2 卒業
第107話 制服合わせ
三月初めの日曜日、シャルルは高等学校の制服合わせに向かった。父は仕事で留守にしていたので使用人が付き添ってくれた。
卒業試験の結果は一昨日発表され、シャルルは学年三位の順位だった。こんなに上位の成績を取るのは初めてのことで素直に嬉しかった。きっとダリアやパルやアイシスならもっと上を目指せるのだろうけれど。そう思いながら、シャルルはその成績を父に見せた。忙しい父は昨日の夜屋敷に帰り、一晩休んでからまた出掛けた。次に顔を合わせるのはいつになるか分からないので、昨晩のうちに見せておいたのだった。
父は成績を見ると頷いた。
「頑張ったな、シャルル。高等学校でも頑張るんだぞ」
ダリアやセルシオの父だったらこの成績には納得してくれなかったかもしれない。シャルルの父はその点さほど厳しくもなく、よほど悪い結果でなければ受け入れてくれた。
制服合わせの日も覚えていたらしく、一言こう言った。
「私は明日仕事があるので同行はできないが、高等学校の制服が届いたら写真を撮るからそのつもりでいなさい」
写真なんて撮らなくてもいいのに。そんな心の声が顔にでも出たのか、父はシャルルを見ながらもう一言言った。
「写真はお前自身のために撮るのではなく、周りの人達への成長の挨拶として撮るんだ。嫌かもしれないが、我慢しなさい」
「……はい」
シャルル自身は決して嫌とも我慢ならないとも言ったわけではないが、写真嫌いなのは父も同じらしく、シャルルを諭す言葉にはどことなく同情がこもっていた。
そんなことを思い返しながら、シャルルは制服合わせの会場である高等学校の一室で、ブレザーに袖を通していた。採寸を担当する高等学校の教師はそれを見て頷いた。
「うん。この大きさでよさそうですね」
そう言いながら採寸の紙にサイズをメモしていった。
付き添いの使用人も感慨深くシャルルを見ていた。
「よくお似合いですよ。この制服姿を見たら、屋敷のみんなも喜ぶと思います」
「ありがとう」
シャルルは照れ笑いをしながら言った。
女子のリリハも別室で制服合わせをしているはずだった。レオはシャルルから少し離れたところで採寸を受けている。級友の制服姿は自分の制服姿を見るよりも、なぜか気恥ずかしかった。
みんな、本当に高等学校生になるんだな。そんな思いが巡った。
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