第4話

 不老不死。


 それは大体の人にとっては夢物語だろう。もしくは悪の魔法使いが禁断の術を使って不幸になるとかが多いか?

 まあほとんどは碌なことにならない結末を迎えるのが定番だ。でも叶えなければならない、あんな苦痛をもう一度味合わないために。


 まあぶっちゃけ不死のほうはどうでもいい。要は死ななければいいんだから、逃げられるだけの力があればいいし。

 どっちかというと問題は不老のほうだ。こっちはどうするかいくつか考えてるけど、今のところできそうにないんだよな。現実逃避がてらおさらいしておくか。


 その1、魂を入れ替える。これは何かしらの器に魂を入れることで長生きできるようになろうって考えだ。けど問題があって、もしやろうとしたらぶっつけ本番になることだ。

 その2、死霊になる。まあありきたりだろう。死霊になって永遠の命を手に入れるとか絵本になるくらい有名だ。これをやろうにもやるならできるだけ強い死霊になりたいから保留だ。

 その3、魂を喰らう。これはまあもしかしたら魂を喰らうことで寿命が延びたりしないなぁという淡い期待だ。魂が強くなればそれに応じて肉体も強くなるとかないかなと。肉体と精神が影響するとか言われてるように、魂も影響してほしいなとそんなところだ。


 さて現実逃避はこんなところで終わるか。ではなぜ私が現実逃避をしていたか、それは。


「随分と綺麗な嬢ちゃんじゃねえか、これは高く売れるぞ」

「そうですね、お頭!」


 盗賊に襲われているからだ。


 というのも私の家は貴族らしい。まあ子爵家という貴族の中では殊更偉くもないし、地位が低いわけでもない。

 そんな貴族の一員な訳だが、実は7歳になると王都の学校に行く。そして私も今年で7歳になるから王都に移動中な訳だが。まあ両親からあんまり好かれてない上に、よくない噂もあるからか護衛が少なかった。


 まあ貴族を襲う馬鹿はいないだろうから問題ないと思ったが、どこにでも馬鹿はいるみたいで襲われた。しかも護衛は矢を掛けられた時点で数の差を悟ったのか逃げ出したみたいで、盗賊が「逃げるのか腰抜け野郎!」と言っているのが聞こえた。

 仮にも子爵令息な訳だが、それを見捨てて逃げ出して生きていけると思ってるのか?

 それと盗賊どもは私を令嬢と勘違いしているようだが、私が男ものの服を着ているのはどう考えているんだ?


 まあ逃げ出したのなら仕方ない。とりあえずスケルトンどもをぶつけるか。


「『シャドウルーム』。蹴散らせスケルトン」

「は? ぐぎゃあああぁぁぁ!」

「スケルトンだ! スケルトンが出てきた!」


 そこからは阿鼻叫喚だった。盗賊の悲鳴が響き渡り、続々と倒れていく。逃げようとしている奴らもいるが私のスケルトンのほうが速いみたいで追いついて殺していた。私のスケルトンのほうが多いとはいえこれは簡単に片付きそうだ。


「いやはや、まさかこれだけ強いとはな」


 数分後に盗賊の死体が十数体転がっていた。スケルトンを出して混乱している間に逃げようと思ったが、いい意味での誤算だった。

 ちなみにスケルトンの手は剣みたいになっていて、これで殺した。これも日々の魔法の成果の一つだ。本当は武器を持たせたかったが、流石に何度も取るのはばれるからな。


「さて早速魂を喰わないとな。こんな数を放置するのはもったいない」


 とりあえず魂を喰らって、盗賊が持っていた武器を死体ごと回収した。これは後でスケルトンにするつもりだ。


「これからどうするか」


 このまま王都に向かうか。でも場所がわかんないんだよな。御者も逃げ出してるし。というか馬ごと逃げ出せるとか用意周到だなという感想しか出てこない。


「まあとりあえず起きたことを嘆いても仕方ない。このまま進んでみるか。戻ると護衛だった奴らに会って面倒なことになりそうだからな。いやその前に着替えるか、このままの姿だとあれだし」


 ちなみに今の姿はドレス姿だ。念のために動きやすい服を『シャドウルーム』に入れてきたが正解だった。作ってよかった『シャドウルーム』。


 そうして日暮れになる前に近くの町に着くことが出来た。とりあえずお金はあるから、一晩泊まって考えるか。王都に行くか、失踪するか。



◇◆◇◆



 適当な宿に泊まることが出来た。それぞれのメリットデメリットを考えるか。


 まず王都の学校に通うメリットは、知識を一通り学べそうなことだろう。授業の内容を聞いてみたが、魔法の使い方から生産などを学ぶ。実は学校には貴族以外にも裕福な商人や職人の子供がくる。そういった人向けの授業だ。

 デメリットとしては貴族の上下関係や貴族として必須の授業を学ばなければいけないことだろう。礼儀作法やらテストの点数調整、他にも取り巻きなどとたくさんある。こうなってくるとあまり学習の時間が取れなさそうだ。

 それと求めている死霊術の知識などは手に入らないだろう。もしかしたら禁書があるかもしれないが、今の私ごときでは警備を突破することはできないはずだ。


 失踪するメリットは自由に時間を使える点だろう。屋敷ではさすがに攻撃性のある魔法を練習できなかったから思う存分できる。

 まあデメリットは親、というより貴族としての加護を失うことか。そしてお金のために働かないといけないし。しかしこの歳で働けるような場所があるのだろうか?


 こうしてメリットデメリットを出してみたが一概に比べられないな。個人的には人付き合いはめんどくさいから失踪したいが。失踪するか? 正直学校に通うのは乗り気じゃなかったし。逃げるならこんな絶好の機会は今後ないかもしれない。


 よし、失踪しよう! そうと決まれば探されるわけにはいかないから、ここから離れなければな。それにこうなればバレないように、フフフ。


 そして目指す場所は決めた。冒険者によって栄えた都市、ダンジョン都市だ!

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