第8話 違っていた目的地。

魔王の元に未だに辿り着かない。

どんだけ広い世界だよと沢山久郎は辟易とした。


とりあえずもう一年が過ぎていて、捜索なんて打ち切られていて、もしかしたら坂佐間舞には彼氏がいるかも知れないと思うようになったが、必死に気にしないようにした。


旅をする中で、手持ち無沙汰になった沢山久郎は疑問に思った事を聞いてしまう。


逗留した街で「これだけ強化が凄いなら、仮にそこら辺の女戦士としたら最強軍団とか作れたのか?」と冒険者の女戦士を指差して聞くと、この質問が面白くないジェンタが頬を膨らませて、「久郎の助平」と言い、シィアは「そりゃ無理だ」と言う。

イェイロは「久郎はあんな女が好みなのですか?」とガッカリした顔で聞きながら、「あの女は女神の祝福を受けていないのでダメなんです」と説明した後で、「私ならいつでも強化してください」と言う。


イェイロの話を聞きながら「違うって、国王の娘なのに戦いとかやだろうなって思ったんだよ」と言った後で、「女神の祝福?」と聞き返すと、ジェンタが「城に女神様の像があってね。そこに純潔を捧げると、女神の祝福が受けられるんだよ」と説明をした。


話を聞いていてこの3人も初めてを義務で放棄していた事に気付いた沢山久郎は、イェイロとの強化の時に「悪かったな」と謝ると、イェイロは震えて「嬉しい。私こそごめんなさい久郎」と言っていた。



だがここに来て、沢山久郎はブチギレた。

あまりの怒りで、目に映る範囲が更地になってしまった程で、強化されていたイェイロ達は必死に沢山久郎を宥めた。


「お怒りを鎮めてください!」

「最後まで聞いてよ久郎!」

「落ち着け久郎!」


これは何気ないひと言から始まっていた。


「魔王の居城ってクソ遠いのな」

「いえ、そんなことはありません」

「城に転移の魔法陣があるから、近くまでピョーンだよ」

「だがまあ魔法陣から3日はかかるな」


沢山久郎は耳を疑った。

そしてすぐに理解をして、頭に来ると怒りの波動だけで荒地が更地になってしまった。


「俺は早く日本に帰りてえんだよ。なのに何で何日も歩かされてんだよ!さっさと魔王を殺させろ」と怒る沢山久郎に、「ですからその為の旅です!」、「魔王にトドメを刺す武器が必要なんだって!」、「それを求めているんだ!」と止める3人に、「なにそれ?」と聞くと、三姉妹は女神が授けた聖剣があってそれを使わないと魔王にトドメを刺せないと言う。


「魔王達も簡単に近寄れない場所に置かなければならないから遠いんです」

「言わなくてごめんよ久郎」

「まさかそんなに怒るとは思わなかったんだ。面倒くさいと思わせたくなくて、魔王の元を目指すことにして黙っていた」


理由があれば致し方ない。怒りをおさめて旅を再開させるが、イェイロ達はタチが悪い。


イェイロはシンプルに「強化してください」と迫り、ジェンタは「さっきの久郎は怖かったよ。だから優しくして!」と迫り、シィアは「あの殺気に当てられて興奮した。頼む」と言って、キレた事を理由にして強化を迫ってきて足止めをされる。


確かに足止めは困るが、強化をする度に移動速度は上がるので、当初の予定より早くに聖剣の元に辿り着いた。


聖剣は山の山頂に刺さっていて、勇者にしか引き抜けないとされていて、女神の使いが聖剣を見守っていた。


「よく来た勇者よ」と言って出迎えた女神の使いは、沢山久郎の能力を見て勇者に相応しいか確かめたいと言い出したが、ここで沢山久郎が漏らした「やり過ぎた」が襲いかかって来た。


「聖剣は資格がないものが振るえば命を奪う剣。なので聖剣と同じ効果を持つ、試練の剣。これを抜けて振るえてこそ勇者に相応しい。ダメな時には鍛えてもらう」と女神の使いは言いながら手を向けた先には、明らかなベッドルームと明らかな修行場が用意されていて、姫達と強化をしてもよし、修行場で鍛えてもよしと言った感じだった。

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