以上に狭くて殺風景だ。

正面にはモニターやボタン、レバーがあるだけ、左右の壁も同様だった。

ここで本当にこれは何なんなのだろうかと雷獣は不安に思った。

イズナと後鬼も同じような顔をしていた。

彼らは何から手をつければいいのか分からなかった。

そんなとき、後方からわずかな光を感じた。

雷獣達は一斉に振り向いた。

ドア付近に人間と白い毛並みの子狐が倒れていた。

それは天狐にそっくりだったが、違っていた。

その子狐は上半身が真っ白で下半身が真っ黒。

そして尾が二本ある。

一本はふさふさとした白い尾で、もう一本は青い炎でできた尾。

その尾は揺れ動いており、コントロールルームに不気味な光を投げかけていた。

「天狐・・さま?」雷獣は思わず声を漏らす。

彼は天狐に敬意を払っており、その姿を見ると胸が高鳴る。

しかし、この子狐は天狐ではない。

それなら一体何者なのだろうかと雷獣は首を傾げた。

イズナと後鬼も同じように困惑している。

この人間と子狐はどこから来たのだろうか?

そして何故倒れているのだろうか?

彼らはその人間と子狐に近づこうとした。

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