第8章 春風

1 学年末

第103話 それぞれ

 二月に入り、そろそろ卒業試験が近付いてきた。中等学校の図書室で、レオやリリハと三人で試験勉強をするのもこれで最後だった。いつもは勉強会を面倒くさがるレオも、最後となるとさすがにしみじみするらしく、シャルルとリリハの間で大人しくノートを広げて課題を眺めていた。

 一学年と二学年の生徒も学年末試験の勉強をしていた。アイシスも図書室に姿を見せている。パルはきっと寮の部屋で頑張っているのだろう。

 自宅学習を続けるサクシードは試験当日学校に登校し、別室受験をすることになっていた。執事達の話だと、家庭教師にも見てもらい、前向きに勉強に取り組んでいるらしかった。留学先は準備期間の短縮を優先し、とりあえず国内に決まり、四月から世話係の使用人とともに屋敷を出ることになった。仲がよかったわけではないが、同居家族が家を出るとなると寂しさもあった。静かな屋敷はますます静かになるだろう。

 ダリアは前回の高熱の件もあり、周囲からまた無理をしすぎるのではないかと心配されたが、「決して無理はしませんから」と本人自ら約束をした。特にサクレット夫人に対しては、食事は三食摂ること、夜十一時には就寝することという二つの約束は、絶対に守りますと誓ったらしかった。一度決めたことは絶対に曲げない、ダリアらしい宣言だった。

 図書室の閉室前、シャルルは軽くアイシスと立ち話をした。セルシオとは明後日の日曜日、最後の勉強会をするのだと言った。

「この一年間、セルシオ先輩からは勉強の仕方をたくさん教えていただきました。これからも、迷ったり困ったりした時にはそれを思い出しながら頑張ります」

「アイシスはすごいな。俺も、一人で頑張れるようにならなきゃな」

 シャルルはそう言いながら、帰り支度をしているレオとリリハを見た。高等学校では一緒に勉強できないかもしれない。シャルルもこれからは誰かのために勉強をするのではなく、自分自身のために頑張らなければならない。

 そんなことを思うシャルルに、アイシスは言った。

「シャルル先輩、私達は中等学校と高等学校とでお別れになってしまいますが、別々の場所にいても、先輩が頑張っているのだと思うと私も力になります。高等学校でのご活躍も楽しみにしています。私も頑張ります」

 シャルルは笑って頷いた。

「ありがとう。お互い、頑張ろうね」

 アイシスも笑って頷いた。

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