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「他にどんな名前が上がってるのよ」
「副会長に【鬼編】【偽物】【チャラ男】。まあ【チャラ男】は女子がキャーキャー騒いでるだけだな。そういう意味では【菩薩】の名前も出てたな」
「どれもパッとしないわね」
「【幹部】に言わせればな」
ベッドに横になる。日差しの温もりに、今にも眠ってしまいそうだ。
「気にならないの? 冗談抜きで、クビになる可能性だってあるんでしょ?」
「恨みでも買ってればな。いくら権限があっても、教師の配置にまで口出しはしねぇよ。前会長ほどこだわりがあるやつなんて、そうそう居やしねぇからな」
つまり【魔王】は、教師の割り振りも行ってたのね。
「お前が気にしてる理由は、自分の邪魔をされるかもしれないからか?」
「私をなんだと思ってるのよ」
「理事長の孫なんて噂に戦々恐々してるのは、今に始まったことじゃないだろ。権力と言う甘い汁をすすって、好き勝手してるって噂まで出てきてる」
「あなた教師でしょ? 噂なんて信じるの?」
「俺は保険医だし、別に信じてねぇよ。でも、堂々と遅刻やサボりをしてりゃ、誰だって許されてると思うもんだ」
「許されてない。穴をついてる」
「そうだったのか。初耳だ」
嘘つけと言いたかったけど、やめた。口にするのは初めてだったし、予想は確証じゃない。
「どんなやつが会長になろうが、前会長ほど酷くはならないだろう」
「その酷いっていうのは、脅しの事? それとも、彼女のいうところの改革案のこと?」
「前者だ。後者は教師にとって何の意味もない」
「監視カメラも?」
「防犯カメラ。教師は喫煙を禁止されちゃいないし、見張られてもいねぇよ」
サボりはどうなんだと思いもしたが、保健室にカメラがないことを思い出した。
だから私も安心してサボってる。佐山も同じだろう。
「理事長の孫って、そんなに万能なの?」
「まぁ、身元が保証されてるって思ってる奴らにとってはな。それに、教師の配置を決める権限はあっても、理事長をどうこうできる権利は、会長にはない」
「むしろ、その逆?」
「まあ、そう思ってるやつもいるだろうな」
春の陽気はこんなにも強かっただろうか。
差し込む日差しは、瞼を閉じても燦燦と私を照らす。
「強請ってなにも、弱みを握るだけじゃないわよね」
「何か言ったか?」
「なにも」
権力は、何物にも代えがたい、
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