第三章第三話

私が頼君のピンチに気がついたのは虎男君にお仕置をしている時だった。

それまで、無心で(自主規制)や、(自主規制)などをしていたが、

モヤシちゃんからの『無意識』の連絡で分かった。

私は急いで行った。


「ねぇ!頼君!寝ないで!」

モヤシちゃんはひとりで嘆いている。

「うっ…誰か…誰か!助けて!」

「わかった。助けてあげる」

「!?」

「誰…?」

私の事、覚えてないんだ。

「まずそっちの方が先」

「!は、はい!」

急所に刺さってる。まずいな。

『彼を助けよ』

『運命』を頼君が死なないでモヤシちゃんも助かるに変更した。

「えっ?」

「これでよし。あっ、キミ」

「は、はい」

「『私の事は喋らない事』

『手をどうやって治したか忘れる事。』

そして、

『彼を大切にする事』」

そう私が言うとモヤシちゃんは意識を無くす。

「随分、人間らしくなってきたね」

私が生んだ存在だったのに。

でも、これでもいいのかな

『無意識』による通信。

これからも、危ない時にはそうしてもらおう。

でも、

私の事を、完全に忘れるように。

「あなたは、幸せでいてね」









『私の事を忘れる事』



※        ※        ※

私は会話が無くなったところを狙って病室に入った。

「懐!」

「頼君調子はどう?いい感じ?」

「あれ、あなたは…」

「何だ?モヤシ知ってんのか?」

『いや、私たちは初めて会ったよ』

「そうなのか?」

「う、うん。見間違いだったみたい」

「そうか」

「じゃあ僕は帰るよ」

そして、モヤシは頼君の耳に口を近ずけ、何か言った。

「バっ…!俺と懐はそんなんじゃねぇし!」

と頼君が叫んでいる。なんて話しているんだろう。

「後から色々聞くから」

「ちょ、モヤシ!」

そしてモヤシちゃんはこっちに来て言った。

「ありがとう」

「!?」

まさか覚えているとは。

びっくりした。

私はそれを顔に出さないように、頼君と喋っていた。

「あの子何か言ってたの?」

「いや…」

「ふぅーん…。で傷は大丈夫?」

「うん。てか懐誰から俺の事聞いたのか?」

やばい!それは考えてなかった!

「先生に聞いたの」

と、咄嗟に嘘をついた。

「あれっ?懐俺が通ってる学校だっけ?」「…」

睨めばいける…!

「あっなんかごめんなさい。」

どうやら何とかなったようだ。

「ハァ。せっかく来たのに台無しだよ。心配して損した」

「お前…。俺の事心配してくれたのか?」

「当たり前でしょ。だって…」

契約の事を言おうとしたが口を閉じ、他の事を言った。

「頼君弱いし、」

グサッ!

「すぐ死にそうだし、」

グサッ!

「目を離すとすぐそんな事するから」

グサッ!

なんで刺さってる効果音が聞こえるのだろう。

「お前、なぜそんな精神攻撃ばっかすんの?」

頼君か。

「うるさい。もう危ない事しないで」

「あぁ。わかった」

「本当に?」

「本当に」

「そう言ってまた、誰かのために傷付くんでしょ」

「…」

否定も肯定もしない。頼君の場合、これは肯定だろう。

「頼君。誰かのために行動する事はいいんだけど、それで、自分まで、傷付いちゃたら意味ないでしょ」

「-じゃあ、アイツが死ぬのを黙って見てろって?」

それは…。

「アイツがいじめられてるのを見て見ぬふりしろって?」

「…。」

「俺はやだ。俺は助けたい。傷付いてる人を。例え、俺が傷付いても、死んでも」

それを聞いた途端、泣いてしまった。

何故だろう。

いや、もう、理由は決まっていた。

本当はダメなのに。

自分の心を持つ事は。

モヤシちゃんが、支配から外れた訳が分かったよ。

「私はただ頼君に傷付いて欲しくないから言ってるの」

これが、私の答えだった。私の心の底の想いだった。

「-ごめん」

頼君が謝ると、私は居た堪れなくなり、出ていってしまった。

出ていき、廊下に差し込んだところで

「もう1回謝らなきゃ。」

と聞こえた。

私は、何に怒っているのだろうと、

思うのだった。

「あれ?懐さん。あれからどうですか?元気にしてますか?」

と看護師の服を着た人が来た。

私はこの人は顔見知り程度だ。

だがつい、

「『空気読んでよ』」

と言ってしまった。

だが何故か効かなく、

「はいはい」

と適当に返されてしまった。

あの人も神に耐性があるのだろうか。

そう思ったがバカバカしいと思い足早に帰った。

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神様に恋した。懐ルート なゆお @askt

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