第25話 決着。

沢山久郎は最後の強化として、荒れていてもケィ達と強化をして眠りにつくとイェイロ達と強化をする。


散々な量の強化の果てに、夢の世界でも眠りにつくと普段なら目が覚めて、アルが「おはようございます久郎様、朝ですよ」と言い、ジービィが「強化お疲れ様でした」と言う。


そして2人して頬を染めて「今日もお手伝いさせてください」、「私たちの分もありますよね?」と聞いてくる。


沢山久郎からすれば寝ても覚めても女が周りにいて、肌を重ねる事に疲れ切っていた。

だが日本に帰る為にも手段は選んでいられない。


「わかってる。今日もよろしく頼む」と言って1日が始まっていた。


夢の中で眠りに着いたが、起きる気配がない。

不思議に思っていると「見くびらないでくれる?」と言って調停神が現れた。


「あれ?調停神?」

「そうよ」

「どしたんだ?」

「彼女達に当たり散らすくらい不安なのが、見てらんなくて来てあげたのよ」


調停神に見られていた事で隠す気のなくなった沢山久郎は表情を暗くして、「俺は日本に帰れるのか?」と聞くと、調停神は「あのキングに勝てればね」と言った。


「勝てるんだよな?去年でも勝てたんだよな?」

「それが微妙なのよね。享楽神がアンタの強化に合わせてコッソリと強化していて、気付いてやめさせたけど『圧倒なんてつまんねーって、アイツだって思い切り暴れたいって』って言ってたわ」


思いもよらない言葉に「何!?」と沢山久郎が聞き返すと、調停神は「ほら、基本的にコドクはあいつの世界だから好き勝手やれちゃうのよね」と言って困った顔をする。


「それで勝つために強化を続けても帰れるんだよな?帰れるだけで周りの連中が死ぬなんてねえよな?」

「そんな真似しないわよ。その為にケィも貴方の強化に加えたのよ。キチンと調停神の名の下にやり切ってあげるから、全力で勝ちなさい。仕方ないから私の爆発を教えてあげるわよ」


沢山久郎の中に調停神の使う爆発魔法の知識が入ってくる。


「これ…」

「まあレンタルって所ね。日本には持っていかせないわ」


日本で爆発魔法を使う姿を想像して、「あー…、持って帰りたくねえよ。魔法とかマジ邪魔」と言うと、調停神は嬉しそうに「ふふ。そんな沢山久郎だから応援してあげているのよ。頑張りなさい」と言う。



沢山久郎は「わかった」と言って目を覚ますと、アルとジービィに「調停神が夢枕に立った。この世界を作った享楽神の奴がキングを強化しやがったから、負けない為にも頼む」と言い、朝から強化に勤しみ、ファミリアを呼び出してイェイロ達にも「調停神から言われた残り3日はスパートをかける。辛くても頼めるか?」と聞くと、三姉妹共に「任せてください」、「私ならイェイロやシィアよりキツくても平気だよ!」、「何を言う!遠慮など無用だ!」と言ってくれた。


朝食を食べたケィは沢山久郎の部屋に来ると、「あ!朝からやってる!呼んでよ!」と言って早速混ざっていた。


あっという間の3日。

それこそ沢山久郎は寝食を惜しんで強化をして、隙間時間でシィアから剣技を習ってイェイロと連携の訓練もする。

出来る限りの強化を施して最後の戦いを迎えた。



大歓声の中、キングは「よく来てくれた!強者よ!」と言って沢山久郎を迎えた。


沢山久郎が「そんなに待ち望んだのかよ?」と聞くと、キングは「勿論だ。力を求めるのは人のサガ。だが強くなり過ぎて戦える相手が居なくなるのは孤独。だからこそこの世界はコドクなのだろう」と返す。沢山久郎は「そうか?俺は案外蠱毒の壺のコドクだと思ってるぜ」と言ってニヤリと笑った。


