第5話
「お前もぺらぺらと話してくれたから教えてやろう。これが連邦の新兵器ナノシステムだ。科学力が帝国のものだけだとは限らないということだ。」
ナノシステムとは連邦が開発したナノマシンの上位互換である。
ナノシステムは体内のナノマシンと体に埋め込まれた各種機関、それと脳に埋め込まれた人工知能をつなぐシステムのことを言う。
しかしナノシステムはナノマシンよりも優れてはいるのだが、扱いが難しく、また普通の人間の体には耐えられないような代物であった。
そして、そこで白羽の矢がったのがまたしてもレイだったというわけだ。
レイは黒狼としてもともと強靭な肉体を持っていたことに加え、経験も豊富なことから最適な人材だった。
連邦の思惑は的中し、レイはさらに強力な力を手に入れた。
ナノシステムはナノマシンよりもさらにたくさんの機能を持つ。
今回レイが発動したのは身体復元と肉体強化だ。
これによりレイはもはや化け物と言っていいほどに強くなった。
「は、はったりはよしたらどうだい。見え見えのウソはばれるよ。」
34号はそう強がるが、本能がこれはやばいと警鐘を鳴らしていた。
「まあいい。信じなくてもすぐにわかる。」
レイは心の中でアテナと呼びかける。
すると頭の中に直接語り掛けられるように返答が返ってきた。
『ご用件は何でしょうマスター。』
アテナとはレイに埋め込まれた人工知能のことだ。
アテナの名前の由来はどこかの神話の知恵の神だか何だったかで、それを連邦の研究者が気に入りつけた名前だった。
ただレイは、アテナという名前が単純にいいと感じ気に入っていた。
『相手のドローンを無効化してくれ。うっとうしくてしょうがない。』
そうレイが念じるとアテナは了解と短く答え、ドローンの解析およびハッキングを開始した。
すると突然ドローンは力を失ったかのように墜落した。
34号は驚き何が起きたのか理解できずにいた。
「な、なにが起こった。このドローンは最新の機構を使っているんだぞ。」
「アテナにかかればこんなものどうということはない。」
34号はそれを聞き見る見るうちに顔が青くなっていった。
レイに対して恐怖を感じたのだ。
「ふむ、あまりやりたくはないのだが、一応先輩として『黒狼』がいかに残虐で恐ろしいかを知ってもらうか。」
そうレイは言うと34号の前に突然現れ、34号をナイフで細切れにした。
黒狼式戦闘術
レイは少年漫画のように技名を叫んだりはしなかったが、まさに必殺の一撃であった。
そこに派手さはなかったが、34号は洗練された流れるような動きに目を奪われていた。
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