第7話

「防具はこれでいいでしょうか」


 翌日、とりあえず防具は決めてあったローブにする。本当なら皮鎧とかが良かったのだが、この体格に合うのはないだろうし、合ってもすぐに着れなくなりそうだ。できれば可愛いのが良かったけど、ひとまず黒色のにしておいた。

 それに意外とローブにも防御力はある。今はまだそれほどでもないが、日ごろから魔力を流せば下手な皮鎧よりも硬くできるようになるだろう。まあ咄嗟の時に魔力をローブに流して、硬くできるようにならないといけないが。


「問題は杖ですよね」


 杖は種類によって性能が違うが、それによって合う合わないも変わってくる。

 例えば火属性が得意な人なら、火属性に補正がかかる杖を買えばいい。でもこれが火属性と水属性なら、両方に補正が掛かる杖を探さないといけない。


 さてそんな私の得意な属性はなにか。表向きは火、水、風、土の四属性だ。そうなってくるとどんな問題が発生するか。


「杖が高い……」


 四属性に補正が掛かる杖は売っていた。流石ダンジョン都市、見事な品揃えだ。だが高い、高すぎる。そもそも杖に使われてる木材が特殊な製法で育てられているらしくあまり出回らないとのことだ。それゆえ高額の金貨100枚だ。到底足りない。


 さらに杖はワンドとスタッフがある。他にもあるが一般的なのはこの二つだ。

 ワンドは片手で持てる杖で、主に詠唱速度などの速さを底上げになる。

 スタッフは両手で持つ大きさの杖で、主に威力の底上げになる。


 杖によって底上げされる能力が違うのは、杖に刻み込まれてる魔方陣が違うからだ。ワンドには魔力を流しやすくする魔法陣が、スタッフには魔力を貯めやすくする魔方陣が刻まれている。


 もちろんそれぞれ逆の魔方陣を刻むことが出来るが、あまり効果が出ないか使いずらくなる。

 ワンドは片手で持てる程度には軽いから、相手に向けやすいため標準が付けやすい。主にボール系やランス系の連射する魔法を好んで使う人に好まれる。

 スタッフは両手で持つほどに大きいから、魔力をスタッフの中に溜めやすい。魔力を溜めることで威力を高めることができるから、ストーム系の一発がでかい魔法を使う人に好まれる。


「さてどうするべきでしょうか……」


 私は一人で行動する予定だから、ワンドにする予定だ。スタッフはどちらかといえばパーティ向けだからな。もちろん使えなくはないが、真価を発揮するのは難しいだろう。


「この際それぞれ四属性ずつ特化したワンドを買うべきでしょうか……」


 とりあえず今は杖を探して武器屋を巡っている。四属性に補正がかかるワンド、パラケルススのワンドを見て愕然とし、


「足りない……!?」


 それぞれの属性に特化したワンドを買おうとして、値段を計算すると銀貨80枚(1ワンド銀貨20枚)になってお金が足りなく涙を流し、


「うんんん? ううぅー!」


 一つグレードを落としたワンドを見てみたが、これならなくても問題なさそうと思って買うのに躊躇する。

 そうして武器巡りだけで昼が過ぎ夕方に近づきつつあった。まさかここまで自分が優柔不断だったとは。


「一通り見てここが最後かな?」


 一目で武器屋とわかる場所はここで最後だ。流石に裏路地的な場所の店はわからないから探していないが。


「いらっしゃい」

「杖ありますか? できればワンドがいいんですけど」

「そっちの棚にあるよ」


 言われた方の棚を見ていくと、これまでの店と同じような品揃えに見える。


「試してみても?」

「いいけど壊したら買ってくれよな?」

「もちろん」


 試してみてもあんまり効果が実感できない。とりあえず一通り試すか。


 ちなみにこの場合の試し方は、魔力を流すだけだ。これで魔力が流れるスピードや溜まる大きさがわかる。その後は魔力を散らせば安全に元通りになる。


 そうして試していると一本だけこれまで見たことないワンドが見える。試してみると属性の補正はなさそうだが、魔力が圧倒的に流しやすい。それこそ銀貨20枚のワンドよりも流しやすいほどだ。


「店主、これどのくらいの値段ですか?」

「ああー、それか。銀貨10枚でいいぞ」

「安!」


 思わず安いと言ってしまったが、これは仕方ない。普通に考えて銀貨40枚はしそうだと考えていたのに、まさか銀貨10枚とは。驚いても仕方ないだろう。


「まあ売れると思って試しに買ってみたんだが買い手がつかなくてな。やっぱ属性補正がないと厳しいのな」

「ああー……」


 そういえばそうか。普通なら属性補正のほうを重要視するよな。どんな魔法でもその属性でさえあれば、補正が掛かるんだし。私もお金があればそうしてたしな。


「それで買うのか、嬢ちゃん」

「買います」


 まあ私にとっては安くなる分にはいいことだからだから、即決で買った。それにしても思ったより安くすませることができた。


 あとはポーションや鞄などの細かいのを買うと、いい時間になったので今日は宿に帰った。

 明日からはダンジョン探索だ。


「……それにしてもあの店主、すごい怖い顔でした」

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不老不死探求物語 星の人 @suiren012

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