2 成長

第97話 移り変わり

 一月も終わりに近付いたある日の放課後、シャルルは特に用事もなく、一人で学校を出てぶらぶらと帰り道を歩いた。高等学校生のセルシオも似たような時間に学校を出たらしく、学園区の出口で声を掛けられた。

「シャルル、今帰り?」

「セルシオ先輩、お久し振りです」

 セルシオは微笑んで頷いた。

 お互い時間があったので、二人は広場まで寄り道をした。広場の周りには夜から営業を始める露店が開店準備をしていた。二人は賑やかな遊歩道を歩きながら話をした。

「シャルル、留学先はもう決めた?」

「はい。フィンラムに行こうと思っています」

「すごくいい所だよね。私も最初は候補に入れていたよ。結局、スタンケッジに決めてしまったけれど」

「セルシオ先輩はいつ向こうに行くんですか?」

「春休み中に」

「そんなに早く?」

 シャルルが驚くとセルシオは笑った。

「去年からずっと準備を進めていたからね。これでも遅いくらいだよ。――高等学校でシャルルと会うのを楽しみにしてたんだけど、入れ違いになっちゃうね」

「……そうですね」

 そう返事をしながら、シャルルはアイシスのことを考えた。セルシオのことを慕っていたからきっと寂しがるだろう。そんなシャルルの思案顔を見ながらセルシオは言った。

「アイシスにももうこのことは伝えてあるんだ。一緒に勉強会ができなくなるのは私も寂しい。留学は楽しみだけれど、親しい人と離れるのはやっぱりつらいよ」

 きっとそうなのだろうなと思いながらシャルルは頷いた。

「――ねぇシャルル、私は君に、ずっとお礼が言いたかったんだ」

 セルシオにそう言われ、シャルルは首を傾げた。

「……僕、先輩に何かしましたか?」

 セルシオは頷いた。

「シャルルがいてくれなかったら、私は多分、アイシスとは出会わなかった。あの子を紹介してくれてありがとう。私も何だかんだ言って、一人で勉強するのはつらい時もあった。アイシスと一緒だったからこの一年は頑張れた。感謝してる」

 シャルルもアイシスを紹介した時のことを思い返した。あれから時間が経ち、色んなことが移り変わっていった。夕空が夜空に変わっていくように、シャルルの周囲も少しずつ変わっていった。

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