第109話 卒業
卒業式の朝、澄んだ朝日が町を包んでいた。不思議と胸に染みる綺麗な光だった。
シャルルはレオやリリハと一緒に、中等学校最後の登校をした。
「こうして三人で中等学校の制服を着て登校するのも最後ね」
改めて言葉にするとしんみりした。さすがのレオも言葉少なだった。
まだ寒さの残る講堂で、三人は卒業式に臨んだ。仕事ばかりで学校行事には顔を出したことのない父も、この日はシャルルの晴れ姿を見守ってくれた。
卒業式後の教室で改めて卒業証書を見ると、卒業の実感が湧いた。
シャルル達三人は午後からコーレル家でささやかな卒業パーティーをする予定だった。年末に開いた慰労パーティーと同様、菓子とジュースで卒業を祝う。
卒業式後は他のクラスメイトとともに中等学校生活の終わりを惜しんで寂しさを分け合ったが、午後にコレール家へやってきたレオとリリハは晴れやかな顔をしていた。
三人で炭酸ジュースを注いだグラスを持ち上げ、
「卒業、おめでとう、乾杯!」
というリリハの掛け声でパーティーが始まった。
レオとリリハには中等学校の制服を着て、卒業証書を持ってきてもらった。
三人は思い思いに菓子を摘みながら話をした。
「みんなの高等学校の制服姿、早く見てみたいなぁ。最初の頃はまだ体に馴染んでなくて、何となく気恥ずかしいのよね。シャルルとレオは制服ちゃんと着てみた?」
「俺は制服合わせの時に試着しただけだなぁ」
とレオは言った。
「俺は着てみたよ。何となく似合ってないような気がした」
シャルルがそう言うと、レオもリリハも「そのうち似合うようになるよ」と笑った。
三人は卒業アルバムを広げ、夕方になるまで三年間の思い出を語った。
パーティーの最後、三人は並んで卒業証書を持ち、記念撮影をした。レオとリリハに中等学校の制服を着てきてもらったのはこのためだった。
メイドの一人がシャッター係を引き受けてくれた。
「それではみなさん、よろしいですか。撮りますよ」
三人は顔を寄せて笑顔を浮かべた。
写真の中にかけがえのない友情が収まった。
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