第8話 正攻法

雷獣の心臓は激しく鼓動し、暗闇の中をイズナの後を追い必死に駆け抜けていた。後ろから迫るロボットの足音は、地獄から追いかけてくる亡者の叫び声みたいに響いてきた。

足音の大きさからして、少なくとも十体がて迫っていることは明らかだった。

通路の果てがどこにあるのか、雷獣には見当もつかなかった。

今はただ、イズナの背中を追いかけ、未知の運命に身を委ねるしかなかった。


不安が頭をよぎった瞬間、後方から銃声が轟いた。

ロボットたちが一斉に射撃を始めた。

しかし、雷獣は不思議に思った。

ロボットたちの銃弾は、雷獣たちの足元や壁に当たっている。

先ほどのような正確性に欠ける気が・・・

まるで、あえて追い詰めるような戦術をとっているかのようだった。

命を狙うのではなく、彼らを誘い込むように。


「このまま進んで大丈夫か?」雷獣はイズナの背中に不安げに尋ねた。

イズナは息を切らせながらも、力強く答えた。

「任せろ!」その声には自信と決意が満ち溢れている。


次の瞬間に雷獣は息を呑んだ。

潜水艦付近から白いロボットの姿が視界に入った。

ロボットたちは雷獣たちを挟み撃ちにしようとしている。

人間の狩り人達が好む正攻法。

「くそっ!挟み撃ちにされる!」

雷獣は声を張り上げた。

彼の声には狩られる恐怖と焦りが混じる。

敵の追跡は容赦ない。

その時、「ここだ。」イズナは静かに言った。

イズナは雷獣の腕を引いて数メートル上の場所を指し示す。

そこは・・・潜水艦の魚雷発射管だ。

作業中のためか、わずかに隙間が空いている。

イズナと雷獣なら通れるかもしれない。

しかし、後鬼には・・・「大丈夫よ!」それを察してか、後鬼はすぐに応えた。

後鬼はイズナと雷獣に笑顔を見せる。

その笑顔には絶望はない。

「私を見縊るんじゃないよ!」後鬼は言い終わるや否や印を組み呪文を唱えた。

すると、後鬼の2メートルを超える大柄な体が蛇のようにグニャグニャと長細くなっていく。

「さすがだね。」イズナがつぶやく。

「さあ、早くあそこへ!」後鬼は隙間の空いている魚雷発射管へ向かって進む。

雷獣とイズナもすぐに続く。

途端に後方のロボットたちが一斉に銃撃を始めてきた。

今度は当てるつもりだ。

弾丸が飛び交う音が耳を刺す。

あの隙間まであと少し・・・

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