第16話 喪失感

 宇都宮。口論中の対馬捜査官と鈴木捜査官の下に衝撃的な知らせが舞い込んだ。宇都宮駅の近くにあるごみ置き場から身元不明の女性の死体が見つかったというのである。その宇都宮駅近くは、対馬がテロ組織との関連を疑って調査していた喫茶店があった。現場に駆け付けた対馬は、被害者が鈴木の娘の桃香であることに気が付き戦慄する。桃香はレイプされた後に殺害され、漂白剤をかけられていたのである。娘が被害者であると知った鈴木はひどく取り乱し、泣き崩れてしまった。対馬は桃香を殺害した人物を見つけ出し、必ず捕まえると心に誓ったのだった。


 悲しみに耐えきれなくなった鈴木は宇都宮を離れることを決意する。その荷作りを手伝っていた対馬は、ふと目を止めた写真に怪しい男が映っていることに気が付く。その男は桃香をじっと見つめていた。対馬はその男の正体を必死に探り出し、名前と住所を割り出すことに成功した。対馬は怪しげな漫画を待っていた容疑で矢口を逮捕することに成功する。しかし、桃香を凝視していただけで矢口を殺人犯とみなすには無理があった。矢口は取り調べ中に狼藉を働くなどしたが、政府の諜報員であることを理由に釈放されてしまった。諜報員を失いたくない上層部の意向が働いた結果だった。その後、矢口が所有していた自動車が何者かに燃やされ、すべての証拠は失われてしまった。


 娘を失った悲しみは癒えることはなく、鈴木は自暴自棄になってしまった。対馬は単独で捜査を続けようとしたが、それを警戒した上層部に左遷させられた。


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