4 墓参り

第91話 頼み事

 翌日の放課後、シャルルはサクレット邸のトムじいさんを訪ねた。

「やぁ、シャル坊。よく来たな。今日はどうしたんだね」

 トムじいさんは機嫌よくシャルル迎えた後、ソファーを勧め、自分もその向かいに座り、用件を訊ねた。

「あのさ、俺、母さんの墓参りに行きたいんだ。最近全然行ってないから。それで、花を手向けたいんだけど、どうせならサクシードや父さんの選んだ花も持って行きたくて。でも俺、二人に直接お願いしづらくてさ」

 トムじいさんはすぐに事情を飲み込んでくれた。

「それで私の力を借りたいということだね」

「うん。本当は、自分でやるべきだって分かってるんだけど」

「いやいや、構わんよ。家族といっても色々あるもんだ。やりづらいことだってあるだろう。それで、私は二人にどんな花がいいか訊ねればいいのだね?」

「うん。三人の選んだ花を一つの花束にしたいなと思って」

 トムじいさんも頷いて賛同してくれた。

「母上も喜ぶだろう。私も喜んで手を貸すよ。墓参りにはいつ行くんだね。一人で行くのかい?」

「今週末に一人で行こうと思ってる。……でも、本当は心細い」

 シャルルが本音を漏らすとトムじいさんは笑った。

「誰も付き添いがいないなら私がお供をするが、どうかね?」

 シャルルにとっては願ってもない申し出だった。父やサクシードを誘うのは気まずいし、一人で行くのは何となく寂しい。トムじいさんが付き添ってくれるなら心強かった。

「一緒に来てくれるなら嬉しい。でも、忙しくない?」

「忙しいどころか暇で暇で仕方ない。なんたって隠居の身だからな」

「ありがとう、トムじいさん」

 トムじいさんは頷いた。

「ところでシャル坊、体はもういいのかね。ずいぶん高い熱を出したと聞いたが」

「うん。もう大丈夫だよ。昨日から学校にも行ってる。――実はね、昨日の帰り、俺が傘を忘れて困ってたら、ダリアが自分の傘に入れて家まで送ってくれたんだ。ちょうど雨に降られちゃったから」

「そうかね、ダリアがシャル坊にそんなことをしたかね」

「うん。本当に助かったんだ」

 トムじいさんは始終笑顔を浮かべていたが、ダリアの話を聞くと、一層嬉しそうに笑った。

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