第16話 ナンバー9との戦い。
火使いの9番はニヤニヤと笑いながらコロシアムに降り立つと、見せびらかすように火の渦を出して、「俺に焼き殺される為に来たな?」と言って笑う。
横でケィが「9番はある種の登竜門。ナンバーズに挑む時に大半の奴らがここで脱落する。10番はあれでも強かったから、焼け死ぬ前に負けを認めてナンバーズ入りをした。それが3年前。3年間、奴の炎を受けて生き残った奴はいない」と説明をしてくれる。
「なんで皆9番に挑むんだ?」
「10番なんて入れ替わりの激しい立場なんてやりたくないからよ。理想は9番を蹴落として、8番と戦う時に棄権してナンバーズ入りを果たしたいのよ。9番が10番になってくれたら安泰だもの」
非常にわかりやすい。
確かにそうなれば、自分たちは安全圏であのアルと過ごすような日々が過ごせる。
「どう?勝てる?」
「んー…?多分」
沢山久郎は前に出ると「まあ少し試すよ」と言い戦闘体制に入り、キングが「今日も見せてくれ強者よ!」と言うと戦いが始まる。
9番は開幕と同時に火炎の渦を起こして沢山久郎を狙ってきた。
沢山久郎が回避を選ぶと、「それしかねぇよなぁ!だせえ奴だ!お前も10番のデクの坊同様に負けを認めちまえよ!」と言われる。
「デクの坊?」
「なす術なくローストされたザコだって話だよ!」
強者の驕り。
そのいやらしさに沢山久郎は「アイツを悪く言うな。俺の拳で消し飛ばなかったホンモノだろうが!」と怒鳴り、「頭きた。完勝してやる」と言って立ち止まると、そのまま「氷魔法」と唱えて氷の壁を生み出す。
「はっ!そんな氷くらいこの爆炎の支配者様が溶かしてやる!」
そんな言葉を言いながら9番は火を放つが、いくら炙っても氷の壁は溶ける素振りも見せない。
「え?」、「あれ?」、「マジか?」、「うそだろ?」等と情けない事を言いながら火を放つ9番に、「おいライターマン、まだか?」と煽る沢山久郎。
再び氷魔法と呟いた沢山久郎の手にはアイスソードが生み出されていて、その切れ味は誰もが見ていた。あのハウスバッファローを一刀両断した切れ味、溶けない氷。
9番は死の恐怖に恐れ慄いてケィに狙いを変えたが、沢山久郎は氷の壁を生み出すと「ケィはそこに居ろよ」と言って、「やめた。ケィを狙ったんだ。簡単に終わらせない」と言って前に出た。
恐怖に顔を歪めて必死に火を放つ9番に、沢山久郎は「お前にとって1番の屈辱を与えてやる。10番をバカにした報いだよ」と呟くと、ニヤリと笑いながら「火魔法!」と声を張った。
直後に9番めがけて飛んで行く火の玉。
「へ?火?俺に火が通じるかよ!」
9番が嬉しそうに左手に火を纏って沢山久郎の火を受け止めて、「お返しだ!フレイムウェイブ!」と言って火を放つ。
沢山久郎は左手でその火を受け止めると、「返してやるよ。火魔法」と言って大きくなった火の玉を再び9番に飛ばした。
突然の事に驚いたが「火では俺に勝てるわけがねぇ!」と言って、再び左手に火を纏って受け止めたが思った結果にはならなかった。
久しぶりに味わう感覚。
火の熱さ、身体の焼ける感覚。
驚く9番に沢山久郎が「お前の火より俺の火の方が強いみたいだな」と言って、「火魔法」と立て続けに言うと、火球が9番を襲って丸焼けにしてしまった。
大歓声。
拍手の雨が降り注ぐ中、喜びもせずに「10番はお前より強い」と言った沢山久郎に、キングは「強者の勝ちだ!」と言って戦いは終わった。
戻り際、ケィが「凄いよ九郎!」と寄ってきて、「でも何で氷で倒さなかったの?わざわざ火なんて放ってさ」と言う。
「ムカついたから」
「いや、ムカついても火で倒せるなんて普通思わないよ?」
「いや、それが昨日の晩に出てきたチキンステーキが、ファイヤーハミングとかいう魔物の肉でさ、世話人のじーさんに言わせれば火の鳥のファイヤーハミングのステーキを食べてゲン担ぎって言うわけよ。で、火の鳥なのにステーキになるって事は火で焼けるって事だろ?だからやってみた」
沢山久郎の無茶苦茶さに「それでも勝つなんて凄いよ!今度こそアタシを抱いてよ!」とケィは言うが、沢山久郎は「パース」と言ってさっさと部屋に帰って行った。
部屋ではアルが沢山久郎を待っていて、「おめでとう御座います久郎様」と言ってくる。
「どうも」
「わ…、私もお世話をさせて貰った甲斐がありました」
顔を真っ赤にするアルに「いや、助かったよ。でも本当ならあの火で9番を消し炭にしたかったのに無理だったから、もう少し強化に付き合って貰ってもいい?」と聞くと、ケィはモジモジとしながら「はい。是非よろしくお願いします」と言った。
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