第20話 新しい一年。

半年が過ぎた。

キングが召喚を行う日に部屋を追い出され、大部屋に通される沢山久郎はイェイロ達に「今日は強化は無しだ」と告げて姿を消させる。

沢山久郎は半年の間にキチンとファミリアの出し入れが出来るようになっていた。



呼び出された新たな50番は会話もままならない壊れた男で、連れてきた2番と3番に「こここ…コイツら殺していいの?」と聞いている。


「明日ならだ」、「今日はダメだ」と言われて渋々諦めていて、ジャッカとサルドンは「お前のそばにいる」、「夜中に襲われては敵わん」と言っていて話はこの半年のことになった。


「鍛えたのか?」

「纏う気配が違い過ぎる」

「まあな、俺の訓練は室内でコソコソやるタイプなんだ」


「凄いな。俺たちは地下のダンジョンでは魔物が弱過ぎて話にならないから、2人で訓練を積んだ」

「ジャッカは何故ナンバーズに居なかったのか不思議な程だ」

「仲良くなったのね。いーんじゃね?」


久しぶりの会話に沢山久郎は楽しくなっているとサルドンが「そう言えば礼がまだだったな。9番…、今年は10番だが、アイツとの戦いには感謝をする」と言ってくる。


もうだいぶ前のことだが、サルドンを馬鹿にした9番に腹を立てて消し炭に変えたことを思い出して、「別にいいって、頭きただけだしよ」と笑い飛ばして早寝をして翌日を迎えた。


翌日、キングとナンバーズが現れると5番手にケィは居た。

悪びれることなく着飾っているケィは、沢山久郎を見てウインクと投げキスをしてくる。


沢山久郎の怒りに呼応して、隠れているイェイロ達も「あの女が久郎を裏切ったのね」、「やっちゃおうね久郎」、「私達にも出番をくれよ久郎」と言っていて、「勿論だ。頼んだぞ」と返す。


そしてそれ以下の連中は皆沢山久郎を見て目を逸らしていた。


予選は問題ない。

今年は魔物が出て来ずに50人のバトルロイヤルだった。


沢山久郎は一位通過をしてアルとジービィと再会する必要があるので、キングに「今年の一位通過の条件は!?」と問いかけると、「1番多く対戦者を倒した者だ」と返事が返ってきた。


その言葉に、名前も知らない連中が「また今年も火炎か!?」、「ふざけんな!」、「対策済みだ!生き残るぞ!」と言い出して慌てる中、今年の50番、あの会話もままならない男が沢山久郎を目掛けてナイフを生み出して投げたり斬りつけたりしてくる。


「今年は容赦なく本気を出していく…頼んだぞシィア!」

沢山久郎の掛け声に合わせて青い光が飛び出すと、シィアが「任せろ九郎!」と沢山久郎にしか聞こえない声でナイフを迎撃した後で、50番を一瞬の間に切り刻む。


あっという間に細切れになった男。

後は顔と名前が一致するジャッカとサルドンのみを残してあっという間に皆殺しにしてしまうとキングを見てからケィを睨んで首に親指を当ててサムズダウンをした。


ケィは青ざめたが、沢山久郎は意に介さずにいると、ジャッカとサルドンは回避せずに殴り合って僅差でサルドンが勝っていた。


「ほう、新たな力…。ファミリアか」と嬉しそうに言ったキングは、「見事だった強者よ!」と言い、観客席から歓声が湧き上がった。


「明日からは10番と戦ってもらう!見事にこの私の元に来てくれる事を期待している!」

キングの言葉に今年の10番が立ち上がるとゲッソリとした顔で「…お手柔らかによろしく」と言った。


沢山久郎は1番の部屋に戻ると、アルとジービィが待っていて「久郎様!お帰りなさいませ!」、「早速強化をなさいますか?」と言ってきた。


「マジで?」

「1日も離れていました!」

「寂しかったです!」


その姿を見た世話人が「お前達、久郎様を困らせるのではない」と言いながら前に出てくると、「久郎様、なんの心配もしておりませんでした。お帰りなさいませ。今年こそは優勝されると信じています」と挨拶をした。


「おう。今年も世話になるよ」

「はい。何なりと命じてください」


沢山久郎は一つの事を気にして聞くことにした。


「なあ…一つ聞いていいか?」

「はい。なんでございましょう?」


「アンタはこのコドクをどう思う?」

「素晴らしい場所で御座います。年も取らず衰えもない中、心ゆくまで本能に従える。私やアルとジービィもで御座いますが、尽くす事が生き甲斐。それを叶えてもらえます」


「なるほどね。…本当に歳取らないの?」

「はい。ただ寿命は存在しますので、ある日突然衰えを感じて死を迎えます」


「んー…、もし仮に俺がキングになって解散って命じたら?」

「困ってしまいますが、全てはキング様のご意志で御座います」


「久郎様、久郎様はやはり帰られたいのですか?」

「帰らないで永遠に私達をご寵愛ください」

「寵愛じゃねぇよ。強化だよ」


沢山久郎は、なんでこんなに強化をすると皆して強化を超えて愛だのなんだの言い出すんだと思ってしまった。


とりあえずせがまれるままに強化をし、夜は夢の中でジェンタから「私だってあのくらい倒せるのに、なんでシィアにしたの?」と言われたり、シィアからは「特別な褒美をくれ久郎!」と言われ、黙っているイェイロは黙々と久郎の服を脱がす。


沢山久郎は呆れ混じりにイェイロ達を見ながら、「わかった。ジェンタとイェイロにはゴメンの意味で、シィアには感謝の意味で強化をする」と言って強化に励んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る