「そこの所はなんでもいい。さあ戦おう!」

「おう、俺は勝って日本に帰る」


キングは全身鎧に兜。

重たい身体に視野の狭さを狙おうと話していたので、死角からシィアとイェイロを向かわせてバリエーション豊かな攻撃を仕掛ける。


だがそれを見越していたように全てを弾くどころか沢山久郎を斬りつけてくるキング。


「おーおー…やべぇ」

「素晴らしい!強者よ!もっとだ!」

「ちっ、シィア!イェイロ!狙いは奴の腕!奴の武器だ!俺が本体を狙う!ジェンタは回復限定だ!」


沢山久郎の攻撃は間違っていなかった。

あくまでキングの攻撃を鈍らせて沢山久郎は十分な攻撃と回避を行う。


この段階で3番なら倒せている。

痺れを切らした沢山久郎が放ったアイスソードの乱れ打ちは、キングに通用せずに全てを沢山久郎に向けて打ち返してくる。


「ちっ!火魔法!」

「その溶けそうもない氷を溶かすとは、恐ろしいな挑戦者!」


その後も多彩な攻撃を仕掛けるが、どの攻撃もキングは一度は喰らうものの二度目以降は軽々と防いでしまい、「一度見た攻撃は全て防ぐ」と言う。


「ちっ。ケィとの戦いで手の内を晒し過ぎた。後でヒーヒー言わせてやる」

「久郎!ヒーヒーは私にしてください!」

「私だよ!」

「いや、私だ!」


「お前達、余裕なのな」

「余裕はありませんが、久郎と繋がり、久郎の力を貰っている私達はまだやれます!」

「そうだよ!だから久郎もやれるよ!」

「更に高みを目指せ久郎!」



沢山久郎は三姉妹の励ましにニヤリと笑うと、「じゃあ本気を出すか、一度限りの大博打だ。シィア、イェイロ、俺の考えが読めたな?頼んだぜ?ジェンタ、要はお前だ。アテにしてる」と言う。沢山久郎の戦法に驚く三姉妹だが沢山久郎ならやれると信じていた。


一度距離を取り「さて、悪いが俺の攻撃はもう数えるほどしかない」と言う沢山久郎。

それを聞き「ならばそれを防げば私の勝ちだな」とキングが返すと歓声が沸きあがる。


「まあそうなるな。だが俺は日本に帰る。それの意味はわかるな?」

「勝てるといいな」


沢山久郎は「勝つんだよ!」と言いながら踏み込むとインファイトに切り替える。


「シィア!奴の攻撃の選択肢を削れ!イェイロ!容赦なく死角を狙え!ジェンタ!そのまま回復を頼む!」


キングの反撃すら即時に回復するジェンタの回復魔法。


沢山久郎は決してキングの斬撃を喰らわない。

傷を負うのは刺突攻撃の時で、その隙をシィアは防いでいたが、キングが「見破ったぞ!お前は突きに弱い!」と言って一瞬の溜め動作の後で、常人の目には止まらない速さで突きを放った。


「来たぞシィア!」

「おう!任せろ!」


シィアはキングの突きを真正面から受けて剣速を鈍らせる。


「その程度で防げる道理はない!」

「織り込み済み!ジェンタ!」

「やってる!回復してるよ!」


「行くぞイェイロ!」

「はい!任せて久郎!」


「氷魔法!」

「氷魔法!」


「氷魔法!」

「氷魔法!」


イェイロと沢山久郎で四度の氷魔法を放って自身の前に氷の壁を用意して剣が鈍りながら沢山久郎の身体に刺さった瞬間にキングを氷漬ける。


激痛に顔を歪める沢山久郎に向かって、「それがお前の隠し球か?甘い!こんな束縛などすぐに解いてやる!」と言うキングに、「んな訳ねえだろ!イェイロ!」と声をかけると、イェイロは「はい!氷魔法!」と言って氷魔法を放つ。

イェイロが放った氷魔法は攻撃のものではなく、沢山久郎とキングの間に分厚い壁となってそびえ立つ。


「何?」と驚くキングに、沢山久郎は「レンタルだけど!使うぜ調停神!爆発魔法!」と唱えると、キングを爆心地に大爆発が起きた。


沢山久郎はイェイロの氷壁を使って爆破のダメージを緩和させると、剣を引き抜いて「ジェンタ!回復頼む!シィアは破片の迎撃!イェイロ!行くぞ!」と指示を出す。


「火魔法!」

「雷魔法!」


「氷魔法!」

「風魔法!」


「火魔法!」

「爆発魔法!」


「雷魔法!」

「爆発魔法!」


「氷魔法!」

「爆発魔法!」


「風魔法!」

「爆発魔法!」


コレでもかと攻撃を加えて、ジェンタが「オーバーキルじゃない?」と言い出して、手を止めると爆心地には仰向けで倒れているキングが居た。


「マジかよ。もしかして生きてんの?」と言って沢山久郎が慌てると、「死んだわよ」と言って調停神と享楽神、性愛神が現れた。


夢ではなく現実世界で会えた事に驚きながら「調停神?」と声をかける沢山久郎。

調停神は「お疲れ様、キングの蘇生まではコドクにいなさい。そうしたら日本に帰してあげる」と言うと、享楽神が「おーおー、メタクソ強化したのに負けちゃったぜ。でも楽しかったろ?全力投球っていいよな」と沢山久郎に言い、性愛神も「愛の力は無敵だわ!証明してくれてありがとう!」と言う。


享楽神と性愛神の言葉に返事に困りながらも「まあ楽しかったけど帰りたい」、「愛って…なんかもっと違くね?」とだけ沢山久郎は返した。


享楽神はこの世界の神として、沢山久郎がキングを破った事を宣言して戦いは終わった。

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