第15話 ナンバー10との戦い。
翌朝会ったケィは意外そうに「本当に女は要らなかったんだね」と話しかけてきた。
「何の話?」
「あの美人メイドにも手を出さなかったんでしょ?噂になってるよ」
「暇人どもめ」
「そう言わないでよ。私なんて魅力が無いのかと落ち込んだけど、メイドさんも無事だったらなんか安心したよ」
「そうか?良かったな」
「うわ、他人事だね」
ケィと沢山久郎がコロシアムに向かうと、キングはすでに来ていて「楽しませてくれ強者よ!」と言い、「今日から7週間をかけてナンバー4までと戦ってもらう!」と言うと、昨日見た10番が立ち上がってコロシアムに飛び降りてきた。
近づくとわかる大男。
だがその目にはいやらしさも何も無い。
本気でこの戦いを待ち望んでいたと沢山久郎でもわかる顔をしていた。
「楽しませて貰う!」
「その前に圧勝する。俺は日本に帰る」
割れんばかりの歓声。
コロシアムの注目は10番と沢山久郎に集まっている。
既にケィはお荷物になっていて、自身もフォローに入る気しかない。
「今年の二番手、自信がなければ下がっていろ」と言った10番のひと睨みで、ケィはすごすごと後退りすると、「やれやれだ。だがそれでいい。いくぞチャレンジャー!」と言って拳を振り上げて殴りかかるポーズになった。
十分に回避可能な速度。
沢山久郎は軽々とかわすと歓声が湧き上がる。
「ぬぅっ!かわすとは!流石だ!だが攻めてこないのか?」
沢山久郎はここで一つ気にしていた事を聞く。
「思い切り動いてこの世界は壊れないのか?」
「笑止!戯言はやめて攻撃して来い!」
「じゃあ世界が壊れたら日本に帰してくれるなら本気出すよ」
この言葉に観客席のキングは「いいだろう」と言った。
沢山久郎の目の色が変わる。
勝ち抜きよりも簡単な方法。
シィア達の「久郎が本気出したら私達以外は死ぬな」、「インラルがなくなっちゃうねー」、「なので久郎が思い切り力を奮うのは、私の強化の時だけです。ちなみにですがベッドや世界が壊れないのは、私達の身体が衝撃を吸収しているからなのですよ」の言葉を思い出しながら、一歩前に出て思い切り10番に向けて拳を振り抜いた。
衝撃と轟音。
沢山久郎は耳がおかしくなると思っていると、驚いたことに10番はその場にいた。
仁王立ちのまま動かない10番。
沢山久郎がどうなったのかわからずに首を傾げると、キングが「チャレンジャーの勝ちだ!」と言った。
大声援の後で、キングは沢山久郎に「世界を壊すと言う言葉、嘘偽りなく驚いた。私が世界と10番を守ったから良かったものの、言葉の真意を測り違えていたら、世界は終わっていた。その力を存分に振るうといい」と言った。
前に日本人だからと馬鹿にした男と女は「あんなの食らったら死んじゃう」、「ありえん」と言っていて、それを聞いた沢山久郎は何とかなる気がし始めていた。
沢山久郎の元に走ってきたケィは沢山久郎を見て「本当に強いんだね。凄かったよ」と声をかけてくる。
「まあそうみたい。で?そんなに逃げてたの?」
「違うよ、久郎パンチの余波で吹き飛ばされたの。これでも身構えてたんだよ?」
「そりゃ悪かったな」
「いいよ。でも次は火炎使いの9番だからどうするか考えないと。今晩とか行ってもいい?」
ケィはおねだりの顔で迫ってくるが久郎は「パス」とそれを無視して「なんとかなるだろ?」と言うと自室に帰って行った。
自室ではアルが笑顔で沢山久郎を出迎える。
「お疲れ様でした久郎様。とても素晴らしい戦いでした!」
アルに身の回りの世話をして貰いながら、沢山久郎は10番を殺しきれなかった事の意味を考え始めていた。
「なぁ、アルに質問してもいい?」
「何でしょう?お答えできる事でしたら」
「10番は何で10番なの?」
