第8話・「心の声に従う」ということ
「好きなことだけして生きていく」人たちを見ていると
本当に楽しそうだ。平日死んだ気持ちで生きている自分が
バカらしくなるくらいの気持ちになった。
「好きなことだけして生きていく」
これが僕の人生のキーワードになった。
とはいえどうしようか、というのが正直なところだった。
平日は会社を速攻で退社して、
どこかのセミナーやイベントに突撃する、
そんな日々が続いていた。
会社に関して言えば、僕はずっと心ここに在らずという感じで過ごしていた。
当時の僕にしてみれば、思惑としては
少しでも「普通」からかけ離れた人と出会えば自分が変わる、
という信条を持っていたので
なるべく「変わった人」が集まる場所に行くようにした。
「変人」であるが、意識の高い集団に。
そうして僕は変人ではあるが、
意識の高い人たちの集まりに行くことにした。
この仮想集団のような集まりは、
着物という昔ながらの服装の愛好者たち。
確かに和風の服装をしているが、シルクハットを被ったり
その中に西洋のエッセンスも混じっている不思議な人たち。
そんなコミュニティで、一人の初老くらいの、覚者のような男性に出会った。
心の声に従うと「善の選択」ができるようになる、というのが
その人を通して理解したことだ。
自然をこよなく愛する「自分の心の声に従って動いた」先輩、ケンさん(仮名)。
僕のあまり当てにならない直感ですら
「この人は他の人とちょっと違う、いやちょっとどころじゃなくて、かなり違う」
と思った。なにしろ常識にとらわれない。
僕も集団生活から「はぐれ者」として生きている実感があったが
ケンさんもそんな類で、より自分の感覚に従って生きている。
テレビとかでうたってることなんてまず信じないし。
彼と「陰謀論」の話で盛り上がったこともある。
ケンさんは「自分の心」というものに従って
僕よりも先にSNSを卒業した。
まるでガンジーのような、存在そのものが達人みたいな人だと思った。
尖った性格というわけでなく
自然と自分の行きたい方を選ぶ、と。
自然に「善の選択」ができている。
だからなのか僕がケンさんの選択を「支持するよう」になったのは。
「自分の心の声」に従わないと
いまだに起業家の先生の師事を仰いで、自分や他人にウソをつき、
SNSで虚構虚飾にまみれた自慢大会をやることを
「善の選択」としていたかもしれない。
この人の全くのコピーを目指そうと思わないが、
心に従って生きる有様には表敬の意を示したいし。
僕はケンさんのおかげで、あくまで僕なりにではあるが
自分の心に従った生き様をしようと思えるようになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます