第17話 突きつけられた現実。
怒涛の連勝を繰り返す沢山久郎だった。
8番は水使いの女で、ケィに聞くと火使いの9番とは水と火の戦いで水蒸気爆発が起きる中の根比べで、9番は早々に諦めてナンバーズに入っていた。
沢山久郎は手の内を見せたくないので水魔法と火魔法の戦いに持ち込んで水蒸気爆発すら厭わない状況に持ち込んで、8番が怯んだ隙に「男女平等パンチ!」と言って殴り沈める。
7番は雷撃使いで雷魔法をバラしたくなかったので、雷より早く動いてさっさと殴り沈めた。
この7番と8番が予選の時に沢山久郎を見て日本人と蔑んでいた男女だった。
次の6番は剣士で、肉体のポテンシャルは沢山久郎の方が強いが、剣の腕としては6番の方が強く、ここで始めてケィの援護が役立った。
そして問題は致命傷になりかねない怪我を沢山久郎は隠し球にしたかった回復魔法で治してしまった事で、また一つ手の内を晒していた。
部屋に戻ってアルに愚痴を言うように「くそー、切られるなんて思わなかったし、切られたらメタクソ痛かった」と言いながらソファに腰掛けると、アルは「ふふ。それでも久郎様の勝利で御座います」と言いながら、沢山久郎の頬にキスをすると飲み物を渡してくる。
今回も沢山久郎は勝つ為にアルを抱き続けてしまった結果、アルにコレでもかと懐かれてしまう。
アルもイェイロ達同様に、ことあるごとに沢山久郎が情報に疎い事を利用して「久郎様、申し上げにくいのですが相手は今まで以上の強者で御座います。磐石にする為にも強化に私をお使いください」と言って、朝から晩まで…下手をしたら朝から翌朝まで強化を申し出てしまい、今なら予選で10位以内に入れるくらいの強さを得てしまっている。
今日も例に漏れずに「久郎様。次は5番、風使い、風神の異名を持つ方で御座います。どうか訓練に私をお使いください」と言い出す。
「それ、アルが強くなりたいんじゃねーの?」
「いえ、久郎様の勝利の為で御座います」
「まあ確かに刀傷は困るし、ケィの援護も期待するのは間違いだしな…。するか」
「はい!」
そうは言ってもアルは結局沢山久郎に与えられる快感の猛攻には耐えられずに頭を振って逃げようとする。それなのに一息つくと「どうぞ、お続けください」と言ってくる。
よくわからないが強くなれれば構わない沢山久郎は、面倒くさがりながらもアルを抱いて強くなっていった。
1週間後、沢山久郎は新たな能力を見せること無く5番を圧倒した。
「風って火で消せんじゃね?」と言うなり火を放ちながら氷の部屋に閉じ込めて酸素を奪う。
すぐに酸欠で倒れた風使いを火魔法で焼き尽くすと、あっという間に圧倒していた。
ケィは大歓声の後で部屋に戻りながら、沢山久郎に「次が4番。これが2人がかりの最後だね」と話しかける。
「そうなるのか、ケィは負けを認めてナンバーズに入らないの?」
「入りたくても入れないの。最後の1人になって負けを認めないと無理、だからそれをするには、久郎が4番に勝ってくれて個人戦になってから負けて貰って最後の1人になったら棄権するよ」
沢山久郎は聞きながら納得をしていて、「成程、まあその必要はねえな。俺ならキングに勝てるし、勝ったら日本に帰る。ケィは新しいキングになるかなんかすれば?」と返すとケィは「期待してるからね」と言って部屋に戻って行った。
もう最近では沢山久郎を求めたりしなくなっていた。
アルはまた喜んで沢山久郎に抱きついて強化を手伝わせて欲しいと言う。
沢山久郎は拒まないで「まあいいけど、次の4番って何者?」と聞く。
「毒使いで御座います」
「毒ぅ?」
「はい。コロシアムの外に出るような毒はキング様が禁止されていますが、コロシアムの範囲内には毒を散布されてしまいます」
「…それ、防ぎようあるの?」
「風使いの5番の方は結構いいところまでいかれましたが毒に蝕まれて棄権されました」
「3番達は?」
「毒に負ける前に体力勝負で一気に沈めました」
「…体力勝負か…。回復魔法を使いながらならいけるか…。後は火魔法だな。毒が破れれば問題ないな」
沢山久郎は戦い方を意識しながらアルの世話になる。
服を脱がされて風呂に入りマッサージを受けて強化を施す。
アルは今や握り潰せないものはないのではないかと言うくらい強くなっている。
「やっぱり不思議です。手のひらとかは柔らかいままなのに握力だけは強くなり、ゴツゴツした岩石を握っても痛くない」
そんな事を言いながらテストで用意された岩石を素手で粉々に握り潰してみせる。
そして「久郎様?久郎様は今もやはり日本への帰還を願われていらっしゃるのですか?」と聞いてくる。
「そうだよ。いい加減帰りたい」
「…コドクでしたら私もおります。衣食住も整っておりますよ?もし久郎様さえ良ければ、強化以外の目的で私を抱いてくださっても構いません」
アルは服を脱ぎながら頬を染めて沢山久郎を見つめて聞いてくる。
沢山久郎はイェイロ達を思い出して「またそれか」と呟いてから、アルを抱き寄せて強化を行いながら「俺はそもそも異世界なんかに着たくなかったんだ」と言うと、アルは必死に嬌声をあげながら「ですが久郎様、そのお力で元の世界に帰ったら滅茶苦茶になります」と返す。
「何?」
「久郎様ならくしゃみ一つで家屋が倒壊します。人混みで人にぶつかればその人間は絶命します」
「そんなわけない!」
感情が動きに出て荒々しくアルを責め立てる
沢山久郎に何も話せなくなるアルだが、最後に「久郎様、このコドクでは皆の水準が高いから普通にされているのです。食事に使うフォークすら他の世界では聖剣以上の硬度なのです。もしよければ、新たな王となって私を永遠にそばに置いてください」と言って力尽きていた。
沢山久郎は手で顔を覆いながら「そんな訳ない」、「そんなわけない」と何回も呟きながら自身が日本を無茶苦茶にしてしまう姿。
もう、顔も朧げになってきた坂佐間舞を抱いた時に貫き殺してしまう姿を思い浮かべて泣いてしまった。
その涙すら日本では災害なのかもしれない。
そんな事まで考えていた。
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