「それは挑戦者の時に9番様に勝てなかったからです。しかもかつては9番様は8番で、10番様は9番でした。当時の10番様はチャレンジャーに戻されてその翌年亡くなられました」
恐らくそのチャレンジャー落ちした当時の10番がケィを抱いた男だったのだろう。
「何で勝てなかったか聞いていい?」
「はい。それはお答え可能です。9番様は特殊能力の持ち主で、以前住まわれていた世界では爆炎の支配者と呼ばれていたそうです。ですので近付いて殴る以外の方法がない10番様ですと勝てずに終わりました」
「相性ってこと?」
「はい。久郎様も手持ちの技が肉弾戦と火の力と氷の剣だけだと厳しいかも知れません」
沢山久郎は浴槽に身を投げると「マズい。圧倒して日本に帰る計画が頓挫する」と呟きながらアルを見る。
この世界でも力は使えた。
仮にインラルの女神の加護があるのなら、そう思うと黒い考えが湧き上がる。
「ごめんアル」
「はい?」
「アルに関して聞かせてくれない?」
「何でしょうか?私はただ尽くしたいだけの女で御座います」
「守秘義務に関して聞かせて」
「私は久郎様にお話ししているレベルの事のみしかお話しできません」
「俺が秘密だと言えば?」
「生涯、抗えない何かをされる以外、私から漏らす事はありえません」
「洗脳とか?自白剤?」
「はい」
「俺のトレーニングに付き合って貰いたい。変に思わないで欲しいが俺は人を抱く事で強くなる。今のままでは苦戦必至みたいだから助けて欲しい。そしてその事を秘密にして欲しいのと、俺のトレーニングの影響でアルも強くなってしまう恐れがある。その事を隠し通して欲しいのと、強くなったらそれを教えて欲しいんだ」
「喜んでお受けいたします」
沢山久郎はアルの能力テストとして林檎を用意させて握り潰させてみる。
アルには両手でも林檎を握り潰すことが難しい事がわかったので、沢山久郎はアルに催淫魔法をかけてイェイロ達にしたように抱くと、アルは襲いかかってくる快感の猛攻から立ち場を忘れて身をよじって逃げようとするが、沢山久郎はアルを逃さずにアルを果てさせ続けて時折タイミングが合えば共に果てる。
「最初ならこんなもんか」と言って2時間でアルを解放して回復魔法をかけると、復活したアルに林檎を握り潰させる。
たった2時間の行為だが、アルは何とか林檎を片手で握り潰せるようにはなった。だが強化の具合は芳しくない。
その時になって、沢山久郎はイェイロ達が女神の加護を受けていたと話していた事を思い出して、「あー…?多分それかぁ」と漏らしていた。
「アル、済まないが前の世界ほどの強化は望めないが、効果はあるのはわかったからよろしく頼む」
「はい。逃げてしまい申し訳ございませんでした。頑張ります」
この日から沢山久郎は巣篭もりを開始して日に8時間はアルを抱き続けた。
アルは何度頑張ると口にしても、10分で逃げようとして沢山久郎に捕まって、逃げ出せずに何度も白目を剥いていた。
7日後、再びコロシアムに来た沢山久郎を見て、ケィが不満げな顔をして「結局あの女には手を出したんだ」と言う。
「何で知ってんだよ?相手も仕事だって言うしな。抱かねえと世話人からわからされるんだとさ」
「それなら一度でいいのに。バカね」
「…確かに、気付かなかった」
「なんだ。本当のバカなのね。どうすんのよ。火の9番との戦いよ?久郎がやり続けてるから作戦も決められなかった」
沢山久郎は「まあ考えがあるからぶつかるさ、ケィはなんか作戦あるなら最初は任せるけど?」と言う。
「ないわよ。私の作戦は「久郎にやって貰う」ただそれだけよ」
沢山久郎は「それなら」と前に出た。
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