第22話 沢山久郎vsケィ。

決戦当日、コロシアムは湧き上がっていた。


「よう…ケィ」

「久しぶりね久郎」


開始前の会話。

一触即発の空気。


「よくもやってくれたな」

「あら、止めてあげたのよ?あなたあのままじゃ4番に勝てなかったんじゃない?」


「隠し球はまだまだあったんだよ」

「へぇ、知っていたらあなたにベットしていたわ。それもこれも私の誘いを断った久郎が悪いわね。ヤキモチを妬いているのよ?あなた結局私は抱かなかったのにメイドは抱いたし、追加でもう1人増やしたんじゃない」


「よく言うよ。お前に抱かれた奴は不審死なんだろ?」

「あら知っちゃってたのね。ジャッカよね。まあそれが私の能力ですもの。まあ久郎には効かなそう」


ケィは舌なめずりしてイェイロ達がするようなおねだりの顔で沢山久郎を見て、「ふふ。勝ったら一晩付き合って貰うわ」と言う。



「やはり、お前は能力を隠したな。あの毒の中で動けるなんて秘密があるはずだ」

「あら、そう思ったのね。そうね。あの猛毒の中で生き抜いたことより、久郎を出し抜いた事ばかりに周りは目を向けていたわ」


ケィの言葉に湧き上がるどよめき。

「ほら、皆気付いてない」

「お前が隠し上手なんだろ?」


話は終わりヒリついた空気の中、キングが手を挙げて「始めろ」と言うと、沢山久郎は「様子見なんてしねぇ!シィア!」と言って青い光を向けさせた。


シィアも「久郎の敵!私が殺してみせる!」と叫びながら容赦なく向かう。素人には回避不可能な速さのシィアがケィに直撃をして、誰もがケィの死を疑わなかったが、吹き飛ばされたケィは「ふふ。怖い。死んじゃったわね」と言って涼しい顔で立ち上がった。


「な…」

「あら、それくらいやれなきゃこの世界に呼び出されないわよ」


今度はケィが攻めてきてダガーナイフを振るう。

肉薄距離になる前に回避をしたはずなのに、沢山久郎は服ごと身体を切られていて慌ててジェンタが回復魔法を使ってくれた。


「なんだ今のは?シィア?」

「私は捉えた」

「私だって見てたよ。でもあの刃をかわしても久郎は斬られていたから回復したんだ。久郎じゃなかったら真っ二つだったよ」


沢山久郎の周りを漂うファミリア。

沢山久郎はケィを油断ならない相手と認識して、「イェイロ、出てくれ」と言ってイェイロも出す。


「なんとなくですが、あの者の能力も久郎に近いのかもしれません。私たちのような何かがいるかもしれません」

「イェイロ?」


「ジェンタは回復に集中して、そのまま支援魔法で目に見えないモノを探しなさい」

「了解だよイェイロ」


「イェイロ、ジェンタ?」

「目に見えない攻撃や防御があるって事だな、何手まで同時に防げるかだ、私とイェイロが攻撃に入る。久郎は致命傷にならないように防御を意識しつつ攻撃に参加してくれ」


シィアとイェイロが向かいながら攻撃に入り、沢山久郎もアイスソードを生成して攻撃に参加をする。


ジェンタは防御を優先しながら付近を見守ると、確かに直撃時に何か蜃気楼のようなものがケィを守り、ダガーナイフの攻撃とは別で蜃気楼のようなものが沢山久郎を襲う。


一瞬の攻防。


強すぎる沢山久郎の攻撃を防ぎ切って、反撃で傷までつけるケィの実力にコロシアムは湧き上がった。


「見えたよ久郎。何かしらのモヤみたいな蜃気楼があの女を守って、勝手に九郎に攻撃を仕掛けてくる」

「ちっ。あのダガーナイフは囮か?」

「そうなるな」

「攻撃が当たってもあの女はびくともしません」


沢山久郎はジェンタから「聞いてみて」と言われて、「ケィ、すごい実力じゃないか」と声をかける。


「ふふ。久郎ってば必死ね。私の能力を知りたくて話してきてる」

「ああ…攻撃にしても俺の家族達みたいに自動攻撃と自動防御をしてるだろ?」


「ふふ。貴方ほど自立してないわよ。行動の指針だけ出して、後はセミオートって所ね」

「成程。で?俺は思った訳だ、下手すりゃ上も目指せるがそれをしなかった。それには理由があるんじゃないかってな」


これにはジェンタ達も驚き、沢山久郎の真意を探る。


「回数制限。多分ケィの力には回数制限か時間制限がある。だからこそ俺の後ろをついて回って、能力をほぼ使わずに5番の位置に落ち着いた。違うか?」

「そうよ。私の能力には残数がある。今の一瞬でもゴッソリ減らされた。でもまだまだ何年も溜めてきたから戦えるわ!」


ケィが目の色を変えて一気に勝負に出てくる。


「ジェンタ!防御は自分でやる!攻撃に入れ!一斉攻撃だ!」

沢山久郎も総攻撃に出ると、コロシアムは震え続け、世界が壊れないようにキングは力を使い続ける。


5分にも及ぶ戦い。

ようやく沢山久郎の攻撃がケィの肩をかすめた時、ケィは「あーあ、弾切れ。降参よ」と言った。


キングは手を挙げて勝負終了を告げる。


沢山久郎は「マジかよ!?殺させろって!」と談判をするが、「もう十分戦った」と言ってキングは再開を許さない。

苛立った沢山久郎は「ならケィの能力を知りたい」と言うと、ケィも「私に勝った久郎になら教えられるわ。私の部屋まで来て」と言い、「仮に何か私がおかしな動きを見せたら殺してくれて構わないわよ。私なんて能力が丸裸なら弱いんだから、秘密にさせてよ。ミステリアスな女の持ち味まで奪わないで」と続ける。


キングは「キングの名の下に認めよう。チャレンジャーよ、お前にも何か優遇を認める」と言うので、沢山久郎は「…なら仮にこの先負けても次の一年までの間は何度でも挑戦させてくれ」と言って条件を受け入れた。

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