転生しました。早速殺されそうです。

目の前に、目を開けられないほどの光が走ってきた。


「―――ぇ」


怖すぎて、ふるえて、声があげられない。

助けて助けて助けて。

ねぇ。嘘でしょ。

光が私と衝突するとき、記憶を見た。

優秀な中学に受験して受かって。

それから時がたって、友達もできて、人生勝ち組だ!ってときに、こんなこと―――。

神様、酷いです。

調子に乗りすぎたのかな。

ごめんなさい。

もう、意味のない謝罪だった。

私が最後に感じたのは、全身の麻痺しているのに悶絶する痛みと、周りの人のざわつく声だった。


――――――――――――――――――――――――――――


「…………」


あれ。目、覚めてしまった。

さっき、もう人生終わるなって思ってたけど―――。

でも、生きていてよかった。

大切な人とまた会える。

安堵したところで、身体の下の凹凸が気になって仕方がない。

体を起こして、見渡してみる。

―――緑。

緑だった。

どこ。病院じゃないの?

周りは苔に覆われていた。

私の部分だけ。

苔が、私を守っていたようだった。

神秘的な風景とは裏腹に、私はどうしたらよいのだろう。

てかここどこ。

本当に何も情報がない。

ただ、格好はトラックにひかれる前の状態だ。

可愛いけど普通のセーラー服。

しかし、なんか毛色が薄い紫色のような、白髪はくはつに変わっている気がする。


「さむっ」


身震いして手で体を抱きしめる。

さっきまで暑いくらいだったんだけどな……。

すると、キキ―と甲高い鳴き声が聞こえた。

後ろの草むらがガサゴソいって、いきなり何かグレーのものが飛び出してきた。


「―――うさぎ?」


え、かわいい。

少し長めの耳に、手のひらサイズの小さな体。そこに長いフワフワの毛が生えていて、額には、ユニコーンのような角のようなものが生えていた。

……角?

ふぇ⁉ふぇぇぇぇぇ!

普通のうさぎじゃない‼こんなのがいるのは異世界だけでしょ。

―――ま、さか。

い、せかい、ててて、てんせい⁉

いや嘘嘘。なわけないし。

―――でも、転生だといろいろとわけが合うし……。

ま、まさか……。

私があわわあわわしていると、そのうさぎ(?)がいきなり跳ねながらどこかへ飛んで行ってしまった。


「うぉ」


頭が混乱していて、そんなことだけで動揺してしまった。


「なぁ、こっちでなんか聞こえなかったか?」

「あぁ……行ってみるか」


なんか声する。

悪寒と嫌な予感がする。

ゆっくりそっと立つと、声がした方に目を凝らしてみた。

黒い影が近づいてくる。

暗くて顔が見えないけど、成人男性二人ってところか……。

しかも剣と槍みたいな武器持ってる気がする。

―――待って。この状況やばくないか。

異世界の兵士のような男性と私が森で出会った。

=死。

やだ。死なない。何が何でも生きてやる……っ。

私が決意を決めている間にも、どんどんその影は近づいてきて……。


「あ」


がたいの良い二人と目が、合ってしまった……。


「誰だ!止まれ!」

「そこを動くな!」


ものすごい速さで向けられる剣と槍が、光の反射で一瞬きらりと光る。

どちらの武器もよく手入れされてる……。

やばいなと思ったし、もう反射的に両手を挙げていた。


「ち、違うんです!誤解です!」

「何を言う!城を狙っていたのだろう!」

「何よりの証拠に、ここは魔王城の庭園の端だ!」

「―――……魔王城?」


何それ何それ何それ――っ!

普通勇者に転生するでしょ。てか転生するならそっちが良かったよ!魔王倒してチヤホヤされるもん。

魔王側なんて……勇者と全世界に狙われて溜まったもんじゃない。

少なくとも魔王側に召喚されるんじゃなくて、不法侵入みたいな転生はおかしい!

とにかく死んでやるものか‼

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