第11話 更なる過剰強化のツケ。
魔王は5メートルくらいの巨体だったが、沢山久郎からしたら関係なかった。
果敢に攻め込んでくる魔王を完封してしまう。
迫ってくる魔法は全て上被せて無効化し、殴ってくる腕は殴り返すと弾け飛ぶ。
それでも魔王は魔王の本能で、勇者である沢山久郎に襲いかかり続けた。
「聖剣、いらねんじゃね?」と言いながらジェンタの真似をして、過剰回復の回復魔法をかけて魔王を爆発させてみたが、どうやっても魔王の心臓だけは破壊不能で聖剣の必要性は理解できた。
「シィア、聖剣を俺に」
「わかった久郎」
シィアが聖剣を持って来た時、「お待ちください!」という声と共に女神の使いが現れる。
「あれ?どしたの?」
「女神の使い様、ご無沙汰しております」
「今久郎が魔王を倒すところだよ」
「久郎の勇姿を見届けに来てくださったのですか?」
呑気な沢山久郎達を無視して、女神の使いは必死の顔で「強化しすぎです!聖剣が壊れます!」と言って、シィアから聖剣を奪うと「私の元を離れて半年、どれだけ強化をしたんですか!?勘弁してください!女神様に言われて慌てて止めに来たんです!」と怒鳴りつけて来た。
「えええぇぇぇ?」と聞き返す沢山久郎に、「また剣の強化をします!待っていてください!」と言う女神の使い。
女神の使いの言葉を聞いていたシィアの顔つきが変わると、イェイロとジェンタはシィアを見て頷く。
「ここをキャンプ地とする!」と言ったシィアは、魔王の城なのに手早くテントを張りジェンタが食べ物を探しに行く。
イェイロは「通信魔法」と言って城に「魔王には完勝。ただ久郎様の御力が強すぎて聖剣が振るえない。なので聖剣が使えるまでこの地に住みつくので食糧支援をするように」と言う。
「久郎、仕方ありません。待ちましょう」
「うん。魔王に勝ててもトドメが刺せないとダメだから待とうよ」
「仕方ないがただ待つのも退屈だ。強化をしてくれ」
三姉妹の言葉に久郎よりも女神の使いが、「強化!?やめてください!もうこれ以上は!」と言ったのに、三姉妹は「お断りします!」、「んー…、ごめんね。強化って大事だし」、「さらなる高みへ行って来ます!」と言って沢山久郎を連れてテントへと入って行く。
1日数時間、沢山久郎は再生しようとする魔王の心臓を破壊しにテントから出て来て、シィア達は城からの補給物資を受け取ったり食事を用意する。
その時に見え隠れする禍々しい気配に、女神の使いは真っ青になってしまった。
1週間後、ようやくそっとなら振るえるようになった聖剣が出来上がった。
「なんか黒くないっすか?」
「女神様が知人の神に頼んで、そちらの世界にある希少金属のヘルチタニウムを分けてもらって合成しました。本来なら千の魔物を殺しても刃こぼれはしない金属だそうですが、今のあなたではとてもそこまでは耐えられません」
「またまた、ご冗談がお上手だこと」とコレで帰れると上機嫌の沢山久郎だったが、女神の使いは「レプリカです」と以前粉々にした剣と同じ試練の剣を出して来て、沢山久郎が軽々しく手に持つと、粉々どころか消滅してしまう。引き気味に「…ほら。やり過ぎなんですよ」と言う女神の使いに、沢山久郎は「…さーせん」と謝った。
沢山久郎は土壇場で怖くなり、シィアに魔王の心臓の直前まで剣を構えてもらって最後のひと突きだけを行う事にすると、ウエディングケーキの入刀に見えてしまう。
仲睦まじく見える姿に満更ではないシィアの顔、ヤキモチを妬くジェンタとイェイロも手を添えて、魔王の心臓に向けて剣を構えて「久郎!やって!」、「さあ!インラルに平和を!」、「久郎!!」と声をかける。
女神の使いからすれば勇者以外を拒む、絶対の聖剣なのに軽々と持つ三姉妹。
特にシィアはまだ戦闘職だが、支援職のジェンタとイェイロはなんで持てるのか意味がわからなかった。
沢山久郎「壊れませんように」と呟いて剣に手を添えて、魔王の心臓に差し込むと眩い光と共に魔王の心臓は霧散した。
「やった…。終わった…。帰れる。家に帰れる」
沢山久郎は震えて喜び、ジェンタ達は泣きながら「おめでとう久郎」、「よかったな久郎」、「ありがとうございました久郎」と言っていた。
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