第3話

男は、おそらく部下たちは全滅しただろうと思っていた。

そしてここからどう逃げるか考えを巡らせた。

しかしどう考えても逃げれるビジョンが浮かばない。


男は、『黒狼』、この名を聞いた時から任務の失敗を感じ取った。


『黒狼』、その名は宇宙のだれもが知り、恐れるものだ。

『黒狼』とは簡単に言えば帝国の特殊部隊だ。

ただ、普通の特殊部隊とはその強さの次元が違う。

たとえるなら、『黒狼』一人で戦艦を相手にできるほどだ。

なぜそこまで強いのかというと、帝国が全宇宙の暗部を集めその技術を融合させたからだ。

そしてその融合させた技術を、少年や少女に植え付けある施設に送り込む。

その施設では計百人の少年少女が、日夜殺し合いを行う。

そして生き残った一人がようやく『黒狼』となれるのだ。

まさに蟲毒のなかで育った『黒狼』は強さと残虐性を備えた、最強の特殊部隊になるのだ。


男はそんな『黒狼』からただで逃げ切れるとは思えなかった。


それからしばらく思案したのち、男は廊下を駆け出した。

どうせただで逃げれないなら戦おうと思ったのだ。


男はしばらく走ると、管制室の扉の前についた。

そこは嫌なほどの静けさがあった。

男は不気味に思いながらも意を決して扉を開けた。


そこには凄惨な光景が広がっていた。

部下たちが全員倒れていたのだ。


男は少しの悲しみを感じるが、一人の人影があることに気づき冷静さを取り戻した。


「まだ生き残りがいたんだね~」


人影はそうのんきにいう。


「おまえ、『黒狼』だろ。」


男は人影に聞く。


「そだよ~。僕はKOKUROU34号。よろしくね~。」


どうやら『黒狼』で間違いないらしい。


男はゆっくりと歩き出した。

そして次の瞬間、34号の前に現れナイフで切りつけた。


34号は驚きながらも腰のブレードを引き抜き応戦する。


「おじさん、只者じゃないでしょ。」


34号が聞いてくるが、男は答えず攻撃の手を緩めない。

34号は応戦しながらも少し考えるそぶりを見せた。


「わかった、おじさん、レイさんでしょ。」


34号が思いついたかのように言う。

そして男はその言葉にピクリと反応を示す。


「ビンゴみたいだね。いや~先輩がよく話してくれたよ。KOKUROU試作機、通称零号。その強さは歴代のどの『黒狼』とも比べ物にならないって。、、、でもなんで連邦側にいるのかな~。黒狼はやめれないはずでしょ。」


「帝国が制御チップを入れ忘れたのだ。それ以降そんなヘマは犯してないとは思うが。」


34号の言葉に男、いやレイは返す。


レイがなぜ連邦にいるのかというと、拾ってくれた恩とかではなく単純に『黒狼』が憎かった、ひいてはそれを組織する帝国が憎かったからなのだ。


「ふ~ん、帝国も馬鹿だね。こんな化け物を逃がしちゃうとか。まぁでも、これでも僕は最新型だ。黒狼もあれから進化していてね、強いよ、僕。」


34号はそういうと、纏う雰囲気が変わり、攻撃も強まっていった。


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