第1話 懐かしい再会
あの日、私は、死の間際をさまよった。そして、懐かしい顔を見た。黒く、纏めた髪、琥珀のような、美しい瞳の青年。
彼は言った。
「まさか、また会うことになるとはな。」
「私もびっくりだよ。妖怪のお兄さん」
私は、5年ぶりに、心の底から笑った。青年は、全く姿が変わっておらず、ああ、この方は人間では無いのだろうと確信した。
彼は、またあの日のように、頭に手を当てて言う。
「全く、減らず口を。・・・・・・それで、どうしてここに来た?」
青年の、突然の問いに私は、少し言いにくくしながらも、返した。
「ああ、少し川から落とされて・・・・・・」
私の言葉を聞いて、彼は、ぴくりと眉を動かした。
「・・・・・・それは・・・・・・、義兄がか?」
私は、あははと苦笑いを浮かべた。
「ああ・・・・・・いや、私が義兄さんよりいい成績になっちゃって・・・・・・。通学中にドボンと・・・・・・」
「・・・・・・とんでもない義兄だな・・・・・・」
彼は、もはや感心したかのように呟いた。私も、思わず笑ってしまった、その時ふと、昔の話を思い出した。
「そういえば、昔お兄さん言ってたな。私の命を買うとかどうとか。あれって冗談か?」
私の言葉を聞き、彼は、突然、私を見た。
「その手があったか・・・・・・」
青年の反応に、私は首を傾げる。
「いや、冗談のつもりではあった。だが、事情が変わった。お前は、ここに来るタイミングが良すぎたんだ。事情は、おいおい話すが・・・・・・すまない、お前の承諾の有無に関わらず生き返ってもらうぞ」
私は、こくりと頷いた。
「ああ、それは別にいいよ。どうせ1度死んだんだ。お兄さんの好きにしていい」
青年は、私の返事を聞くと、空中に手をかざした。すると、黒く、長い刀が現れる。
彼は、その刀を持つと、切っ先を私に向けた。
「あの・・・・・・、お兄さん、それを私に指すとか言わないよね?」
彼は、申し訳なさそうに言った。
「すまない、自重してくれ」
「ちょっと待っ、」
トスッ
そうして、彼に心臓部を貫かれた瞬間、私の視界は、途切れ、真っ暗になったのであった。
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