エピローグ

最後の人の子が死んだ。

不死の研究を引き継いだ人間達は禁忌の扉を開いたのだった。

不老が完成してしまった。

この世界は一部の特権階級のみが生き延びる世界構造が完成してしまったのだ。

食料問題は急速に深刻になり、弱い者から死んでいった。


100年もすると、世界は西と東で二分され最後は共倒れしたのだった。

私はただ眺めていた。

もう人が産まれることが、命が産まれることのない世界の終わりを、これでよかったのだろうか?


一つの恋はようやく終わりを迎えたのだった。

悲しく、救いがない恋物語。

ああ、人はなんと儚く、愚かで、美しいのだろう。


最後の人の死を見届けると私はこの世界を閉じた。

二度と私の嘆きが産まれない世界、ここは彼の墓標だ。

私だけが覚えてる。

そう私だけの愛する場所。

神は愛するものを、拐わかし、閉じ込め、神なしではいられなくする。


私もそうしたのだ。

この世界は、彼が望んだ世界は、私だけのもの。

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嘆きの氷女は嘆きたい 羽柴 @hashiba0101

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